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47 戦いの続き


 「意外と冷えるね……」


 「ああ、毛布が欲しいな」


 馬車の中で一夜を過ごすなんて初めて。外に見張りがいるけど、やっぱりなんか怖いな……。


 「どうしたアンス。早く寝たらどうだ? みんなも寝てるし……」


 「ハルトこそ寝たらいいじゃん。狙いはあんたなんだし」


 「まあまあ、俺のことはどうでもいいだろ」


 そうだけど……そうじゃないんだよな……。


 「そういえば、二人だけで起きてる夜なんて久々だな」


 「そうね。あの時はヘデラがご飯に媚薬なんて入れて大変だったのよね。当の本人はこんなに可愛い寝顔をしてるって……なんか憎くなってきた」


 「今思い出すと懐かしさを感じるな」


 「というか今その話はしなくていいじゃない! 恥ずかしくなってきたでしょ!」


 「……初対面のときなんか俺裸だったよな」


 「その時はびっくりしたよ……」


 「今思うと、アンスって意外とウブなんだな」


 さっきからずっと私の話をしてるじゃない……。きっと何かあるわね。でもなんだろう、まさか死のうなんてことはしないわよね……。それは流石にないか。


 「そうやって黙ってたら可愛いのにな」


 「!?」


 「な、なによいきなり! びっくりしたじゃない!」 


 誘ってるつもりなのかな……? そしたら下手くそなんだけど。

 ていうか今更ハルトなんかに欲情なんて起きないわよ。だって私が色々お世話してきたし……。こんなダメ男なんて……でも、いざ付き合ったらどうなるのかな? 毎朝起こしてご飯作って……いや、ハルトなら毎朝ちゃんと起きるし料理も頑張って勉強して私のために振る舞って……って、私ったら何考えてるの! こんな妄想消してやりたい!


 「どうした? なんか顔が赤いが……」


 「ばか……」


 「……い、いきなり恥ずかしそうに呟くなよ……」


 「あなたたちって仲そんなによかったのですの?」


 「あ、ウリンも起きてたのか……」


 「途中で目が覚めてしまいましたわ」


 「それはごめん」


 「気にしなくていいですわ。また寝るだけだし」


 「なあウリン。なんでお前もついて来たんだ? 王国の姫なら安全な城にいた方がいいだろ」


 「実はわたくしの妹に会ってみたいのですの。種違いっていうけど……、それでも気になりますわ。魔王をやっている妹なんて好奇心がおさまらないですの。やっぱりわたくしの妹なのですから色々趣味が合ったらいいですわ!」


 流石に厨二病の趣味が合いますなんて……魔王が……、なんかあり得そうで怖いわ。


 「厨二病の趣味が共通していたらキモいだろ」


 「うっさいですわ! ハルトはこの良さがわからないからそう言えるですのよ! これは一回わからせないといけませんわ!」


 「はい。もう寝よう! こんなところで体力使ってられないでしょ!」


 「そうだな。一緒に寝」


 「敵襲だ! 総員起きろ!」


 「「!?」」


 「何事ですの!? まだついてもいなのですのに!」


 「ウリン様! こちらの魔力探知機が反応をしています! どうやら来た道から迫っているようで!」

 

 「敵の数は!?」


 「それが……二人だけで……」


 「え? 二人だけ?」


 「そうです。二人だけしか……しかし、その二人が強大な魔力を示していて……」


 「どういうことですの!? とにかく今から対策を!」


 急にどうしたのよ。まさかもう魔王が来たっていうの? でも二人だけで襲ってくるって……もっと来るのが普通じゃないの?


