ユーリ
ユーリに苦痛を与える奇妙な旋律は、いつもと同じだった。これが始まると、そのうち呪は終わる。だけど、あまりに痛すぎる。ユーリののどから出る悲鳴にならない悲鳴は、いつも呪術師の呪で打ち消された。奇妙な旋律は終わり、呪術師が外にいるお母さんに声をかけた。お母さんが隣の部屋から入ってきて、ぐったりとしているユーリをみて、ほほに流れる涙をぬぐった。
初めてユーリに呪をかけた呪術師は引退し、ユーリのはがれた皮を取りにきた若い呪術師が今はユーリの治療を行っている。名前を長堀桔平といった。
「ありがとうございました」とお母さんは礼を言い、料金を渡した。そしてユーリの寝ているコットの横に座り、コットのドアを閉じた。そしてユーリたちを乗せたコットは静かに呪術師の開けた部屋のドアから滑り出た。呪術師はいつものように、言葉少なにコットを見送った。外は、静かに雨が降っていた。
お母さんは、自分たちの乗ったコットが順調に走っているか、慎重に確認しながらも、ユーリの様子にも目を配った。ユーリが目覚めるのは翌日だとわかっていたが、何かの拍子に目を覚まして苦しまないか、いつも心配していた。
お母さんは、何度聞いてもユーリの悲鳴に慣れない。初めての治療が終わった後、お母さんもお父さんもユーリのあまりな苦しみようを見て、涙が止まらなかった。もうやめさせたいとも考えた。でもそうするとユーリは、そのうち死んでしまうこともわかっていた。自分が代われるなら代わりたいが、そうできない。それはユーリが感じる以上の苦痛かもしれなかった。降る雨は、お母さんの心をますます冷やした。
30分くらい走り、コットはユーリの自宅へ帰った。自宅へ入る前に、コットは屋根のある場所で静止し、雨粒を乾燥させた。お父さんが自宅のドアを開けた。コットはそのまま部屋に滑り込み、ユーリの部屋へと移動した。このコットのおかげでユーリは、苦痛な治療の後、無理やり起き上がらずに家に帰ることができた。
「お帰り」コットから出てきたお母さんにお父さんが声をかけた。お母さんは相変わらず苦しそうな様子だったが、それ以上お父さんは、何も言えなかった。二人は食卓につき、お父さんの準備した夕食を食べ始めたが、すぐに箸をおいた。ユーリが治療を受けた日はいつもそうだった。二人とも、ユーリの苦痛を目の当たりにして、何もすることができない苦しみに、自分たちも体が切り刻まれるように感じていた。最初の治療と違って、継続的に治療をしているせいか、嘔吐はなくなった。
「明後日、ユーリが目を覚ましたら、好きなものを準備しよう」お父さんは言った。お母さんは、「少ししたら、ユーリは学校へ行けるわね」と返した。それだけが二人の希望だった。
ユーリが目覚めると、もう昼過ぎだった。治療に行く前よりも、身体は軽く、明らかに楽になっていた。ユーリの隣には、小さくて白くてふわふわしたキティがいた。
「キティ、いたの?」
「ユーリ、心配した」キティは、青い目でユーリを見上げた。実際キティが話すわけじゃない。でもユーリには聞こえるような気がした。キティは、治療を受け始めたユーリのためにと、お父さんとお母さんが連れてきてくれた。キティを見た初めて時、ユーリははっきりとキティのしゃべっていることが理解できた。とても不思議だった。そしてそのことはお母さんやお父さんには言わなかった。「キティと私の内緒だよ」ユーリはキティに伝えた。キティは、片方の目をちょっとつむって、わかったと合図した。
キティは、ユーリの治療のこともわかっていた。治療に一緒に行きたがるが、キティが心配するからとユーリは連れて行かなかった。お母さんも、キティが治療を受けているユーリに飛び乗ったりすることを心配していたので、当然ユーリの意見を尊重した。
