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最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子
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「これはガガイモじゃ」


「ががもー」


「こうして引き抜くと、ちっちゃい芋が出て来るじゃろ。

 ウサギと一緒に煮ると、美味いぞ。

 こっちは精がつく武者大蒜、これは香りのいい星桂樹・・・」


 俺たちが転げ込んだので、爺さん婆さんは、しっかり元気になった。

 というか、生きる気力が出てきたって言うか。

 生き残る努力を、し始めたんだ。


 腰を痛めて動けなかった婆さんは、ちよっと魔力を流して血行を良くし、自己回復力を強めてやると、なんとか歩けるようになった。

 久しぶりにあったかい食事をたっぷりとった爺さんも動きが良くなる。

 元気になってみると、長年森と共存してきた二人の老人は知識の宝庫だった。

 春の林の中に、こんなに食べるものがあったのかと、俺は驚いた。


 そして、春の森の狩りは、楽しくておいしい。

 リスにウサギ。シャコにウズラにキジ。

 でかい母猪に出会った時は、さすがに逃げちゃったけどねー。こっちが。

 縞々の入った子供をたくさん引連れた母猪は、熊より怖いって、よくわかったよ。


 でも、数日すると、爺さんが言った。


「もう二、三日すると、雨になる。

 ここを動かんといかん」


 春の嵐は結構ひどくなるんだそうだ。

 

「わしらの村は焼かれて、食い物もない。

 なんとか嬢ちゃんを安全な所に連れて行ってやらねば」


 辺境伯の城は帝国に占領され、途中の村や旅籠も焼き討ちに会っているよ、とは、説明できない俺だけど。


「戦を避けて、ダーラムシアへ向かうかのう」


 うん、そうして。

 俺たち、母上に会いたい。


「おうましゃん」は軍馬なので、馬車を引く訓練は受けてないけど、俺が心を繋ぎ、農耕馬に慣れた爺さんが誘導すると、なんとか長柄に繋がれても我慢できるようになった。

 

「ほーれ。ほーれ」


 がたん、と馬車が揺れ、窪地にめり込んで苔が生えてた車輪が動く。


「老いぼれ馬車も老いぼれ二人も、ここでくたばるかと思っとったが。

 もうひとふんばりだけ、してみるかの」


「おうましゃん」の軍用の馬具は、見つからないよう穴に埋め、小さな荷馬車はゆっくりと街道に向かって動き出した。


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