52 同棲生活
「では問題。この世界には亜種と呼ばれる魔物が存在します。では、その亜種はなぜ生まれるでしょう」
「……ルミアが生み出した」
「違う違う。もっと考えてくれ」
「じゃあ……異世界から来た者……」
「残念! 実はまだ分かってない!」
「は? なんて問題出してんだよ」
「まだまだ研究中でね」
「ド素人が……」
「君だってこの世界に来てからまだ一ヵ月もたってないじゃないか。人のこと言えないぞ」
「俺はいいんだよ。なんせ特別……なんだから」
「はあ。もういい。飯を作ってくるから待ってろ」
もう三日もたったのか。ヘデラ達が恋しいと思うことは何回かあったが、今の生活も楽しいな。
ただ好きになれって言われてもな……。添い寝してもムラムラしただけで、それは恋心ではないと思うのだけど……。
しかも拘束されたままだし……もう飽きてきたぞ。
別にこの部屋からで出ても魔王城の中なら逃げてもすぐ捕まるだろうし、外してくれないかな。
「確かに……君はもう逃げようとしないのなら外してもいいかも」
「うわ! 居たの……?」
「結構最後の方だけど、心の声が読めるって言ったろ?」
「ああ、俺のプライベートが無いってことを自覚してなかったよ」
「じゃあご飯もできたし外すぞ」
「あれ? 足も外すの?」
「ああ。もうこれは必要ないだろ。逃げないのならな」
「よしよし。やっと動かせる」
「はい。じゃあ食べるよ」
「うあ……あれ……。ルミアはまだ寝ているのか……」
ということはこの部屋を物色していいってことだな。
下着とか探したいけど、ここは脱出の手がかりが欲しい。夜中だから慎重に行かないとな。
……あれ? 机になにかある。寝る前はなかったよな。
日記帖か……。しかもルミアの……。
下着がバレるよりこっちの日記を読まれる方が恥ずかしくないだろ。
「じゃ、失礼しまーす」
‘‘九月 八日‘‘
今日から日記をつけることにした。
お母さんが作った日付というものを使ってみようと思ったからだ。
そしてこの日は私が魔王になってから五年目の周年記念日だし。
でも書くことが無いので今日はこれで終わりにしようと思う。
‘‘九月 二十日‘‘
今日で二回目の日記。
毎日やって初めて日記になると思うが、そんな事はどうでもいい。
今日はお爺様の機嫌がすこぶる悪い。孫娘ってことで見逃してもらっているのか、私には当たらなかった。
よかった……のかな。
‘‘十月 十三日‘‘
一大ニュースが飛び出した。
異世界か来たであろうものがこの地に降りてきたのだ。
偶然近くを見回りしていた時に裸で転生してきたようだ。
こいつにも特殊能力があると思う。そしたら私の野望もかなうかもしれない。
しかしこいつの横にいるのは誰だ?
‘‘十月 二十八日‘‘
どうやらあの転生者はハルトというらしい。
私の用意した刺客を次々になぎ倒しているし、戦闘に特化している特殊能力かと疑っている。
でもすぐ仲間というものに出会っているのだからまた別の能力なのかも。
‘‘十一月 六日‘‘
色々疑ってみたがやっぱり分からなかった。
しかしハルトの都合のいいことがたくさん起きている。
結論として特殊能力を意外性ってことにしておこう。
ハルトの都合のいいことが起こる能力を使えば私の野望を叶える。
今すぐにでも計画を立てないと。
‘‘十一月 八日‘‘
やっと計画が立てれた。
不慣れなことはするんじゃなかったが皆に私の野望をバラす訳にもいかないし、仕方がないものだ。
ハルトを迎える準備もできていることだし、早速さらってこよう。
「人の日記見て何が楽しい」
「あ。起きてたの?」
「まあな。夜中だが君がごそごそしているので起きてしまってな」
「……別に自家発電なんて考えてないからな」
「分かってるって。それよりもこんだけプライベートを覗かれたんだ。また拘束しないと……」
「悪かった! それはしないで……! でもルミアだって俺のプライベート覗いてるじゃん。それにお互いのことを共有していくことで親睦が深めるってことよ」
「……一理あるのが悔しい」
「まるで、一リアルってか」
「はいおやすみ。君も早く寝ろよ」
……シカトが一番傷つくんだ。せめてうんとかすんとか言えよな。
まだまだ日記は続いている……が、やめておこう。
それよりも日記で出てきた計画が気になる。
明日教えてもらえないかな。
「ああ、分かった。想定内だ。その作戦て行ってくれ」
んあー。寝た寝た。
だめだ。眠気が取れない。もうちょっと寝よ。
「おい。起きろ」
「あと一時間……」
「普通は五分だろ。そんな事より君にとって嬉しい内容が来たぞ」
「なに~」
「君の仲間が……」
「来たの!? わざわざ!?」
「来てないよ。動き出しただけさ」
「……なんだ。普通は侵入してきたって言うところだろ……というかそこまで警戒しているの?」
「当たり前だ。私の一生をかけた一大イベントが台無しになったら困るだろ」
「じゃあ後何日で来るの?」
「順当に行けば一週間ぐらいじゃないか? でも……」
「でも……?」
「道のりに立ちはだかるベストメンバーを用意したのさ」
「お、おお。それは……すごいね」
「まあ心配しなくていい。この部屋には絶対近づけないからさ」




