ボーリングと還暦
俺の名前は達三。大学2年生の20歳だ。今俺は家族とボーリングに来ている。父と祖母と祖父と俺で4人だ。
俺はボーリングの玉を指に入れて持つ。少し重いが、なんとか投げられる。俺は構える。そして、玉を転がす。玉はやや斜めに進んだ。それから、玉はピンに吸い込まれて行った。ピンが倒れる音が響く。倒れたピンの数は6か。
「まあまあだな」
父がそう言った。
「次スペア取ってみせるから」
俺はそう言いながら、玉を持つ。再度転がした結果、4つ中2つが倒れた。残ったのは2つ。
「スペア取れなかったな」
「そうみたいだ」
父が残念そうに言ったので、俺は同意した。次は祖父の番か。まあ、年寄りだし、難しいか。祖父がボーリングの玉を持ち、構える。そして、転がした。体勢が不安定だったけれども、玉はややゆっくりと転がって行く。そして、ピンが派手な音を立てながら、全て倒れた。ストライクだった。凄い。俺は拍手した。
「おじいちゃんはね、ボーリングの大会で優勝したことがあるんだよ」
祖母がそう言った。なるほど、だからストライクが取れるんだな。年寄りと侮ってはいかん。
「次はお祖母ちゃんの番だ」
俺は祖母に述べた。
「任せときなさい」
祖母はそう口に出して、玉に指を入れる。構える。そして、投げる。玉は大分曲がって進む。そして、そのまま端に玉が入ってから、ピンを素通りする。ガーターだ。
「ああ、なんでこうなるの」
「気にしないことだな」
祖母の嘆きを聞いて、俺は励ました。
結局家族でのボーリングは楽しめた。祖父の意外な特技に驚いたが、これも祖父の新しい一面である。
こうして、俺達家族は帰路についたのだった。
俺の名前は島田智。33歳の会社員だ。俺は今度の休日に父親の還暦を祝おうと思う。そう、とうとう俺の父親は60歳となったのだ。何をしようかな。
今日は土曜日。明日の日曜日と合わせて、2連休である。俺は今時計屋にいる。店内には様々な時計がある。5000円の物、8000円の物、一万円の物と種類は豊富である。中には、百万単位の値段の物もあった。これらは買えないな。そう、父親には腕時計をプレゼントしようと思う。父親は今は持っていなかったはずだ。どれにしようかな。
「何にしますか」
悩んでいると、店員が声をかけてきた。
「今度還暦祝いに父に腕時計を買おうと思いまして」
「なるほど、ではこんなのはどうですか」
見せられたのは、一万円もする単針と長針があるやつだ。うーん、悪くないが、なんかピンとこない。
「他にオススメはありますか」
「では、これとこれはどうでしょう」
俺の質問に店員は2つの時計を見せてきた。1つは8000円する数字が表示されているもので、今1つは5000円する単針と長針があるものだ。流石に、百万単位のものはオススメしない。さて、どちらにしようか。うーん。よし、決めた。
「この5000円のものにします」
「わかりました」
5000円を支払い、買った物を包装して貰った。これで還暦祝いはバッチリだな。俺は店員に頭を下げてから、店を出た。
翌日の日曜日。俺は父と相対していた。
「どうしたんだ、智」
父親は不思議そうな顔と声色で尋ねてきた。
「お父さん、これを。還暦祝いだ」
俺の言葉を聞いて、父は顔を綻ばせた。
「ありがとう。開けても良いか」
「ああ」
俺の返事を聞いて、父はさっそく包みを開けた。中からは当たり前だが、5000円の腕時計が入っていた。
「おおう。腕時計か。ちょうど持ってなかったんだよな。すぐに着けてみるわ」
そう言って、父は嬉しそうに腕時計を着けた。うん、様になっている。
「お父さん、今までありがとう」
「こちらこそ。良い大人になってくれて嬉しいよ」
父の顔や言葉で、還暦祝いが成功したことを噛み締めた。
「お父さん、長生きしてね」
この言葉で締め括ろう。