心配するキティに、ユーリは「大丈夫だよ。いつもと同じ」とキティを抱きしめた。キティを抱きしめると、キティは嬉しそうにユーリの顔を舐めた。キティが、家に来た頃、キティは小さくて、ミルクの匂いがしたが、今はしない。でもキティはあの頃と変わらない気がして、今でもミルクの匂いをかぎたくて、ユーリはキティの毛に顔をうずめた。
「朝ごはん、食べた?」ユーリが聞いた。
「食べたよ」キティは、ユーリの顔を舐めながら答えた。
「どんなごはんだった?気に入った?」キティは、ご飯が気に入らないと文句を言うので、ユーリはいつもキティのご飯を気にかけていた。
「まあまあかな。でも、お母さんの用意するご飯は、いつも少な目で、嫌だ」とキティは言った。ユーリは笑いながら、
「お母さんは、キティが病気にならないように気を付けているのよ。キティは家の中にいるだけだし」と言った。
「お母さんは、自分が細くいたいから、私にも強要するのね。私を未成熟のまま、小さくてかわいい子猫のままでおいておきたいのよ。」
「お母さんが細いままでいたいというのは事実よね。」ユーリとキティは、お母さんの若いままでいたい、細いままでいたい、かわいいままでいたいという希望についてひとしきり意見を交わした。結局、二人は、お母さんのそんな希望はばかげてると思うということで意見の一致をみた。
そんな風に話をしていると、お父さんが入ってきた。お父さんは、ユーリが飼い猫と話をしているかのような様子をみて、思わず顔をほころばせた。
「ユーリ、お風呂に入りなさい。昨日はそのまま寝てしまったからね」そういって、ユーリがコットから起き上がれるように手助けし、お風呂まで連れて行った。お風呂にはお母さんがユーリの着替えを準備してくれていた。お母さんは、呪術師に届けるためユーリがお風呂に入っている間に、コットに散らばったユーリの皮膚を拾い集めた。ユーリがお風呂に入った後にも、脱衣室でユーリの皮膚を拾い集めた。
「一人で大丈夫かい?」
「大丈夫。キティは?」
「たぶん、リビングに行ったんだろう」
お父さんが出て行った後、ユーリはゆっくり洋服を脱いだ。そして浴室へ入り、シャワーを身体にかけた後、お湯の張られた湯船に身体を沈めた。お湯の温度はユーリの好きな温度だった。入浴剤もユーリの好みのものだった。
治療を受けて思うのは、治療の後は身体がとても軽くなるということだった。それでもいつの間にか、皮膚は硬くなり始め、それほどではないが、動かすのが厄介になってくる。
今日は、家で学校の課題をするが、明日からは学校へ行く。身体の調子によって学校へは行けない時もあるが、ユーリは学校がとても楽しみだった。友達はユーリの身体を気遣ってくれ、ユーリがいない間、学校で起こった面白い話を、ここぞとばかりたくさんしてくれた。ユーリは、友達の話をなんでも面白いと思った。結局ユーリは、15歳の少女だった。
数日ぶりの学校は、相変わらずけたたましかった。ユーリの姿を見つけると、仲のいいクラスメートのヨカたちが走ってきた。
「これたんだね。ユーリがいないとやっぱりさみしいよ」
みんな口々にしゃべり、ユーリを取り囲んだ。
「クラスのアンが…」とみんなユーリが休んでいる間に起きたことを教えてくれた。ユーリは、みんなが話す出来事を心の底から楽しんだ。学校にいると、自分の抱えている病気のことを思い出さなくてすむ。みんなと同じ、将来に夢を持ち、そのために学校へ通ってる生徒なんだと思えた。それは、ユーリにとって皮をはがかしていくという激しい痛みをもたらす治療が続く中で、輝くばかりに普通で美しい日々だった。
