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ひとつ先の村。
国境を守る砦にくっついた、小さな貧しい村だった。
爺さんがダーラムシアに入った場所。
鋳掛屋の馬車が来た方向。速度。
国境付近の、地図。
・・・・・・・・・。
いけるか?
たぶん。
鋳掛屋が旅立った、翌日。
爺さんは小銭を出して鎌を一本買ってた。
婆さんはとっときの酒を、三本の縫い針と交換して、ご機嫌。
夜明け前の狩りに出た俺は、獲物の大きな兎を戸口に置くと、姫さんにおはようのご挨拶をしてから言った。
『姫さん、俺、しばらく留守にするからね、夜に戻らなくても、心配しないで』
『ねこしやん?』
『出来るだけ早く、戻ってくるから。
村の子供たちと喧嘩しちゃだめだよ』
そして俺は、小屋を、村を出て、小道を走り、鋳掛屋の馬車がこの村へと曲がった、分岐点にたどり着く。馬車は昨日ここまで戻り、王都に近い街の方へと曲がっていった。
俺はもう一度馬車の匂いを確かめ、大きく息を吸って。
馬車が来た方角へ、走り出した。