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姫さんの身分証明は、ジョン・ラモントが持って行ったし、母上の居る村の位置もわからない。
別れてから、ひと夏が過ぎてしまった。
赤ちゃんは生まれたのかなぁ・・・母上は無事なのかなぁ・・・。
姫さんの身分を現すものは、首にかけてる紋章入りの指輪だけ。
だけどこの紋章がダーラムシアの人間に、わかるとは思われない。
爺さんと婆さんに何かあったら、姫さんと俺は敵国で孤立しちまう。
だから、万一の時のために、姫さんに強くなってもらわないと。
ここはダーラムシア。村人たちの中にも、地水火風の生活魔法を使える者は結構いる。
初めはびっくりしてた爺さん婆さんも、みんなが使っているのを見て、そんなものか、と納得した。
だけど、姫さんの得意な魔法は・・・。
バリッ!ドオーン!
・・・上位の『雷』魔法だ。
かんしゃくもちの姫さんにぴったりの魔法だね。
『雷の矢』が使えるようになれば、弓矢無しでも、狩りが出来る。
森の中で『火』を扱うのは火事が怖いから、『水の針』や『氷の槍』が使い勝手がいいんだが、低レベルのうちはこれでも大丈夫だろう。
「おて」をすると、姫さんはノアを思い出してべそをかいたけど、魔力を流しっこするのは、気に入ったみたい。
姫さんの魔力はちっちゃいから、すぐくたびれて寝ちゃうんだけどね。
毎晩寝床の中で、お手てを繋いで魔力を流しっこして、姫さんが寝入ると。
俺は、狩りに出かける。