49 変えるには
「ヘデラ。一回家に帰るよ」
「……なんで」
「そりゃ、いつまでもここに居るわけにはいかないでしょ」
「……うん」
「ほら動く!」
「アンス。ウリンはついて来てくれるって」
「そうなんだ! よかった」
「あとは二人だね」
「うん。頑張ろう」
「……ううう」
「はぁ……」
ヘデラもいい加減立ち直ったらいいのに……。
まったくこれだから子供は……。
「早くしてくださいませ。悲しいのは分かるけど……」
「ウリンもついて来てくれることだし。肩を貸すからさ。ほら!」
「……うん」
でも無気力人間って……庇護欲が搔き立たせられちゃう……。
かわいい……のかな。まあいいや。
「おんぶがいい……」
「ほ~ら可愛いでちゅね~」
「じゃあとりあえずアンスの自宅にテレポートしますので」
「お願いウリン」
「テレポート!」
「ねえヘデラ。布団からでてこよ。ハルトが使っていたからって……」
「……ほかのみんなは?」
「スカウトよ。目星の二人をね」
「目星って……」
「分かるでしょ。マズミとメランジ様よ」
「そっか……」
「よいしょ」
「どうしたの……? 座って……」
「……ごめん何話そうとしたか忘れた」
「……」
「じゃあ私はご飯買ってくるから、そのまま寝て……英気を養ってね」
「……ばいばい」
「はーい」
呆れを通り越して疲れが出てきた。いつも通りのヘデラに慣れちゃって、今のヘデラが別人みたい。もうこれ病気でしょ。
とにかくハルトを取り戻さないていけないし、サザンとウリンには頑張ってもらおう。
「メランジ様。この毛布を使ってください」
「ああ、ありがとう。明日の為に今日はゆっくり休もう」
「でもメランジ様。なぜ私の家で寝るのですか? メランジ様なら王国で、さらにふかふかなベッドで寝れたはずでは……」
「仲間に対して格差があったらダメだろ?」
うん、格が違う。こりゃ誰でも惚れますわな。多分男でも惚れるぞ。こういうのって男の中の漢って言うのだっけ?
「……マズミは?」
「教会の様子を見たいから明日の朝に集合する」
「そっか」
「ねえアンス。わたくしの毛布はどこですの? わたくしも一応お姫様なんですから……」
「……ヘデラが使っている毛布で」
「いや……渡さない……」
「ヘデラ。一応、一応姫なんだからさ……」
「うるさい……」
「ダメ見たい。メランジ様と一緒に寝て」
「……まあ、いいですわ。庶民のわがままを聞いてこそ、上に立つ資質があるってものですわ」
「俺も別に構わないが……二人はどうするのだ?」
「私とサザンは……どうしよう。このまま布団なしで寝る?」
「それはいけないぞアンス。風邪をひいてしまう」
じゃあ私もメランジ様と一緒に寝ます……!
って言ったら流石に引かれるか……。
二枚しか布団をもってないし……。
「ねえヘデラ。三人で一緒に寝てもいい?」
「うん……」
「よし解決」
「じゃあまた明日だ。おやすみ」
「おやすみですわ~」
私もメランジ様とがよかったな。いっそ寝ぼけたふりしてメランジ様の布団に入ろうか……。
まあでもいっか。これで。
「ほらヘデラ。みんなも寝るからさ。ちょっとだけ寄ってくれる?」
「ん……」
「……狭いね」
「狭い」
「……」
今度ツインの毛布買おう。そうした方がいいでしょ。
「んあ……おは……」
まだ夜中か……でも不思議と眠たくない。緊張でもしているのかな。
みんなはちゃんと寝てるみたいだね……一人を除いて。
「グスッ……」
「ねえヘデラ」
「起きてたんだ……」
「今起きたとこだよ。それよりもさ、いつまでそうして……」
叱るのは違うよな。ヘデラからしたら身内が死んだと同じこと起きてるんだから。
「ねえヘデラ。ハルトってどんな人なの……?」
「いい人……」
「へえ、いい人ね。確かに私もいい人だと思うよ、ハルトは。初めて異性の友達が出来たんだもの。私は友達が少なかったし、異性の付き合いなんて想像もできなかったわ。なんかそういう意味ではハルトは特別よね」
まぁ彼氏には向いてないかもだけど。
「もうハルトの内情は聞かないよ。あの魔王から聞けばいい話だし。だからさ……わがままだけど、魔王からハルトを取り返さない? ヘデラだけは行くとか聞いてなかったし……」
「……」
「まあそりゃ悩むよね。私だって勝てっこないって思ってるし……。でもさ、このままハルトのいない生活が続くのか、それとも頑張ってハルトと一緒に暮らすか。どっちがいい?」
「……ハルトがいる生活」
「でしょ。じゃあ頑張ってみよう」
「でも……」
「……ただただ周りが変わるのを待つのも一つの手だと思う。だけど……だけどさ、自分で動いてみようよ。自分が動けば、必ず何かが変わる。その何かってのは良い方かもしれないし悪い方かもしれない。でも現状を打破するには絶対に、絶対に自分が動くことが必要。だからさ、一緒に頑張って見ない?」
「……」
「もう私は寝るね。答えは寝てからでいいし。じゃ、おやすみ」
伝えたいことを伝えたらなんだか眠たくなってきた……。
これでヘデラも……何か変わると……いいな……。
「自分が動けば……何かが変わる……」




