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一年生の部屋は、一階の三人部屋だった。
「皆より三か月遅れて入学だな。
わからないことがあったら、同室の二人に何でも相談したまえ」
部屋の中で待っていた二人の少年が立ち上がる。
明るい茶の短髪の、将来でかくなりそうな少年が、まず一歩踏み出す。
「よろしく、ノア王子。僕はダリル・スタントン、父と兄はポルターク伯の親衛隊にいる」
整った顔立ちのストロベリーブロンドの少年は、柔らかな物腰で言った。
「ノーラン・モードです。父は伯爵の秘書官です」
「ノアです。えーと・・・」
「姓名と身分を口に出さないのは、公の場でだけだよ。
家名とか、派閥とか、みんな教えるから、早く覚えてくださいね。
三か月の遅れは、厳しいです。
南寮の一年生は、二十八名、すでに党派が出来つつありますから」
「おいおい、ノーラン、あわてるな。
王子は異国育ちだぞ。
そういっぺんに、詰め込まなくても」
「それでなくても、「魔無し王子」なんて、マイナスな噂が立ってるんです。
王子には頑張っていただかないと」
まあ、とにかく今日は、休ませろ、と言うダリルの言葉に、やっと解放されたノアは、あてがわれたベッドに倒れ込んだ。
魔力を練る気力もなく、そのまま横たわる。
『「ねこさん」・・・僕、もう、全然自信ないんだけど・・・』