４８ 計画始動
「よし！ 二人とも、あとは任せとけ！」
う！ 急に空気が重くなった……。なんで……。
「ふむふむ……ほーう……やっぱり……そこのお前！」
誰の事……もしかして……。
「ハルト。一緒に来てもらおう！」
「それはダメ……」
重い……息が……苦しい……。
みんなは……みんなはどうなの……ダメだ……サザンもウリンも俯いている……。
「魔王様……すいません……」
「いやいや。元は時間稼ぎだろ？ じゃあ十分頑張ったさ！ ありがとう！」
「ちょっと……まった……！」
「誰だい？ 私の威圧に耐える奴なんて……」
「ハルトは……渡さない……絶対……！」
「ほう。その怪我でよく立っていられるな……」
「ヘデラ……やめとけ……！」
「なんだいハルト。この女がそんなにいいのかい……？」
私も……止めなきゃ……！
「なるほど……そういう理由でね～。おいそこのヘデラ。ハルトは諦めな」
「いやよ……」
「小さい頃から見てきたのは分かるが……そのな、諦め時ってのが来たんだよ。だから……その……」
「渡さない！」
「はあ、愛が強いのは分かった。じゃあ強引に連れて行くしかない。おい、ハルト。捕まれ」
「無理だ……。そもそもなんで……」
「城に着いたら話してやるから……今は黙ってついて着てくれ」
「だから理由を……」
「……」
「やめろ……何を……！ ああ……」
「よし。寝たね」
「やめろ！ ハルトを離せ！」
「おいおい。そんな余力で魔法を放ったら死んじまうぜ？」
「死ねえええ！」
ヘデラ……そんなに……でもこれで……！
「……ほらな？ 意味ないだろ」
そんな……ヘデラでも無理なんて……。
「んじゃあもう行くよ。君たち、あんまり深追いするなよ」
ああ！ やめてよ！ 連れてかないで……！
「実際に魔王が現れたと……それで？」
「お父さん。しっかり聞いてる？」
「ああ、ちゃんと聞いてる」
「それでハルトが連れて行かれたの……」
「どこにさ？」
「城って言っていたから魔王城だと思う」
「そうか……それで魔王の特徴は？」
「暗くてよくわかんなかったけど、身長は高かった。あと肌は褐色だったし……」
「ほかの特徴は？」
「人っぽい見た目をしていたよ。顔はよく見えなかったけど……」
「なるほどね……」
「ねえお父さん。ハルトを救ってくれる？ どうも私たちじゃ、無理っぽいじゃん」
「具体的にはどう手助けを……」
「人員をいっぱい動かすとか」
「ん～。無理かも」
「なんでそんなに冷たいのよ。人が連れ去られたのよ！」
「しかしそう言ってもな～。一人の為にそこまでのハンターは動かせないんだ……申し訳ない」
「そこを何とかしてよ……ヘデラが帰って来てから部屋から出てないからさ」
「無理の物は無理なんだ。諦めてくれ……。ただ、懸賞金は懸けとくから……やるとしたら同士を集めてくれ」
「そっか……」
みんな慈悲をくれなんだ……よく考えたら当たり前だよね……。
わざわざ個人が拉致されたからってみんなが助けてくれるわけじゃないし。
「なあアンス。俺の頼みも聞いてくれないか？ 昨日の戦場の始末書を書かないといけないんだけど……ほかの当事者にも聞いたけど誰も口をきいてくれないんだ」
「分かった、もっかい言うね。ハルトの身を助けるために隠れ家に行こうとしたけど、道中にアリアスとその仲間が現れた。頑張って倒したけど、魔王が現れて全部パーになった」
「お前に聞いた俺が悪かった」
「もういいよ」
やっぱり自分たちで何とかするしかないのかな……。それとも諦めようか……いや、諦めはしない。ハルトのおかげでここまで来れたし、借りは返さないとね。
「ウリン。そっちはどうだった？」
「ダメですわ。いくら掛け合っても兵士は出せないって」
「そっちもか……どうする？」
「わたくしは正直どっちでもいいですけど……あなたたちはそうはいかない様子ですわね」
「そうね。ヘデラはまだ聞いてないけど、サザンは一人でも魔王城に行く気だったし」
「そうですの……。わたくしも色々考えてみますわ……」
とにかく人員が欲しいわね。私とサザンは確定でいくでしょ、あとは魔王に対抗できるくらいの戦力……となるとヘデラは外せない。でもこんだけで行けるのかな……？ やっぱりもうちょっと人手が欲しい。ウリンも来てほしいけど、忙しいし……。はぁ、どうしたいいんだろう……。
「ねえアンス」
「うわ！ びっくりした……！ サザンね。何かあったの？」
「ヘデラに聞いてみようよ。ハルト君のこと……。多分私たちの知らないこといっぱい知ってると思うからさ……」
サザンの言う通りかも、ハルトがなんで狙われているか知ってそうだし……。洗いざらい話してもらいましょう。
「ねえヘデラ！ 部屋に入ってもいい？」
「……」
いくら城の部屋だからって防音な訳じゃないから聞こえていると思うけど、相当引きずっているのね……。
でも鍵はかかってないし入っていいってことよね。うん、入ろう。
「ヘデラ、入るよ」
「あらら……」
散らかっているわね……。見るに堪えないわ。
「ヘデラ。大丈夫？」
「……」
「ねえヘデラ。改めて聞いて悪いけど、ハルトってどんな人なの？ 魔王に狙われるほど特別なの？」
「……」
「ヘデラ……」
「ハルトは……確かに特別……」
「ハルトって隠し事があるわよね。ヘデラは何か知ってる？」
「ハルトは……別の……別の国から来たの。ここから遠い国から……」
「そうなの……確かあった時は記憶喪失とかなんとか言ってけど、あれって本当なの？」
「あれは嘘……私がとっさについた嘘」
「……もうこの際隠し事はなしにしてさ、ね？ 何を言っても驚かないから」
「……分かった」
「じゃあ聞くけどハルトって何者なの？」
「ハルトは……うう……ハルトおお……」
「ああ、ちょっと泣かないでよ……。分かったから、話さなくていいからさ」
「ううう……」
「もう聞かないから。あれよね。二人だけの秘密ってことよね」
「……」
「アンス。話がある。こっち来て」
「分かったわ、サザン」
「で、話って？」
「ハルト君について」
今さら何なのよ。深堀りしないって決めたのはサザンなのに。
「ヘデラの反応と魔王の行動からして、多分ハルト君の生まれは、ここの銅像のミサキと一緒。誰も知らない、この世界の地図にも載っていないところだと思う」
「そっか……」
「あくまで仮説。正しいとは限らない。でも、ハルト君に……いや、ここは魔王に聞くのが一番いい」
「え？ どうして」
「あの魔王はミサキの子供。必ず何か知っているから……その……」
「なるほど。魔王城にいって秘密を暴こうってことね」
「うん」
「じゃあそのためには？」
「実力者がいる」
「よし、私も同じ。でも誰を集める？」
「ハルト君のことをよく知っている人」
「そうだね。今まで関わって来た人をあげて行こう」
