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ダーラムシアの国は、魔素の流れが濃い。
ローランディアと接してる西とは反対、王都を越えた東側に、魔獣の住む魔素の濃い大森林地帯があって、冒険者たちがパーティーを組んで入って行くんだ。
人跡未踏の大森林。魔獣狩り。ダンジョン探索。
子供たちが大好きな、冒険物語の舞台だ。
姫さんの兄上のフランツたちが、ワクワクしながら吟遊詩人のトマスにお話をねだってたなぁ。
あいついじめっ子だったけど、父上と一緒に捕虜になって、どうしてるかなぁ。無事なのかなぁ。
マーガレットはローランディアの王都の御祖母様の所だし、家族全部がばらばらになっちまった。
と、昔を思い出してしんみりしている暇はない。
小屋から離れた俺は濡れた鼻を上に向け、鼻腔を拡げて、夜気を吸い込む。
風上側の森の、膨大な情報が流れ込む。
異常な臭いも、気配も無し。よし。
獲物の臭いは、猪の一家と、発情期で気が荒くなってる雄の鹿・・・狐・・・穴熊・・・。
美味いのは兎なんだけど、あいつらは匂いが薄いから、もっと近づかないとわからないんだ。
『気配探知』も同時に展開して、情報を重複させる。
そう、獲物を倒すたびに、ちょっとずつ魔力が溜まっていくので、ずいぶん自由に魔法を使えるようになったんだ。
俺のこの犬って身体は、もうすぐ成長限界が来ちまう。
魔力を使って、もっと強化させておかないと、姫さんの守護には足らない。
だから、今夜も、狩に励む。
♬それでもって、婆さんにおいしく調理してもらうんだー♪。
ウサギのパイがいいかなー、頑張って大きめのうり坊を倒せばポークチョップが、いやいやローストポークがいいか・・・畑で取れた焼きジャガイモを添えて・・・。ごっくん。
いけね、にへら顔で舌出して涎を垂らしてた。
さあ、狩りだっ!
おいしい獲物取ってくるから、まっててねーっ!