 「ん~。ハルト~。何が起こったの~」


 「お前はそのまま寝とけ」


 「アンス。みんな慌てているけど、どうしたの?」


 「敵襲みたい……ほら。ヘデラも抱き着いてないで……」


 まあ二人だけって言うなら何とかなるかも。こんなに人数がいるなら、手分けしたらいいし。


 「ウリン様! もうすぐそこまで来ています!」


 「明かりをつけなさい! とにかく臨戦態勢を!」


 「……足音が聞こえる」


 誰が来るんだろう……、でも誰でも私が倒すだけ……。


 「おやおや皆さんお揃いで」


 「あなたは……そんなはずでは……」


 「誰……? これは……天使……?」


 「アンス、違う。これは海底神殿であったあいつ……堕天使アリアス……」


 「「!?」」


 「記憶力がいいですね」


 「なんであなたが……それに後ろにいるのは……」


 「よお。また会ったな……お嬢ちゃん……」


 「ウリンをさらったデカブツ魚人も……」


 「どうして……あなたたちがここに……助けてくれたんじゃ……」


 「そうでしたが、魔王様ご指名で雇われました。もちろん、ハルト目当てですがね」


 「総員! ハルトを守れ!」


 「ちょ! そこまでしなくても……」


 「あんたは下がってて!」


 危機感が無いって、だから襲われるのよ……。


 「お頭……どうします……?」


 「あなたは兵士たちを……実力者はわたしが」


 「なんだなんだ? ぐっすり寝てる時に……」


 「ああ!? 誰だてめえは!」


 「うわ! なんだこの巨体は……! だが……威勢だけなら誰でもできる。俺は民間ハンターでもトップの実力だ……。気を付けたほうがいいぜ」


 「揃いましたね……では行きましょうか!」


 とにかくハルトだけでも死守を……。


 「遅いですね」


 ……!? 後ろ!?


 「居ない……」


 「アンス! 左!」


 「え?」






 なにが……。


 「アンス。動かないで……」


 痛い……左脇腹が……。


 「今回復しているから」


 「みんなは……」


 「ヘデラとウリンがアリアスを、そのほかはあの魚人を相手してる」


 「それで……ハルトは……」


 「ここだよ」


 「前線から引いてもらってる。ここは少なくとも安全だから」


 「そっか……」


 まだ何とかなる……ちょっと痛いけど、リーダーの私が倒れてたら面目が立たないし……。


 「アンス、無理すんな。みんなを信じとけって。最悪俺目当てなんだし逃げればいいから」


 「嫌! それだけは嫌なの!」


 「アンス……」


 「でも、今の戦いには負傷者は出せないぞ。見てみろよ」


 なにあれ……。みんなすごい気迫……。魚人はあのハンターを筆頭に互角に争っているし……、アリアス相手は……。


 「あんなヘデラ見たことないだろ。なんせウリンが置いて行かれてるからサポートをしてるんだぜ。普段からその実力を出しとけって話だよな」


 みんなすごいわ……。でも私ったら……情けない……。


 「そんなにへこまなくてもいいだろ。もうちょっとで回復するから待っとけって」


 「うん……」


 「す、すごいですね……。わたし相手にここまでやるとは……」


 「ハルトは……渡さない!」


 「そろそろわたしも疲れてきたところです……。一気に決めますよ!」


 「ヘデラ! 危ないですわ! 避けなきゃ……」


 「お嬢は黙ってて!」


 アリアスの腕から魔力があふれている……。こんな力見たことない……。


 「おやおや……まさか受け止める気ですか? いいでしょう! やってみなさい!」


 「おいヘデラ……!」


 「見てて……」


 ダメ……!





 「まさか……耐えるとは……。ぐはっ……!」


 「はあ……はあ……ほら……大丈夫でしょ……」


 すごい……あんな爆風喰らって……まだ立っているなんて……。


 「ふふ……ここまでの人間には会ったことがないですよ……」


 「さあ……ハルトは……諦めて……」


 「もうすべてを使い切りましたしね……わたしは諦めますよ……」


 「お……お頭……こっちも……」


 「そちらも限界でしたか……」


 「へっ……! まあ、こんなもんよ……」


 やった! 凌いだ! これで安心して……。


 「わたしの役割は終わりました……あとは……任せましたよ……」


 え? どういうこと? 任せるって……誰かいるの……?


 「ウリン様! こちらに何者かが近づいています!」


 「なんですって!?」


 「見てくだ……うわ!」


 「え……魔力探知機が……壊れた……なんで……そんな事いままで無かったですわ……」


 魔力探知機が壊れるなんて……もしかしてもう……ここに……。


 「よくやった二人とも! あとは私が引き受けよう!」

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