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最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子
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 がつがつと鍋の底まで指でさらった二人は、じっと立っている爺さんと、姫さんをしっかり抱きしめている婆さんを無視して、薄暗がりの中、俺たちの荷物を物色し始めた。


「安心してな。雨が止んだらおさらばするからよ」


 口では言ってるが。殺気がぷんぷん臭うぞ。

 自分は強者だと思ってる、余裕。

 ・・・こいつら・・・殺しに慣れてる。


「ちっ、ろくなものを持ってないな。

 鍋と馬はもらってくぜ。あとは・・・毛布だ」


 後から来た方が、婆さんと姫さんが包まってる毛布を剥ごうとする。


「お爺さん!」

「逆らうんじゃない、婆さん」


 棒を構える男から離れるように、爺さんは奥へ。

 ・・・まだ見つかってない、雉の骨を叩いてた、鉈のほうへ・・・。


 毛布に手を伸ばした男が、姫さんの外套に気付いた。


「なんだ、このガキは。やたらに良い服を着てるじゃないか」

「孫に触れるんじゃない!」


 男はケっと笑って、姫さんをつかもうとした。

 

 もう、限界。


 俺は陰から飛び出し、前かがみになっている男の背に飛びついて、強化した牙を延髄に突き立てた。

 前は失敗したけど。今度こそ。


 がぶり、と手ごたえがあって、急所を噛み砕かれた男は、そのまま前のめりに倒れる。


「うわっ!この・・・!」


 俺に向かって棒を振り上げた男の足の甲に、爺さんが鉈を打ち込む。


「ぎゃっ!」


 のけぞって叫んだ、喉ががら空き。


 俺は男の背を蹴って、その喉にとびかかる。

 懐に入ってしまえば、振り上げた武器は当たらない。

 前足に体重を乗せて、噛みついたまま男を押し倒した。


 頸動脈を喰い破ると、少し暴れたけれど、男はそのまま事切れる。

 塩っぽい、溢れる血潮の味。


「な・・・なんと凄い犬じゃ・・・」


 俺は獲物に噛みついたまま、じっとしていた。

 流れる魔力に、首筋の毛が、ぞわぞわと逆立つ。



 そう。

 わかってたんだけどね。


 どんな狩りの獲物よりも、人間を狩った方が、魔素が多いって。


 この、母からもらった犬の身体が今まで拒んでいたけれど、これが、俺の本性。


 ごめんな。姫さん。

 

 俺は、もと『人喰い』だ。


 姫さんを害そうとする奴は、容赦出来ないよ。

 


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