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最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子
125/225



「はいはい皆さま、良いお日和で、ご機嫌よろしゅう。

 毎度おなじみの鋳掛屋ベンが回ってまいりましたよー」


 陽気にしゃべる茶色の髪の中年の男は、村の広場で馬車を止め、片手を上げてあいさつする。


「馬の世話は任せな」

「早く店を開けとくれ」

「何か珍しいものはあるかい?」


 村人たちが続々集まってくる。

 娯楽の少ない辺境の村では、こういう旅の商人は貴重だ。



 馬車を固定して側面をいじると、横の板がぱたんと開き、カウンターになる。

 上にも横にも後ろにも、面白そうな雑貨が一杯。


「あんれ、まあ」

 ぶら下がるぴかぴかの鍋釜や、積み上げられた布地を見て、婆さんが声を上げた。

 こんなにたくさんの金物を一度に見たのは初めてだって。


「修理の受付は明日からな。

 今日はゆっくり品物を見てっておくれ。

 今回は鍋釜がおすすめだよ。

 ガタカン帝国がローランディアを攻めたんで、国王陛下はダーラムシアの参戦をお決めになった。

 この先、金属の値が上がっちまう。次回は持ってこれんかもしれん」


 なんだって?


 おかみさん連中は、急に眼の色変えて金物を物色し始めた。


 おい、もっと聞かせろ、その話!



 ベンの親父は、口をあけてぽかんと見ている姫さんと横の俺に気付いた。


「ほう、見事な犬だね。お嬢ちゃん。はて、どこのうちの子だったか・・・」


「猟師のハルんとこの娘が嫁に行ってね、代わりに雇った夫婦の孫さ」

「その婆さん、美味い酒を造るぜ」

「ほう、そりゃぜひ味を見させて欲しいな。

 お近づきの印だ、ほら。嬢ちゃん、甘草(リコリス)の飴をどうだね」


 親父が黒っぽい棒を差し出す。


 婆さんがうなずくと、姫さんは喜んで馬車に近づき、飴に手をのばそうとして、親父の後ろの籠に気付いた。

 柳を荒く編んだ鳥籠のようなもの。

 その中に入っている、小さな生き物。


 姫さんの顔がぱあっと輝く。


「ジュエル!」


 なにっ!

 

 

 


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