ゆいこのトライアングルレッスンB 〜ずっと一緒に....〜
『ゆっこね!おおきくなったらたくみおにぃちゃんとひろしおにぃちゃんのおよめさんになるの!』
『えぇ、でもゆいこ、ひとりのひととしかけっこんできないってうちのかぁちゃんがいってたぞ』
『ゆいこ、だいじょうぶだよ、ぼくがおとなになったら、そうりだいじんになってほうりつをかえるから』
『そしたらゆっこ、たくみおにぃちゃんとひろしおにぃちゃんとずぅっといっしょにいられる?』
『うん』
『わーい!』
ずっと昔の微かな記憶。
あれはゆいこが3歳になった誕生日の事だっただろうか。
あれから月日は流れ俺らも大人になった。
総理大臣にまだはなれてはいないが....。
昔の記憶に思わずふっと笑いが漏れた。
「ん?ひろし?どうかした?」
「ん?いや...なんでもない。ちょっと昔のこと思い出してた。」
「昔?」
「...ゆいこの3歳くらいの誕生日のお祝い。ゆいこ、俺ら2人と結婚するって宣言しててさ」
「え?そんなの覚えてない」
「オレは覚えてるぜ。あの頃のゆいこは無邪気で可愛かったのになぁ」
「ちょっとたくみ!?なにその今は可愛くないみたいな言い方!」
「はいはい、今も可愛いですよ」
「もぉ!たくみ!」
じゃれあうふたりを見ながら思う。
どんなに時間が経ってもこの気持ちが変わることはなかった。
ゆいこのこの笑顔を、彼女の幸せをそばで守り続けたい。
でも子供の頃のようにはいかない。
『ずっと』3人一緒でいられるのは残りわずかな時間なのかもしれない。
「ゆいこ、誕生日おめでとう」
「ありがとう、ひろし...」
「おめでとう、ゆいこ」
「たくみもありがとう」
どこか切なげなかおをしてゆいこがにっこりと微笑む。
俺もたくみもゆいこも心の奥底では解ってる。
このままではいられない現状を。
でもそれを見ぬふりをして明るくはしゃいで笑うんだ。
この先....ゆいこが誰を人生のパートナーとして選んだとしても....誕生日だけは...一緒にお祝いできればいい。
その日が来るまでは....ずっと一緒に....