37話 想いは匂えど散りぬるを
「白花様、私思うのですが」
いきなり神になってから何ヶ月か経った
参拝客は1日に数人くるのだ。みんな忙しだろうからたまにでいいのに
そしてなにやら不満がありそうな顔で夏音が話かけてきた
何かやらかしただろうか
「ん?なーに?」
「最近白花様よく朝里へ散歩に出かけてますよね」
「うん、そうだけど」
「もう少し威厳を持って歩いたらどうです?」
「え、なんで?」
「神なんですからもっと人に敬まられるようした方がよろしいかと」
「んー別にそこまでして偉ぶる必要はないかな」
「子供達に話しかけるのは構いませんけど話し方がですね...」
「話し方?なんか変だった?」
「あの話し方だとただの近所の優しいお姉さんですよ」
「別にそれでも私はいいと思うよ?だって変に畏まられるのも落ち着かないしみんな気が楽でいいじゃない」
「ですが神の身である以上威厳がないと他の神に信仰を奪われますよ」
「大丈夫だよ、うちのやり方にいちゃもん付ける神がいたら分かるまで教え込むから♪」
「白花様、笑顔で言われると何故か怖いです。」
「あっだったら夏音も普通に崩した喋り方でいいよ?」
「流石に私は無理です」
「あらら、遠慮しちゃって」
「はぁ、分かりました。里の人達への態度はこのままでもいいです」
「はーい♪」
「それと参拝客が見えてますよ」
「え?あ、本当だ」
バレないように襖の隙間からこっそり見てみると女の子がなにやら一生懸命手を合わせて祈がんでいた
どれどれ、どんな願いことだろう
『彼に想いを伝えられますように!』
ほほう、恋愛物ですか
よし、ここは私が神として手伝ってあげますか
ちなみに私の姿を知っている人は少ないので問題無い
私は襖をガラッと開けた女の子に話しかけた
「ねぇ、君どんなお願いことしてたの?」
「うわぁ!び、びっくりしたぁ〜」
「驚かせちゃったかな?ごめんね、どんな願いことしてたの?」
「え、えっと恥ずかしいです...」
「あ、もしかして恋愛とか...?」
「そんな、感じなものなのかな?」
「んー、良ければその願い叶うように手伝ってあげるよ」
「え、そんなの私がかってに願ってるだけですし...」
「いいのいいの」
「なら、お願いします...」
「じゃあまず君の名前は?」
「咲です」
「それじゃよろしく咲ちゃん!私は白花でいいよ」
「あ、あの、白花さんて」
「ん?なに?」
「ここの巫女さんですか...?」
「んーそんなもんね」
「そうですか」
「さぁ願いを叶えるのを早いに越したことはない、その彼とやらは誰かな?」
「えーと、ついてきてください」
私達は里へ降り、その彼の場所を目指した
「んでさーその彼ってのはどんなの?」
「え、あの、とっても優しくていつも側に居てくれます」
「それはそれは大変うらやましゅうございますね」
「そ、そんなことないです!」
「あはは、大丈夫。上手くいくさ」
「そうですよね!頑張ります!」
「そうそうその勢いだよ」
「あ、もうすぐ彼のとこに着きます」
「お、どんな美男子なのかな?」
「ほら、あそこに居ます」
「ほほう、どれどれ?」
そこには寝っ転がってる猫一匹と畑仕事してるおじいさんが3人居るだけだ
「えと、ここにいるんだよね?」
「はい!もう緊張してしまいます」
いやいや、まさかおじいさん⁉︎
それはちょっと予想外だなぁ...
でも、恋は万色と言うし...
ま、まぁなんとかしてみるか
「えーとどの人かな?」
「人?彼ならそこに居ますよ?」
「え?」
「はい?」
「人じゃないの⁉︎」
「そうです、あの猫さんです。 もう愛おしくて...」
「は、はぁ」
いやいやもうおじいさんより予想外だよ、てか恋なのか⁉︎
「か、彼にどんな想いを伝えたいのかな?」
「その、私いつもここに来ると彼が居るので撫でたり抱っこしたりご飯をあげたりしてるのです。でも最近愛おしくなってきちゃって家で飼いたくなったんです」
「ほう...」
「それで勝手に連れて帰ったら彼の意思に反するかもしれませんし、もしかしたら誰かの飼い猫かもしれませんから彼がついてきてくれたらいいなぁなんて」
「なら、私が彼に聞いてこようか?」
「え?聞く?どうやって」
「まぁ、待っててちょいと聞いてくるから♪」
私はそっと猫に近寄ると猫はのそーと起き上がって大きなあくびをした
一応私は猫と会話できるのだ
「ねぇ君、どこの猫なの?」
「うわっ!びっくりした、あんたおいら達と話せるのか⁉︎」
「一応猫妖怪なので」
「なるほど、物の怪か。おいらは誰の猫でもないぜ」
「あ、ならあの娘が君と一緒に暮らしたがってるんだけど」
「んー?おいらを飼いたいってか?かまわねぇぜ。あの嬢ちゃんおいらに良くしてくれるし、そろそろここにも飽きてきたしな」
「なら良かった、ありがとね。あの娘に伝えてくるよ」
「おうよろしく」
私は笑顔であの娘に向かって走った
すると咲は不思議がるような顔をしていた
「何か分かったんですか...?」
「結論から言うと」
「お願いします」
「咲ちゃんに是非飼われたいって!」
「ほ、本当ですか⁉︎」
「本当よ、さぁ彼を抱っこして帰りましょう」
「はい!あと今日はありがとうございました!お礼をしたいのですが...」
「いいのいいの、そんなの私が勝手にやったことだから」
「でも...」
「なら、たまにでいいからこれからも博麗神社に遊びに来てくれる?その彼も是非一緒にね」
「はい!喜んで!」
咲はとても嬉しそうに猫を抱っこし、笑顔で帰路に着いた
猫もとても満足そうにゴロゴロと喉を鳴らしている
私も何かこの村の人達にできて良かった。これからも出来ることをしていこう




