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三日目 シモザメ波

「何だよ、これ……」

 そこにあったものは……何も無かった。誰もいなかった。

「お前がいないんじゃ、しょうがねえじゃねえかよ……‼」

 京平は右拳を強く握り締める。幻想殺し。超能力だろうと魔術だろうと、問答無用で打ち消す能力。もしかしたらこれのせいで、シモザメの存在を消してしまったのだろうか。

「小学生なのに中二病? 京平くん」

 この声は……オナニーしている時に何度も聞いた……有名声優声負けの……野沢雅子と田中真弓を掛け合わせたような……

「悟リリン!」

「シモザメだよ! 一文字も合ってないよ!」

「まあ、亀と鮫だし、似たようなもんだろ」

「シモザメ波食らわすよ⁉」

 シモザメがかめはめ波みたいなポージングを取るのを見て、京平は思わず噴き出す。

「え⁉ かめはめ波ってこんな感じじゃなかった⁉」

「違う違う。いや、合ってるよ。いや、そうじゃなくてさ」

 京平はシモザメの身体を抱き締める。

「嬉しいんだ。前回の前振りのせいで、絶対悲恋みたいなことになると思っていたから」

「京平くんは原寛貴様を舐めすぎだよ。神だよ神」

 シモザメは京平の顔を自身の乳房で押し潰す。ここまで気持ちの良い圧迫はあるだろうか。

「でもシモザメ、俺、もう帰らないと……」

「十年後の八月……」

「え?」

 十年後の八月? 何のことを言っているのだろうか? キッズウォー?

「十年後の八月、また君に会えるかな?」

「馬鹿野郎! 十年後どころか、毎年来てやるよ!」

「毎年かあ。君なら本当に来てくれそう」

 シモザメは笑う。その笑顔の奥には、寂しさが滲んでいるような気がした。

「初めてだったんだ。京平くんみたいな人に会うの。私なんて、下半身が鮫に食われ続けているのに、京平くんは怖がらず気持ち悪がらずに普通に接してくれた」

「シモザメ……」

 何だよ。そんな話すると、もう二度と会えないみたいじゃないか。十年後の八月……もしかしたら、その日がタイムリミットなのかもしれない。いや、もしかしたら、そこからが始まりなのだろうか。

「忘れない、忘れないよ」


 しかし十年後、物の見事に忘れていた京平は、結局未だにシモザメと再会できなかった。という、昔体験した話を基に書きました。いやあ、久し振りに爽やかな短編! こういうので良いんだよ! という読者の声が今届きました。この話は正直脚色した部分が大きいですが、それでも何か懐かしさを感じるような不思議な作品でした。小学生時代は割とこういう妄想しますよね。京平とシモザメが皆の心のどこかにシモザメ波を食わらせることを願って。夏祭りにはりんご飴! 四個買おう四個!

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