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俺が兎や雉を取ってくるのは、狩人たちにとっても都合がいい事だった。
留守番が小物を狩って自給自足が出来るなら、狩人たちは自宅で消費する分を考えずに、大型の獲物だけを追って気楽に遠くまで行ける。
半分は爺さんが罠で取ってるって思ってるみたいだけど。
粗野だけど気のいい奴らは、ウサギの毛皮で作った外套を着て飛び回る姫さんを、ペットみたいにかわいがってくれてる。
それに、婆さんは、ほんとに酒の仕込みがうまかった。
大麦から作るエールだけじゃなく、ほとんどどんな穀物、果物、木の実だって酒になるんだって。
麦は主食のパンを作らなきゃならないから、なかなかお酒に回せる量は取り置けない。
長年の経験からくる発酵と香料の手加減で、何からでも美味い酒を醸しだせる婆さんは、ほんとに凄い腕だったんだ。
余った酒は村の宿屋に持ってって、材料の穀物や雑貨と物々交換。
味を占めた村の人たちにも受けが良く、よそ者扱いもすぐに収まった。
この村は主街道から離れているから、戦の噂も入ってこない。
秋の収穫の後に来た、領主の収税使からも、そんな話は出なかった。
でも、もっと面白いものがやって来た。
ちょうど姫さんと婆さんと一緒に、村に買い物に来てたんだ。
村の子供たちが、わいわい騒いで村の入り口の方にかけていく。
「鋳掛屋のベンの馬車が来たよ!」
小間物を売ったり、金物を修理してくれる道具屋の馬車だって。
もう長年の付き合いなのか、女将さんたちはせわしなく、研いでもらいたい包丁や、底に穴の開いた鍋を取りに行く。
がらんがらんじゃらじゃらと、派手な音を立てて、一台の馬車が入って来た。