すぐに始業のベルが鳴ったので、みんな自分たちの専攻する授業のクラスへと向かった。ユーリはフランス語を取っていたので、ヨカと同じ教室だった。二人は連れ立って、教室へ向かった。ヨカは、日本地区に住む韓国系住民だった。数根前に、えらのはりを気にして、美容整形をし、とてもきれいになった。そして最近、背もうんと伸びて、めっきり大人っぽくなった。ヨカが教室へ入ると、数人の男子学生はヨカのことを気にして、視線を送っているのがわかった。ヨカはそんな男子の視線に気づきつつ、知らんぷりをした。
「男の子って、ちょっと手が届かない風に思う女の子のほうをいいと思うのよ」ヨカは、知ったかぶりに、ユーリに言った。ヨカの仕草や話す内容は、とてもユーリと同じ年には思えず、ユーリはちょっとだけ劣等感と妬ましさを感じた。でもヨカは、ユーリを誰よりも気遣い、親切にしてくれるのだった。それもとても自然な感じで、ユーリに負担を感じさせなかった。お姉さん的な感じなのかな。ユーリはちょっとひねくれて考えてみるが、ヨカと男の子のことについて話すのは楽しかった。
ユーリはフランス語の授業に何とかついていけた。語学はもともと得意だし、お母さんが、学校を休んでいる間にも教えてくれていたからだ。物理や数学にはついていくことは難しかったが、単位を落とすほどではなかった。先生たちも、ユーリの状況を理解してくれていた。もっとも最近、ユーリのような奇妙な病気を発症する人は、増えていた。だから学校でも職場でも配慮をせざるを得なかった。
みんなが楽しみにしているお昼休みが来た。ユーリも当然楽しみだった。みんなとご飯を食べるのはとても気分が良かった。学校で提供される食事のほかに、お菓子や果物を持ってきていて、それを分け合って食べた。今日は、イブキがお菓子を持ってきた。
「ねえ、これみて、とても珍しいでしょ」イブキは、変わった形と色のものをバッグから取り出した。「お父様がアメリカ地区へ出張に行ったとき、もらったものをちょっとだけいただいてきたの」イブキのおうちはとてもお金持ちらしく、イブキもお嬢様ということだった。もっとも今の時代、お金持ちということはあまり珍しくもなんともなかった。どういう人も望めば、希望するだけお金を儲けることはできた。ほとんどの人は自分たちが必要とするお金を儲けるために働き、あとは家族と過ごしたり、自分の趣味をやったりすることを選択して、人生を過ごした。
「どう、ユーリ、食べない?」イブキはユーリに聞いた。
「もちろん、いただくわ。でもなんなの?」
「さあ、私もわからないの。お父様も家に持って帰って、何となく、手を出さないでいるのよ。だから誰も食べてないの。」
みんな、それは残り物なんじゃないかと騒いだ。イブキは澄まして、残り物には福があるというわと言った。
イブキが割ってくれた一片を口に入れて、ユーリは思わず微笑んだ。
「とっても甘くておいしいわ。不思議な味ね。」
ヨカもイブキに割ってもらって口に入れて
「本当、何この味。今まで食べたことないわ」と言った。
みんな、われもわれもとイブキから割ってもらってそれを口に入れた。
「なんだろう、バニラのフレイバーかしら。」
「違うわ、和三盆よ」
不思議な味わいをみんな、これだろうか、あれだろうかと推測した。だけど、これという答えはみつからなった。
「じゃあね、またね。ユーリ、しばらくは学校に来られるんでしょう」
「その予定」
授業が終わって、ほかのみんなはクラブ活動に参加するが、ユーリは身体に配慮し、家に帰ることになっていた。ユーリも参加したいクラブはあったが、両親を心配させることを望んでいなかったし、ユーリ自身もこれ以上身体を悪くしたくないという思いが強かった。運動や疲労が直接身体の状態の悪化につながるとは考えられなかったが、疲れすぎると、やはり早く治療に行かないといけなくなった。だからあまり疲れすぎないように気を付けなくてはならなかった。
