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俺の走り方は、狼と同じ。
軽い駆け足で、速度を変えず、休まずどこまでも走っていける。
吠えながら全力疾走するなんて、体力消耗して疲れるだけさ。
だけど。
だけど、気が急く。
母上は無事だろうか。
もう、赤んぼは生まれているはず。
無事か?
無事なのか?
気になって、どんどんスピードが上がっていく。
えーいっ!面倒くさいっ!
『筋力強化!』『疲労自動回復!』
少ない魔力をつぎ込むと、俺は思いっきりスピードを上げて走り出した。
・・・・・・・・・。
どれくらい走り続けたか。
そう、森の向こうに見える、あれが国境の砦。村はあの下。
・・・だけど・・・。
ぜーっ、ぜーっ・・・。
くそお・・・。
まさかの魔力の配分ミス。
焦ってスピードを上げ過ぎた。
ここまで来といて、魔力切れだ。
俺はひょろひょろよたよたと、無様に村に入っていった。
村の犬たちが吠えかかってくる。
うるせえや。夏前に俺様のほうが強いって、しっかり教えてやったじゃねぇか。
母上がいた家はすぐわかったけど、外には母上の匂いはない。
開いてる扉から中を覗こうとすると、後ろで女が悲鳴をあげた。
「きゃーっ!狂犬!狂犬よーっ!」
えっ!どこ?
「血走った眼で泡をふいてるわっ!
家に入ろうとしてるーっ!
誰か来てーっ!」
えっ?俺?