11.霧の街 -3-
「相変わらず無茶しやがる。ちったァお前が【人】であるって事をだなァ」
「はいはい…気を付けますよーだ。そう【思うだけ】で良いんでしょ?」
「口の減らねェ奴め」
男を【確保】したのち、ワタシは上司に迎えを頼み、迎えに来てもらった。目的地はワタシの家ではなく、伊勢屋書店。この死にたてホヤホヤの霊は【お金になる】のだ。例え、今、ワタシ達が関わっていない事件の話であったとしても…警察に貸しを作れるようなネタであれば戦果としては十分といえる。
「そういえば、車変えるって言ってなかったっけ?」
そういって、助手席から霧の街を眺めつつ、知り合った時からまるで変わらない車のシートを僅かに倒した。
「あァ、中古で良いエンジンが見つかったから載せ替えたのさ」
「へぇ…」
「ドイツ車っつっても、15年もすりゃア、錆びれた中古車だな」
そういいつつ、何処か楽し気な上司。背後から聞こえるエンジン音が僅かに大きくなると、ワタシの体はシートにグイっと押し付けられた。
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「でェ?捉えた奴はどうした?」
「この中に」
車で5分。市内の中心部に位置する古本屋の最奥地…ワタシは上司に言われて、応接セットのテーブルの上に霊を封じ込めたお札を置いて、トンとお札を指先で叩く。
「……ぁあ!!…な、なんだここは…お、俺に何をした!?なんだ!?なんなんだ!?」
お札を叩いた直後。ブワッと煙が立ち込めたと思えば、そこから出てきたのは【新米幽霊】…男はワタシと上司の姿を交互に見やると、恐怖の表情を貼り付けたまま言葉を発せなくなってしまう。
「ふっ…ふはははははっ…あははははははははははははははははは!!!!!!!!大した子猫ちゃんだな!!!この有様で良く成仏しなかったもんだ!!!あははははは!!!!」
上司はその様子を見て豪快に笑い飛ばすと、ソファにドカ!と背中を押し当てて足を組み…そして顔から表情を消した。
「はァ~…お前さん、死にたてホヤホヤって所だな。何処の誰よ?覚えてる事を全部吐いて貰うぜ」
そういって、オフィスレディな格好が似合わない彼女は、スーツの上着の内側から、スーッと小型拳銃を取り出して見せる。男はそんな上司の動きを見て更に恐怖心を掻き立てられたのか、精一杯にワタシの方に身を寄せてくると、情けない悲鳴を上げながら戸惑う様を晒した。
「ガスガンだからね、アレ。本物を持ってる訳ないでしょ?ここは日本だよ」
男を諫める為に、冗談ひとつ言わず言い聞かせるワタシ。だが、上司はそういうワタシ達の目の前で、ジャキ!とスライドを引いて発砲準備を済ませてしまう。
「ガスガンだが、チト、弄りモンでなァ。弾が違うんだ」
穏便に済ませようとしたワタシと違い、上司はちょっとだけ茶目っ気を出したいらしい。彼女は、この【新米幽霊】で存分に遊ぶ為…彼から1つでも多くの情報を得る為に、ガスガンの銃口をこちらに向けて、そしてこういった。
「出てくる弾はBB弾じャねェんだ。1発掠れば【2周目】はスグに終わりを迎えちまう」
脅してるようで、割と本気な忠告。男はワタシ達の顔を見比べつつ、自分がどうふるまえばいいか分からなくなってしまっている様だった。まぁ、無理もない。急に呼び出されたと思えば銃を向けられ「さもなくば死ぬぞ」と脅されているだけなのだから。なにが「さもない」のかもワカラナイ彼に、何が出来るというのだろうか。
「折角幽霊になれた【幸運】を活かしたいのなら、ワタシ達の質問に【嘘偽りなく】答える事だね。【霊媒師】に、嘘は通じないから」
ワタシはそういって男の首根っこを掴んで隣に座らせてやった。
「貴方の様な死にたてホヤホヤの霊を見ることは滅多になくてね。大抵、死んですぐ、霊は人気の付かない場所に逃げ込むから…でも、貴方はそうじゃなかった。強い恨みを持って彷徨い…【弱そうに見えた】ワタシを狙った。ここまでは合ってるでしょう?」
銃を向けたままの上司の代わりに、ワタシが先鋒となって男に問いかける。
「で、こうなった」
上司を止めるつもりだったワタシも、すっかり彼女に乗せられてしまった様だ。ワタシは、机に置いたお札をヒョイと拾い上げると、それをクシャ!と握り潰し…結果、苦悶の表情を浮かべた男に向けて、こういった。
「何処の誰で、いつ、誰に殺されたか…殺されるような覚えはあるか…貴方の全てを、ここで吐き出してもらうからね」
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