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ノアより三、四歳年上の少年は、薄茶色の髪にそばかすがいっぱい。
きらきら光る好奇心あふれる茶色の眼と小さな顎、ちょっと突き出した歯が、齧歯類を連想させる。
「ああ、ごめんよ、学校中の噂だから。
国王の、末の王子が転校して来るって。
魔法を使わないローランディアで育って、魔力の無い王子だって」
そんなはずないよな、と、ノアの眼を覗き込む。
「紫の眼って、魔力が多い印だよ。
学院長のラダスターン先生を見たろ。
あの濃紫の眼!
学院一の魔力の持ち主さ!
なんだよ、気付いてなかったの!」
そんなに眼の色が重要だとは。
ノアはびっくりしてうなずく。
「君の眼は明るくて綺麗な色だ。
きっと女の子たちにもてるぜ。
ほら、ここが南寮の寄宿舎。
七年生のエリーが寮長だ」
ノアが反応しないのを見て、がっかりしたように言う。
「エリーだよ。エリー・ラムシス。
聞いたこと、ない?
ハモンとリール、君の腹違いの兄上たちのいとこにあたる。
学院一の秀才!」
「苗字を呼ぶことは禁止されているはずだな、ラビッツ」
扉を開けた途端、冷たい声をかけられて、少年は飛び上がった。
「ラニッツだ。
じゃ、ノア王子、またな。
俺は四年だ。
合同授業で会おうぜ」
「苗字も、名称も、使うなと言うのに。困った奴だな」
背の高い少年が、ノアに近づいた。
「初めまして、ノア。寮長のエリーだ」