校門の外で、車が待っていた。ユーリがそれに乗り込むと、車は滑るように動きだした。
車の外の景色はいつもと変わらないが、ユーリにとって、学校帰りに見る景色は輝いて見えた。青々とした葉の茂った天に届きそうな大きな木はユーリに話しかけてくるように見えた。ユーリは学校で友達と話した内容を反芻したり、イブキの持ってきた甘い不思議なお菓子について考えた。先生たちから、さまざまな知らないことを教わるのも楽しかった。
不思議だわ、私、前よりも学校へ行くことを楽しんでいるよう。前も確かに楽しかったけど、こんなに幸せに感じたかな。まだ夕方には早いが、傾きかけた日もユーリに話しかけているように感じた。ひょっとして、これは病気が発症したことの、副産物なのかな。でもそれなら、そんなにうれしくはないかも。
そんなことを考えているうちに、車は家についた。お母さんが外で待っていた。
「ただいま」
「お帰り、学校どうだった?」
「楽しかった。イブキがとても不思議な味のお菓子を持ってきていて、おいしかった」
学校のカバンをユーリから受け取り、お母さんは、ユーリを家の中へと促した。
「よかったわね。シャワーを浴びて、ゆっくりしなさい。今日はお父さん、帰りが遅くなると言っていたから、二人で夕食よ。」
「わかった」
ユーリが自分の部屋へ入ろうとすると、後ろからキティが小さな足音をさせて駆け寄った。ユーリはキティを抱きしめると、ただいまと言った。
「私も学校へ行ってみたい」キティが言った。
「キティが?まあ、みんなきっとかわいいって大騒ぎになるけど、学校にペットを連れてくる子はいないわ」
「私はペットじゃないし、ユーリの行くところは行ってみたい。」
「まあ、ペットと飼い主っていう関係ではないけど、でもキティは端から見たらペットに見えるわよ。猫だもの」
キティは、ユーリのその言い方にちょっとぷんとした様子をした。
「私のことを外見で判断するなんて、ばかげているわ。学校って楽しそうなんだもの。学校へ行って帰ってきたユーリって、本当に楽しかったって感じ」
「確かにね。ほんとに楽しいの。きっと前よりもよ。自分でもどうかしてるのかなと思うけど」とユーリは帰りの車の中で考えたことをキティに話した。
「どう思う、キティ、私は楽しいけど、でも病気になりたくはなかったな」
「そうねえ、私もそう思う。でも病気になってつらいことばかりじゃ、生きていくのが大変。」キティは、しんみりと言った。
「うん、一生このままかな」
キティは、ユーリのほほを舐めた。ユーリはキティの温かく柔らかな舌の感触を楽しんだ。
キティは、ユーリのほほを舐め続けた。そうしていると、ユーリのつらさがなくなるんじゃないかと思っているようでもあった。
「ユーリ」
お母さんがドアをノックして部屋に入ってきた。そしてユーリがキティを抱いてぼんやりしている様子を見て、眉をひそめた。
「ユーリ、早くお風呂に入ってきなさい。」
「はい」
ユーリは、ドアが閉まると、それでもキティを抱きかかえていた。キティの温かさは、ユーリにとって慰めだった。この状態が一生続くのかと思うと、身体のどこもかしこもが、しんと、冷え切るような感じがするからだった。そんな気持ちはだれにも言えなかった。誰もわからないだろうし、言われたほうも困るだろうから。
ゆっくりとキティを床に戻し、ユーリは着替えを手に取った。キティは、何と言っていいかわからず、ユーリの後をついて歩いた。キティのか細い声は、ユーリの口には出さない泣き声のようだった。
ユーリが寝付いてから、お母さんは帰ってきたお父さんに、今日お母さんがユーリの部屋で見たことを話していた。
「ユーリはキティが来てから、前より、自閉的になったように思うの。あまりいい影響がないように思うわ」
