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そして数日。
ステルツ教授との苦しい交換の後は座学。午後は魔法の実践の授業。
数学は皆より進んでいるノアだったが、戸惑ったのは歴史だった。
ダーラムシアはかって大陸全土を治めていた大帝国だった。いにしえの魔道王国グランダラーム。偉大なる魔道王の末裔なのだ。と。
ノアは全く知らなかった、母国の歴史を教師は誇らしげに語る。
魔法は偉大。魔力を多く持つ者は、他に勝ると。
そして、魔法の授業は相変わらず見学。
初めての日に皆から絶賛された少女は、その後も頑張っていて、数回に一回は炎を灯すことに成功している。
「よぉーし、よくやった、ジャニーン!
そのコツを忘れるんじゃないぞっ!」
バートラム講師が叫ぶ。
ちょっとふらつくようになった少女は、よろよろとノアの隣のベンチに向かい、どさりと座り込んだ。
顔色が悪い。
「大丈夫?」
ノアは小声で尋ねた。
「ん、平気。軽い魔力切れよ。休んでれば回復していくわ。
まだ魔力量が少ないから、ついうっかり使い過ぎちゃうのよね」
顔を上げ、手を差し出す。
「昼食の席で紹介されたけど、ジャニーンよ。よろしくノアール王子、いけない、ノア」
うっかり口を滑らせ、ちょっと赤くなった少女は、はきはきした声で言った。
赤と金の混じった、ふわふわの髪。
目の色も金がかった茶色だ。
「みんな大きな声で詠唱をするんだね」
「ん。集中するために、詠唱をしっかり自分のものにしておけって。
上級になれば、ほとんど声に出さなくても発動できるけど、まだまだ力んじゃうのよね」
「ふーん、そういうものか」
あんなに大声を出すのは、ちょっとはずかしいなぁ。
「照れていては力は出せんぞっ!上級の魔法ほど、複雑な詠唱が必要になる。
魔力を制御し、杖の先の一点に凝縮させるには、たゆまぬ努力と反復あるのみ!」
後ろからバートラム講師が大声で言った。