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短すぎていらいらしていた俺の足が少しすらりと伸びてきて、やっと石段を登れるようになった。
姫さんが勉強部屋にいってる間、あちこち探検していても、戻る時間にはちゃんと部屋にいてお出迎え出来るようになった。
ギューのごあいさつと、おやつが待っているんだもの。
一緒に遊んでお昼を食べると、今度は午後のお勉強。こっちはお作法やダンスらしい。
人族って、なんでこんなに詰め込んで覚えることがあるんだろう?
それから家族そろってお茶の時間。
こっちの方がおやつが上等だからうれしいぞ。
そのあとはやっと自由になれる。
俺は外で走ろうと誘うんだけど、姫さんはお人形遊びや読書のほうがお好みだ。
今日も俺を横に置いて絵本をめくる。
「これ。ねこしゃん」
『え?』
おお、草原を走る猫。
雌は逞しく、雄は見事なたてがみ持ちだ。
ふうん、俺、じゃなくてジュエルは将来こうなるのか。
『かっこええじゃん』
だが女官のベスが通りかかって言った。
「姫、それは猫ではなくて獅子でございます」
『だめじゃん』
でも姫さんは頑固だ。
「ねこしゃんだもん!」
姫さんはこんなのがお好みか。
ふうーん。
遺伝子の詳細を検索してみる。
たてがみまでは無理だけど、ちょっと変化させるくらいは簡単だ。
ちょうど毛が変わる時期に来てるし。
毛色を明るく、光沢をつけて。
首のあたりは毛を深く、厚くして、母と同じに胸元と額は白。
俺、かっこよくなるからね、姫さん。
元の情報と大して違わない小さな変化だから、たいして魔力は使わないし。
え?
あ?
魔力?
そっかー!
俺、魔力を集めなきゃいけないんだっけー!