10
10
東西南北の寮に、一年生から八年生まで、千人以上の若者が学ぶ、ダーラムシア王立魔法学院。
七、八歳で入学し、十六歳の成人となるまで、国の補助を受けて魔法を学ぶことが出来る。
それ以降は、院生になるか、教職を取るか、正規の魔法使いとして就職していくか。
早熟で入学が早まったり、魔力の発現が遅く、齢を重ねてから入学する者もいるが、今年の一年生二十八名は、全員が八歳前後で揃った。
入学条件は、一定の魔力量を持つこと。
ただし、王族だけはその限りではなく、無条件で入学する仕組みであった。
ダーラムシアの王族は、代々の魔法使い。
魔力の少ない王族など、これまで出たためしがなかったのだ。
そして食後早々に自室に引き上げたノアは、練習場の片隅に座り、午後の魔法の実技を見学している。
灰色の制服を着た八歳の少年少女たちは、支給品の短い木の杖を握りしめ、眼を閉じたり、何か口の中でつぶやいたり、必死で集中している。
「ああやって体の中の魔力を探り、杖の一点に集約させていくんだ」
講師のバートラムは、体育系?と見間違うほど見事に鍛えた体の、金髪を角刈りにした若い男性。
「カール教授の特訓が終われば、君も杖をもらって彼らの仲間に入ることが出来る!
頑張りたまえ!まずは、自分が納得できる詠唱を造り上げ、集中力を上げることだ」
ばん、と背中を叩かれ。ノアはよろめく。
「清浄なる水の流れよ、吹き上げよ!ウォーター!」
「熱き炎よ、我に従え!ファイヤー!」
叫んで杖を振る、子供たち。
一人の少女の杖の先に、ぽっ、と火がともる。
「おおーっ!」