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45 過去を知る者


 「女王、ミサキについて」


 「女王……ってことはわたくしのお母様ですの……?」


 「そのとおり。彼女はすさまじい人だ。生まれてこの方見たことがないくらいにいね」


 「やっぱりわたくしのお母様はすごい人なのですわ」


 「……勘違いしないでほしい。人間界のことを言っているのではない。我々魔物界のことを言っているのだ」


 「……? どういう……」


 「ミサキは十九年前、突如として魔王城に現れた。人間がいきなり来ていいところではないが、その独特のオーラに皆が怯えた。実力があるものすべてが察し、ミサキに道を与えたのだ」


 「お母様が……魔王城に……?」


 「当時の魔王も困ったそうだ。だが二人は惹かれ合うものがあったのか、しばらくミサキは魔王城に住んでいた」


 「なんでそんな事……」


 「私にも分からない。これは完全に二人しか知りえなかったものだ。同じ境遇の物同士が手を組むってのはよくあること。しかしそこである事件が起こる。二人の間に子を授かったのだ」


 「え……? 子供……? お母様の子はわたくし……」


 「君は人間の間の子供だが、わたしが言っているのは魔物との子。いわば君とは種違いの姉妹が生まれたってこと」


 「いや……わたくしのお母様はそんな人じゃ……」


 「……しかしそんなことは魔物界が許さない、魔王の父が激怒したんだ。そこからは見るに堪えない戦争だ。伝統と純潔の血を重んじる右翼、改革と革命を望む左翼が争った。ただの争いではない、つい最近まで……十三年も続いた魔境だ。わたしはただの傍観者でしかなかったが、当時争いをしていた物達は口をそろえてこう言った。『地獄』とな……」


 「え……戦争? 最近までって……」


 「いきなりこんなこと言っても飲み込めないし受け入れられないと思う。だが事実だ。それだけは揺るがない……」


 「じゃあどうやってその戦争が……」


 「結果から言うと勝利したのは右翼だった。後ろに魔王の父がいたんだ、それだけ力も強大だっただろう。戦争犯罪人として当時の魔王は公開処刑。それに絶望したミサキも後を追うように……。だが光もあった。それが新生魔王として誕生した君の姉妹、ルミアだ」


 「その……わたくしの姉妹のルミアが……」


 「人間と魔物のハイブリット、皆が想像できない能力をたくさん持っていた。若干十三ですべてを統治した。ミサキの遺伝子のおかげだろう。戦争でボロボロになった魔物界を立て直したのだ。そこから五年、また一筋の光が出てきた。それがこの男だ」


 「ハルトが……」


 「この男が突如として現れたことを察知したルミアはすぐさま全勢力を集めて調査に名乗りでた。一個人にここまで動かすのにはそれそうおうの納得材料がいるってものだ。だかルミアは一貫してこう言う。『ミサキと同じ人間』それ以上でもそれ以下でもない」


 「わたくしのお母様と同じ?」


 「こればっかりはわたしにも分からない。だが推測するにミサキのオーラ、この男のオーラ。ルミアは特別な能力を持っていることを加味するに、二人は皆とは違うもの。まるでこの世界の住人ではなく……異世界人のような、名状しがたい者たちだってことだ」


 「……続きを……」


 「!? 起きてたのハルト!? いつから!?」


 「結構最初から……」


 「ルミアは無理を言うが、今までの功績を無視するわけにもいかない。皆が疑問に思いながらも君を調査したんだ。各所に魔王の幹部たちを配属し、君の実力を測った。まあ、そのことについて反発するやつもいたが……、しかしそれをも凌駕する君。もうそろそろ調査を終えたころだろう。ルミアは君を探しに来る。正直なにをされるか分からない。一つわたしから言うとするならば、関わるのなら人生をかける覚悟を持つことだ」


 「……そうか、ありがとう……」


 「どういたしまして」


 話がついてこないですわ……わたくしのお母様が当時の魔王の子供を授かって、その子供がハルトを狙っている……? しかもその子供は新生魔王でわたくしの種違いの姉妹……。もう! 訳が分からないですわ!


 「ハルトー! どこー! ウリンも返事してー!」


 「音沙汰がないね」


 「ハルトー! 今なら授乳オプションをつけるわよ!」


 「ここだ!」


 「わお。意外と近くに……って何があったの? みんな騒然としているけど……」


 「ハルト君。こんな所に……ってあなたは……」


 「おや。そこのお方。わたしをご存じで?」


 「あなたは……天使アイリス……」


 「ほう……わたしのことをそこまで知っているとは少々驚きです。かなりの勤勉ですね」


 「当時この神殿で崇められていたとされている者が……」


 「何千年前のことですよ。だけどその名は今は違います。今は堕天使アリアス。もう誰も拝んでないですからね。堕ちてもしょうがない」


 「だから羽が……」


 「今は関係ありません。それよりもあんまり長居すると危ないですよ。ここはわたしが手助けを、テレポートを差し上げます」


 「お頭。いいんですか?」


 「ええ、特別な人間には特別な処置を。では行きますよ! テレポート!」

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