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街道に近づくと、何かざわざわと騒がしい。
爺さんはだいぶ離れて馬車を止め、俺と一緒に偵察に出かけた。
・・・軍隊だ。
帝国の軍服を着た大勢の兵隊たちが、街道を行進していく。
「こりゃあいかん。
辺境伯様あたりの土地で、大きな戦になりそうじゃ」
え、父上の領地が戦場になるの?
城や、母や、残った人たちはどうなっちゃうんだろう。
「まきこまれたらかなわん。
はやいとこダーラムシアに入ろう」
なので夜に紛れて、街道を渡り、適当な小道でまた林の中に入った。
「方向はあっとるんじゃが、はて、どこへ出るのかの」
次の日も小道を辿っていくと、途中にあったのは、朽ちかけた小屋。
住民はとうに逃げ出したらしく、戸は外れかけ、小さな畑は雑草だらけ。
雑草の間から育ち過ぎたカブを掘り出し、差し掛けの下で「おうましゃん」を休ませていると、爺さんの言った通り、雲行きが怪しくなって、小雨がぱらつき始めた。
「とにかく、屋根だけはある。ありがたいこっちゃ」
婆さんと姫さんが掃除をしてささやかな荷物を運び込み、爺さんが屋根の穴を板切れと枯草で塞いだ頃には、篠突く雨に変わっていた。
そして、真っ暗になり、雷と豪雨に。
「きゃっ」稲光に姫さんが俺の首に顔をうずめ、それからくすくすと笑いだす。
大丈夫だよ。怖くないよ。
この天気じゃ、帝国の兵隊たちは大変だ。
春だっていうのに急に冷え込み、婆さんと姫さんは毛布にくるまって、掃除した炉で雉を炙り、叩いた骨をつくねにして、ツメクサの根と、カブと一緒にスープで煮込む。
「嵐が止むまで誰も動けん。今夜はゆっくり休むとしよう」
だけど、その夜更け。
土砂降りの雨の中、戸を叩く音がして、俺たちは飛び起きた。