13.死にたて男の懺悔 -2-
「偏見ってなァ良くないことだが、呼び出された場所で察せちまったよ」
「三鷹家が関わってるって?」
「アァ…でも、おいそれと手が出せねェ。警察に言っても動かねェだろうよ」
一旦根本を解放した後。2人だけになった事務所で、ワタシは上司と雑談半分な仕事話に興じていた。
「解せねェよな。20年前、30年前には【ミタカグループ】なんざ影も形も無かったんだ」
「小さな会社の急成長なんて、ちらほらとある事では?」
「あぁ、ITだのなんだのならな。でも、奴等は唯の商社だぜ」
「それこそ偏見ってものじゃ…」
「いいや。あそこの連中のやり方で、ああもデカくなるとは思えないね」
「何知ったような口を…」
自分のデスクに戻ってヒートアップする上司に呆れ顔を向けたワタシだったが…
「わっ!!」
次の瞬間には上司の手元からそこそこ分厚いファイルが飛んできた。
「この厚さだと、最早凶器なんですけど」
「良いだろ。死んでも死なねぇ女なんだ」
「全く」
そのファイルは、上司が調べ上げたであろう【ミタカグループ】に関する資料。様々な雑誌の切り抜きだったり、ネットから吸い上げたであろうウソかホントかもワカラナイ情報がズラリと並んだ、辞書みたいな資料を捲って見てみれば、確かに上司の言っている事も一理ありそうなものだった。
「ただの商社だぜ。自爆営業が仕事みたいな連中だ。それが、今じゃシステム屋を抱え…酒屋を抱え…挙句の果てにゃローカルTV局にまで食い込んでる」
「裏がありそうというか、裏しか感じないですがね。この資料」
「実際そうだろう。死んで警察に届け出が出されても動かねぇんだもの」
「怖い怖い…」
「その怖がってる所のお嬢ちゃんが、この間連れてきた女だろうに」
「まぁね」
ワタシはそういって苦笑いを浮かべて、ファイルを閉じる。
「どうなんだ?お嬢様とは」
「んー…悪くない仲だと思うけど。流石に行き成りは聞けないでしょ?」
「アンタの親、人殺してないか?ってな。まァ、そうだわな」
「それに、諸々がワタシ達の思った通りだったとしたら…」
「暫し、この街は騒がしいだろうなァ…生者に死者に、力関係が大きく変わるんだもの」
そういってから「あー、ヤダヤダ」と吐き捨てて、革張りの椅子に深く座った上司。
「残りの連中に任せてる事件ですら厄介なのによ」
「何やってるんだっけ?」
「知子が霊障者の対処だろォ…凛は地下通路に蔓延る悪霊の殲滅。緋音は【陰陽師】共への対処か」
「なるほど。最後だけ不毛だね」
「不毛なモノ程時間がかかるんだよ」
「それもそうか」
上司のいう【陰陽師】とは、【霊媒師】の同業者みたいなものだ。積極的に霊を操り、人の世に影響を与えようとする連中…っていうことで、人と霊の一線を護るワタシ達【霊媒師】とは水と油の関係と言える。
「誰も手が開かない…か」
「自分が暇人に見えてくるだろ?」
「えぇ、全く」
ワタシはそういって立ち上がると、ファイルを元の場所に戻し…そして、暫く座っていない自席の椅子を引いて、それに腰かけた。
「とりあえず、明日から本格的に調べるけれど…どう終わらせようか?」
「別に。お前のモットー通りにやればいい」
「そう。なら…気楽かな」
「仕事ってのは、楽な方法でやるもんだぜ」
上司はそこまで言って、ヒョイと立ち上がると、戸棚から何か箱を取り出して…
「ほらよ」
それをワタシの元に持ってきた。中身は、さっき根本を脅す時にも使われた改造ガスガンだ。パッケージはそのままだが…開けて中を見やれば、改造品であることがよくわかる。
「ワタシに除霊の趣味は無いし、要らないことは知ってるでしょ?」
「違う。お前にじゃない。あのお嬢ちゃんに渡しな」
「…昌香には亜希子さんもいるじゃないのさ。その心は?」
銃はワタシに向けてではなく、昌香に向けて…という事らしい。そうなればちょっと話は別だ。彼女もこんなものを持つ趣味は無いし、そういう性別でもなければお年頃でもないのだが…
「保険だよ」
上司はワタシの質問に、短く答えると…箱の中の銃を取り出し、適当な方へ構えて、カチン!と引き金を引いた。
「事と次第によっては、彼女をスパイにする様な場面もあるだろ?その時の相手が人じゃないなら…持っておくに越したことは無いだろうさ。狙いは、お嬢の守護霊に付けさせればいいんだ」
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