15.新生活 -2-
「犯人と決めつけるのは早いよ」
昌香の出した結論に待ったをかけると、昌香は渡した用紙を折りたたんでポケットに仕舞いこんだ。
「そうは言ってもね。娘のアタシですら…犯人じゃないですかって言いたくなるんだけど」
「それを調査するのが仕事だからね。証拠を揃えて、誰が黒幕かを突き止めないと」
「でも、どうやって?」
昌香に問われたワタシは、少しばかりの間を置いて…若干目が泳ぐ。それだけで、昌香はワタシが言いたい事を理解できたらしい。
「わかった」
ワタシの様子を見て、見透かした様な…勝ち誇った表情を薄っすら浮かべた彼女は、胸に手を当て首を傾げてみせる。
「お父さんから調べたいんでしょ」
正解だ。図星。その通り。ワタシは小さく笑って頷くと、少しばかり上目遣いで昌香を見やった。これを頼むのは、少しばかり骨が折れるというか…どうかと思っていたのだ。彼女を使うのが最も手っ取り早く確実だが、危険だし、何より肉親の疑惑を調べさせるというのは、気が進まないだろう?
「というか、この間。あの日…調べてなかった?」
「いや。そんな家探しみたいなことはしてないよ。見える範囲では…やってたけど」
「素直にしてたって言いなさい。まぁ、わかったわ。調べてあげる」
思いもよらずスムーズに進む話。ワタシは意外なほどにすんなりと協力してくれた昌香に驚いた顔を向けると、彼女は足を組んでワタシから顔を背けた。
「親子仲は悪くなさそうだったけどね」
少しばかり緩んだ空気。ワタシが呟くようにそう言うと、昌香はピクッと肩を震わせる。
「この間お邪魔した時はそう見えた。大事にされた一人娘って感じ」
「三子屠に言われると反応に困るんだけど」
「妬みとかそういうのは無いよ。素直な感想」
「そう。それなら…ありがと。三子屠の言う通り…仲は悪くないわ」
昌香はそういって、チラリとワタシの方に顔を向けた。
「でも、そういう黒い噂があるってのは、知ってたの。まぁ…心無い人は何処にでも居るからね。親が居ない所でそんな人と会っちゃった時には、それはもう、犯人の様に言われたことだってある」
「そうなんだ」
「警察の人から探りを入れられたりした事だってあったわ。だから…ね」
気の利いた一言でも言えれば良いのだが…生憎、その手のボキャブラリーは持ち合わせていない。ワタシは気を紛らわす様に周囲に目を向け、そして、自分の足元に目を向ける。
「ねぇ、三子屠」
何とも言えない静寂を破ったのは、昌香だった。
「何?」
「今週の土曜日。また、家に来てくれる?」
「遊びに…じゃないよね」
「表向きは遊びに…よ。今週中に、お父さんが白か黒か決めちゃおう。だから…」
「…だから?」
「何があれば良いかな?それとも…どこかに入れれば良い…?」
決心のついた昌香の顔は、随分と凛々しく見える。ワタシは彼女にそう尋ねられて、あの大きく広い屋敷の内部を思い浮かべた。
「あるとすれば書斎部屋とか?それか…PCの中に何か残ってたり…って所かな」
「分かった。なら…土曜日に、お父さんの部屋に入れる様にしておくね」
「…出来るの?…どうやって…?」
昌香の勢いに、不安を感じるワタシ。少し間を置いて訪ねると、彼女はコクンと、力強く頷く。
「任せてよ。とにかく、土曜日の朝10時に来てくれればいい。それで、思う存分調べて…白か黒か決めちゃいましょ」
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