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干し肉と堅パンで作ったおかゆに、姫さんは顔をしかめたけれど、潰れたお昼ごはんしか食べてなかったので、何とか食べきってくれた。
腰を痛めた小さな婆さんは、子供好きらしく、姫さんの顔を拭き、髪を梳り、甲斐甲斐しく世話をしてくれる。
あれ?でも、歯を磨いてないよ?
どうやら、歯磨きは、貴族だけの習慣らしい。
「嬢ちゃん、お名前は?」
「ひめしゃま」
「どこから来たの?」
「おうち」
「何があったんだね」
「んー、エマがきゃーって言って、ぐるんぐるんしたの。
でもって、おうましゃんにのったの。ぱかぱか」
・・・これじゃわからんわ。
「これはあんたのわんこかの?」
「うん!ねこしゃんよ」
「わんこじゃろうが」
「「ねこしゃん」だもん」
しゃべってるうちに姫さんはうつらうつらしてきた。
長い一日だったからなあ。
姫さんが婆さんの横で落ち着いたんで、俺はあたりの偵察に出かける。
街道から少し外れた窪地は人目に付かず、危険な獣もいないようだ。
夜は、狩の時間。
隠れていた小動物が、動き出す。
堅パンと干し肉は、人間たちに取っておかないと。
俺はこっちで、十分。
茂みに巣をつくる、森ネズミ。リスに夢中になって、俺に気付かなかったミンク。
命が一つ消えるたびに、その命の持つ魔素が俺に流れ込む。
普通の獣はそのまま流してしまう魔素を、俺はため込んで、魔力に変換していく。
小さな命だから、ほんのちょびっと、ちょびっとずつ。
もっと魔法を使えないと、俺は姫さんを守れない。
あ、いいものがいた。
森で一番匂いが無い、すばしこい、おいしい生き物・・・。
翌朝、目が覚めた爺さんは焚き火のそばの二羽のウサギを見つけてびっくりし、みんなでおいしい煮込み料理で朝ごはんを楽しんだのだった。