「そんなに心配したものではないよ。あの年頃の子は、あんなものだよ。君だって、あの年頃は、親とそんなに話をしなかっただろう」
「そうだけど、だからって猫を抱きかかえてぼんやりと宙を眺めているなんて、そんなことはしなかったですよ」お母さんは言った。
「ユーリは、抱えきれないようなつらい気持ちがあるんだろう。それを自分で何とかしようとしているんだよ。実際耐えられない痛みもあるし」お父さんはお母さんをなだめるように言った。
「そうですけど、猫を抱きかかえるより、私に言ってくれたら」
お父さんは、ユーリがキティと話をしているような様子を思い出し、思わず微笑んだ。それを見て、お母さんはむっとした。
「どうして笑うんです?」
「いや、君はユーリを、まだ5,6歳だと思っているんだな」
「そんなことはありません。もう15歳ですよ。身体だって大きいじゃないですか」
「とにかく、そう心配したものでもないよ。ユーリだって、15歳なんだから、親に言えないことがたくさんあるのが当然だし、そのほうが自然じゃないか」
お父さんは、風呂に入ると立ち上がった。
「あなたは都合が悪くなると、すぐにそうやって話を切り上げてしまうんだから」
お母さんはぶつぶつ言っていたが、それ以上は何も言わなかった。
やがて呪術師のところへ行く日がやってきた。数か月から半年ごとに通わなければ、ユーリの身体が固まり始めることを、ユーリは感じた。毎日、その日が来るのが嫌で嫌で仕方がなかった。
「ユーリ、準備はできた?」
のろのろと部屋を出てきたユーリにお母さんが声をかけた。ユーリがドアを大きく開けていると、コットが後ろから滑り出てきて、玄関ドアの前で止まった。お母さんは、いつものようにショルダーバッグを持ち、その中に本を詰め込んだ。ユーリは、そのお母さんの様子を見て、本当に嫌な気持ちになった。お母さんが、ユーリの苦しみを分からないとは思わないが、ユーリが痛みに耐えている間、のんきに本を読んでいるのかと思うと、頭にきた。でもそう思っても無理はないと自分で思う。お母さんが先にコットに乗り込み、次にユーリが乗り込んだ。
外はすがすがしい青空が広がっていて、ユーリは、いつものように学校なら、何て楽しい気分なんだろうと思った。今日の学校のスケジュールを思い浮かべてみて、すぐにそれはやめてしまった。そして何も考えないようにして、窓から外を眺めた。どうして私が、、、と、毎回思ってしまう。ユーリは、答えのない自分の考えに沈んだ。呪術師のところへ行くときは毎回そうだった。
ほどなくして、呪術師のオフィスへ着いた。いつものように、お母さんが呪術師のオフィスの呼び鈴を押すと、呪術師がドアを開けた。お母さんは、オフィスに入る前に、コットから降りて、オフィスの待合室へ行った。ユーリはオフィスに入るコットに乗ったまま、いつもの部屋へ滑り込んだ。コットが開いて、いつものようにユーリは横たわっていた。
呪術師は、オフィスのドアを閉め、ユーリの枕元に座り、いつものように呪を唱えようとした。その時、ユーリが目を開けて、呪術師のほうを見た。そして「どうしてこの仕事をしようと思ったんですか?」と尋ねた。
呪術師はちょっと目を細め、ユーリに目を向けた。
「驚いたな。君が私に興味を持つなんて」と答えた。
「興味はずっとあります。でも何を聞きたいかわからなかったんです。」
「今日は聞きたいことが見つかったっていうこと?」
「そう」
呪術師は、少し笑って、「残念だけど、話す時間はないよ。長い話なんだ」と言った。
「いつか聞くことはできるの?」とユーリが尋ねると、「それはわからないな。呪は負担になるからね」と言った。ユーリは「そうね」とうなずいて、目を閉じて、「はじめてください」と言った。そして呪術師は、彼女のために呪を唱え始めた。