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43 海底神殿の中


 「やっと新鮮な空気が吸えましたわ!」


 「しかし中はこうなっているとは……うん。俺好みだ」


 人の手が加わっている綺麗な壁画の道が見えないところまで続いている。一体どこの誰がいつ作ったのか気になってきた。でも……新鮮さがない。海の塩素で壁が塩化していてサビが目立っている。

さらに言うとかなり長くまっすぐに、一つの消失点に向かっている一本道がより恐怖を物語っている。これは誰でも足がすくむぞ……。


 「綺麗ね……こんなの見たことがない……」


 「本で読みましたわ! 長い一本道の最後には王室があって……それでそれで! 奥の奥にはお宝があるって……!」


 「そこまで予習しているならウリンに任せといていいな。じゃ、頼んだぞ」


 「は? 何言ってるんですの? わたくしの護衛は誰がするのです? ハルト、あなたですのよ」


 「確かに。唯一の男だしね」


 「ハルトに守ってもらうのね! それもありだわ!」


 「…….おいおいお前ら、レディーファーストって知ってるか? こういうのは女性優先、俺は紳士だからな。譲ってやるよ」


 未知の領域に足を踏み入れるのは明らかに俺ではない。俺の役目はあくまでセーフティーネット。尻なら拭いてやるが……先頭打者には向いてない。


 「ちょっと……誰が行くのです……」


 「私がいく」


 「サザン……いいの?」


 「仕方ない」


 「それなら私が行くよ。戦闘は得意だし……」


 「二人も立候補がでましたわ。どっかの男は臆病ですのね」


 「ウリン。仕方ないよ、だってあれじゃん」


 「……」


 ここまできたら手をあげる他ない。流石にこの場面でバカにされたら、黙ってる男はいないだろ……。


 「お、俺も……」


 「よし! 任せたハルト! さすがは男ね!」


 「まあここまでは男の常識ですわ」


 「やっぱりハルトが守ってくれるのね!」


 ……騙された。まあテンプレみたいな流れだ、読めなかった俺も悪い。でも、ここで空気をぶち壊すのが俺だ。


 「サザン。一緒に行くか……! あれ? サザンは?」


 「アンス。ハルト君が先に行ってくれるって。よかった嬉しい」


 「……」


 うん。知ってたよ。知ってた知ってた……。

 くそったれ!


 「おい! あいつらが侵入者だ! 仕留めろ!」


 まずい。道の奥から魚人どもが。

 一本道の闇からぞろぞろと出てくる。


 「よしヘデラ! こいつらを仕留めろ!」


 「分かっ」


 「わたくしがいきますわ!」


 俺より前に出てきたウリンが大勢の魚人どもと対峙する。


 「わたくしの野望を邪魔するものは死に値しますわよ!」


 ウリンの両手から眩しく、どす黒く輝く光の渦が魚人の群れを襲う。


 「すげー」


 黒光りしている気泡を喰らった魚人達が次々に倒れて行った。

 一世を風靡したウリンが俺に向かって口を開いた。


 「よく考えたらお宝があなたたちに渡る方が嫌ですわ。わたくしが先頭を行きますわよ!」


 ……頼もしい、のか?

 まあ何はともあれ準備は整った。あとは進むだけだ。


 「さあさあ! どんどんかかってきなさいですわ!」


 「おい! 前見ろ! ちょっと小さくなってきてるぞ!」


 「わたくしの速度についてこれない雑魚ですわ~!」


 ちょっ、早すぎだろ……いい加減にしろ。もう来た時から疲れているんだよ。

 青二才のわがままがしんどいのは分かったから……。


 「この先にお宝が! わたくしのお宝……痛っ……なんですの……? これ……は……」


 「……若いおなごが……一人で……ああ、興奮してきた! こんな腐れた場所じゃあヤれないから……ちょっくら楽しみますか!」


 「は!? 図々しい図体でなに薄汚いことを……わたくしがそんな穢れたお遊びなんか……」


 「うるせえ! 楽しませてもらうぜ……」


 「きゃ! ちょっと……」


 「ふ、案外弱いものだな。おい! お前ら! 今から楽しむぞ!」


 「ひぇ……! 陰に隠れてこんなに……」


 「さあお嬢ちゃん。一緒に楽しもうな……」


 「おい! 俺にも分けてく……ぐは!」


 「はあはあ、間に合ったわ……!」


 「なんだなんだ……! ぐへ!」


 「……いっちょ上がり!」


 「みんな早いね。一人除いて……」


 「まっ……て……」


 まじで待ってくれ。みんなどこからその体力が出ているんだ……。俺ももっと鍛えとけばよかった……。

 ……もうちょっと酸素が欲しい……。


 「チッ! お前ら! 男は殺せ! 女は生かして犯せ!」


 「みなさま……っちょ! 痛いですわ! どこに連れて……」


 あのデカブツ魚人がここのリーダーか……。子分をかき分けて奥に消えて行こうとしているな。

 しかし強そうな肉体の持ち主。うん。俺には無理だ。


 「おっと。魔法は使えさせないさ。さっさと来い!」


 「アンス! ここは任せて奥に……アンス? おいアンス!」


 「はあああ……やあ! きりがないわねサザン。もっとバフを掛けて!」


 「……ヘデラ……ヘデラは」


 「かかってきなさい! もっとハルトにいいところを見せないと!」


 「…………はあ、結局俺か……」


 「なにハルト!? なんか言った!?」


 クソ。こいつら楽な方に行きやがって! あああムカついてきた!


 「どうせ俺がいないと何もできないくせに!」


 「だから何!? もっと大きい声で!?」


 「……もういいや。みんな! 俺が奥に行くから道を開けてくれ!」


 「了解! 雑魚なら私たちが!」


 こいつら本当は分かっていてこの行動をしているんじゃないか?

 ……まあいい。ここで俺の偉大さを見せつけろって神が言っているってことだよな。


 「見てろよ神! 俺がしっかり活躍するところを!」


 「分かったわ! 見てて上げる♡」


 「お前じゃない!」

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