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雨の中、畑の隅に浅い墓穴を掘り、二人を埋めた。
終わった頃には嵐は去り、朝日が昇って、きらきらしずくが輝く。
雨上がりの木立できれいな大きなチョウが羽化するのを見つけて、姫さんが歓声を上げる。
まったく、なんで人間は戦なんかするんだろうなぁ。
古びた馬車に幌をかけ、「おうましゃん」を長柄に繋ぎ、婆さんと姫さんと掘りあげたカブを乗せて。
朽ちかけた小屋を後にして、爺さんは馬車を林の中の小道に誘導する。
「道はまっすぐ続いているようじゃ。
このまま行けば、ダーラムシアのどこかの村に着くかもしれん」
行き当たりばったり、とにかく戦場から離れようという。
母上を置いてきた村への道とは、違うみたいなんだけど。
でも、とりあえず、この付近から離れた方がいいね。
帝国騎士のジョン・ラモントはどうしたかなあ。
姫さんの身分証明書や父上への手紙、みんなあいつが持ってるんだ。
早く母上と合流しないと、姫さん、迷子になっちゃうよ。
爺さんがよっこらしょっと御者台に乗る。
「ほーら、行くぞ」
俺がちょっと心で押すと、「おうましゃん」が歩き出す。
うん、ゆっくりでいいんだよ。
後ろの馬車がうっとうしい?でも、ちょっと我慢して。
知らない処で、一人ぼっちになるのは嫌だろ。
馬車の引き方を教えながら、俺は「おうましゃん」の前を歩く。
前方に敵がいないか、確認しながら。
そうして俺たちは、当てもないままに、魔法を使う国、ダーラムシアに、入っていったんだ。