12.死にたて男の懺悔 -1-
「わ、私は根本四郎。年は27…死んだのは…すいません。今はいつでしょうか」
「令和7年4月7日だね」
「なら…昨日です。昨日の昼までの記憶はあります」
ワタシ達がひとしきり【新米幽霊】で遊んだ後。根本四郎と名乗った霊は、ポツリと身の上話を話始めた。
「覚えてるのは…昨日のお昼辺りでしょうか」
「何処で、何してたか覚えてっかァ?」
「はい…地下鉄に乗ってました。そこで最後…眠ってしまった…と思うのですが」
「なるほど、気づいたらそのザマだったわけだァ…どこで気づいた?」
「気づいたら、山の中でした。場所は…そこの子…」
「あぁ、三子屠か」
「はい、ミコトさんと会った辺りですが、どこかまでは…雑木林の中で目が覚めたんです」
「あの辺はなァ…思い当たる場所が多すぎる。で、アンタ、自分の死体は見たのか?」
「いえ…全く」
「じゃ、まだ表沙汰にはなっちャいねェな。アンタ、殺される覚えはあったのかい?」
取り調べが始まってからは、さっきまでの流れが嘘のようにスムーズに進んでいく。根本は上司の質問にスラスラと答えていたが、殺される覚えがあるかどうかを尋ねられたところで、口ごもってしまった。
(ここまで嘘はついてないが…)
「そ、そうですね」
(が、ここで初めての嘘か)
口ごもって、根本が嘘をついた刹那。上司が握っていたガスガンがポン!と銃声を放ち、根本の顔のすぐ横に銃弾が着弾した。人には見えない銃弾…幽霊には見える銃弾。当たれば1発で霊を【祓って】しまう、凶悪な弾だ。
「!!!!!!!!!!!!」
ビクッと全身を震わせて驚く根本。目の前には、表情一つ変えない上司が、ジッと彼を睨みつけている。
「言ったでしょ。嘘はバレる。殺される覚え、あったんだよね。根本さん、貴方、仕事は?会社勤めなら、会社名を言ってみて」
「は、はい…」
「殺される…とは思ってたんです。こういうのも変な話ですが…私は【ユークリッド】という会社に勤めていました」
「ユークリッド…」
「【ミタカグループ】の子会社です。システム管理部門を切り離してできた…まぁ、ただのシステム開発会社ですね」
根本の言葉を受けて、ワタシと上司の目線はピタリと合った。
「私、そこに勤めてて…ただの平社員だったんですが、ちょっと…こう、ブラックと言いますか、勤務形態が酷かったので労基にタレ込んだんです」
根本の話は続く…
「そしたらタレ込みをした次の日には会社にバレて…謹慎になっちゃったんです。昨日は謹慎2日目でした」
「随分と尻尾を切る判断が早いもんだなァ」
「若いし消す方が安上がりだとでも思われたんでしょうね」
「おそらく…私、結婚しておらず独り身ですし、親は遠く離れた土地で、高齢ですから…」
「なるほどねェ」
根本の話を一通り聞いた上司は、ワタシの方を見てニヤリと笑った。ワタシもワタシで、彼女と似たような笑みを浮かべて肩を竦める。
「よくある話さ。違ったのは…運よくアンタが化けて出てこれた位か」
「……はは」
「そして、そこの木偶の坊に取り憑こうとしたのが運の尽きだな。相手が悪かった」
「……」
「お前、その札に囚われたんなら、ちょっとやそっとじゃ成仏できないぜ?」
「え?」
上司の言葉に驚いてこちらへ振り向く根本。ワタシはこちらを向いた彼にニコリとした顔を向けてやると、クシャっと握りつぶしたお札を広げて、お札に書かれた呪文を見せてやった。
「木偶の坊って言われてるソイツだけどな、趣味は【幽霊集め】なんだ。それに捕らわれたお前は、もう、木偶の坊の【僕】ってわけさ」
根本の顔が、上司の言葉とともに青く染まっていく。ワタシはニコリとした顔から、目元だけを真顔に戻してクイっと首をかしげて見せると、根本はぽかんと口を開けた。
「安心しなァ。木偶の坊の興味はな、【集める】だけなんだ。今すぐにどうこうなるわけじゃないからよ。まァ…面倒になるのは、この先幾十年経った後か、その辺だろうしな」
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