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[『ねこさん』が僕にしてくれたみたいに]
あの肉球の手触りを思い出しながら、ノアは魔力を少し流し込む。
「えっ!」
少女はびっくりして手を離す。
「なに?今の?」
「痛くないだろう?」
ジャニーンはぶんぶんと頭を振った。
「痛くはないけど・・・変。
これ・・・何?」
「僕の魔力」
「僕の・・・って・・・、あらっ。
私の魔力、ずいぶん動かしやすくなってる」
少し休んで魔力も回復してきたのか、ジャニーンは杖を握りしめ。必死で集中を始めた。
[『ねこさん』は杖なんて使わなかったけど・・・ああ、元々持てなかったけど・・・]
赤と金のふわふわの髪を震わせて、必死で集中している女の子の姿はちょっとかわいい。
それにしても、ずいぶん無理して魔力を動かそうとしてるなぁ。
『ねこさん』はもっと自然に、息をするように使ってたっけ。
ジャニーンはすっと立ち上がり、短い杖を振りかざした。
「熱き浄化の炎よ、我が杖に集まりて吹き上げよ!ファイアー!」
杖先にぼっと灯る、小さな炎。
「ファイアー」
ノアは続けて静かに言った。
差し伸べたノアの掌に、ぽっと青白い炎が上がる。
「あ、ほら、僕にもできた」
初めて発動した、魔法だ。
ちょっと離れていたバートラム講師が振り向き、眼を剥いた。
「なにっ!杖なしで無詠唱だとっ!」