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50 魔王の目的


 (ハルトー。朝ごはんよー)


 (今行くよ!)


 (久しぶりに早く起きたわね。いつもこれくらい余裕をもって行動しないと……)


 (はいはいあんがと)


 (……最近学校どうなの? もう高校生でしょ。友達とは違う高校なんだからまた一からになると思うけど……)


 (うまくやってるよ)


 (そう。ならいいんだけど……。せっかく偏差値の高い高校に行ったんだからこのままいい大学まで進学してよね。それが一番の親孝行ってものだし)


 (そうだね)


 (話聞いてる? スマホばっか見てないで、親との時間も大切にしなさい)


 (分かってるって。いつまでも子供扱いしないでよ)


 (はいはい。ハルトは頭はいいからね)


 (そういう意味じゃないって……)


 (あ! もうこんな時間! ハルト。学校遅れるよ!)


 (もう準備は出来てるから……じゃあ)


 「行ってくるよ……」



 夢か……久しぶりに見たな。自分の寝言で起きるの初めてかもしれない。

 というかここどこだ? 見たことない天井だ。

 とにかく起きないと……あれ? 体が動かない。金縛り? いやこれは……拘束されている……。

 拘束……? これヤバイやつだ……。なんでこうなったんだ。思い出せ。

 確か魔王が現れて俺を眠らせたのか。

 魔王は? あいつはどこにいるんだ!


 「お! やっと起きたか。三日も寝てたんだから心配したぞ。力加減間違えたかと思ったわ」


 「えと。あの。ここ……え?」


 「はは、面白いな! これが混乱ってやつか」


 とにかく現状を整理しよう。

 こいつが俺をさらったんだな。それでベッドに拘束されて……。

 ここはどこだ?


 「ここは魔王城だよ」


 「……心の声読めるの?」


 「ああ。というかそんなに驚かないんだな」


 二度目だし……。

 とにかくこいつが俺をこんな目に……。


 「さっきからあいつこいつって……私にも名前はあるんだ。ルミアって言うんだが……覚えてくれよ」


 「そうですか……」


 「おっと。敬語じゃなくていいぞ。年も近いしここはフランクにいこう」


 「なら……え? 俺の年齢知ってるの?」


 「ああ。そうだが」


 「心の中でも言ってないぞ」


 「君が寝ている間に君の記憶を覗かせてもらったよ」


 「そんなこともできるんだ……」


 「特殊能力はこれくらいだけどね」


 まてよ。俺の記憶を覗いたってことは……。


 「その通り。君のことは全部知っているさ」


 「……まじ?」


 「まじだよ。君がこの世界に来た理由もね」


 「……もうめちゃくちゃにして!」


 「おいおい、しないって……」


 「……じゃあなんで俺に用が……?」


 「話すと長くなるが……あれは私が生まれた時……」


 「手短に」


 「……君は傲慢だな」


 「早く!」


 「あれだよ。君が転生者だからだよ」


 「……?」


 「えっと……。私のお母さんって誰だか知っているだろ? ミサキって言うんだが……その人も転生者なんだよ。君と同じだ」


 「それがなにか関係あるの? もしかして母親が恋しく……」


 「君。口枷をつけるよ」


 「すいません」


 「……私が転生者を望む理由だが。どうも転生したものってのは特殊能力が生まれるらしい」


 「それってチート能力とか?」


 「いや違う。君が聞いたことある言葉で言うと……エラーだ。そうエラーが起きるんだよ。転生者に」


 「……ほんと?」


 「君にも覚えがあるだろ。ほら……元居た世界で……」


 あー。あれか。俺の死因か。


 「でもあれってたまにしか出ないってヘデラが……」


 「あの女神が言っていたのは多分勘違いだ。実を言うとエラーってのは転生者全員に生まれるものなんだよ」


 「じゃあなぜ勘違いが……」


 「そのエラーは人によって差が出るんだ。ほぼ気にしなくていいものや、明らかにおかしいものもある」


 「それが俺に?」


 「ああ。その通り」


 まじか……じゃあ俺は実は大天才って言うことか? 魔王にも認められる天才……っふ。いい気分だ。


 「ああ……君はその……天才って言うものじゃなくてだな……」


 「言いにくいなら言わなくていいぞ。このままの気分でいさせてくれ」


 「私がさらった目的にも直結するし、自覚してもらわなきゃいけないからいうぞ」


 「……そっか」


 「君の特殊能力、それはずばり意外性だ」


 「……」


 「落胆するな」


 「いや、それって俺が活躍する理由じゃ」


 「その通り。だが魔物退治の時に出たものじゃなくて、すべてのことに言えるんだ」


 「つまり?」


 「そもそもこの異世界に来て何が起こった?」


 「……色々」


 「……色々って……適当だな……でも、その色々起こったことに言えるがすべて君にとってプラスなんだ」


 「でもそれってヘデラが都合のいい異世界に飛ばすって」


 「それも関係あるが、行く先々のことなんて予想が出来ないだろ。そこで君の意外性が起きたってことだよ」


 「それっていいものなの?」


 「あたり前だ。だから私は君を欲している」


 「……じゃあ聞くけど。ルミアの目的は?」


 「この世界を……変えるんだ!」


 また大それた目標を……。


 「君だって魔王討伐が目的じゃん。どっちもどっちだ」


 黙れ小僧。俺の場合はことの大きさがちがうんだよ。


 「……ごほん。今の世界は、君の目にどう映る?」


 「人と魔物が対峙している」


 「そう。さらに言うと、人はこの世界を人だけに、我々魔物はこの世界を魔物だけに。私はここを変えたいんだ」


 「へー。全部なくして破壊と……」


 「違う違う! 共存だよ。きょ う ぞ ん ! 人と魔物が一緒に暮らすんだ。別に仲良くなれとは言わないが……せめて目が合ったら戦闘なんてことは無くしたいんだ」


 「へー。それが俺にできるって言うこと? 多分出来ないと思うぞ」


 「私もそこが懸念点なんだ。君がそうしたいって願わなくちゃ実現なんかしない」


 「無理なら俺を解放してくれ」


 「なんだ? ムラムラしてきたか? 処理なら私もできるが……」


 「違う違う。そうじゃない」


 まあ処理してくれるなら……ムフフ。手かな……胸もいい……それともここは足……? いやいやここは王道の……。


 「君は意外と……変態なんだな……」


 「……で、どうやって俺の特殊能力を使うんだ?」


 「っふ。簡単だ……。洗脳すればいい」

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