33 歪な戦い 前編
木陰に隠れていたのか分からない。もしくは見つけたのではなく見つかりに行ったのか。
腕は六本、馬の頭蓋骨をかぶっている。
そして三組の腕はそれぞれが手を合わせている。
もっと情報を言うと脂肪が無く体の骨が浮き出ている。どっかで見た体だと思ったらあれだ。ダル〇ムを腕六本にして馬の頭蓋骨をかぶらせた感じ。実際あぐらかいて浮いてるし……。
「よし。あいつを殺めれば」
持っていた剣を鞘から取り出す。手入れはしてあるからあとは扱い次第だ……。
「あいつがドロスノーか……生まれてこの方初めて見たさ……。魔物の中ではひと際目立つ存在。お目にかかるのが珍しいやつとやり合うのか……」
サキュバスのお姉さんの肩を貸りていたサザンが自立する。
「もういいのか? サザン」
「大丈夫」
「よし行こうか!」
お姉さんが先陣を切っていく。
しかし、ドロスノーは洗脳兵士を自分の前にそろえた。
「上等! 全員殺せばいいんだよ!」
「だからまっ!」
やっちまったか?
いや、やってない。やられたようだ。
「どういうことだ? 魔法が効かない……」
洗脳兵士に向かって打った魔法は効き目をなしていなかった。
「大丈夫ですか!?」
「そう見えたなら助けてくれ……」
次から次へと問題が降ってくる。
その瞬間、喋れないと思っていたドロスノーが声を出した。
「人間一匹。魔物が二匹。得体のしれない化け物が一人」
見定めをしているのか。というかヘデラを人間と認識していないように見える。
「ねえハルト。もしかして存在バレた?」
「多分違うだろ。うん。ちがうよ」
そんなやりとりをしているときにドロスノーがさらに動く。
「まずは厄介な魔物からだ……」
その時、サザンの体からどす黒いオーラが放たれる。
「なにこれ……やだ……ハルト君……たすけ……」
「ちょっとサザン!? どうしたの!?」
「おい! 大丈夫か!」
目からは光が消えて、自分の体を制御できなくなったかのように、立ったまま宙に浮く。
サザンが右手、そして左手を合わせる。
まさか……。
「やられた……サザンが……」
サキュバスのお姉さんを見るに……、いや、見なくても分かる。サザンが洗脳された。
「ああ! 俺のサザンが!」
「いつはハルトのものになったのよ! せめて私にして!」
うるさい。今は黙るところだろ。
「あああ、ああ」
傀儡なんかになったサザンは見たくない。頼む。よだれをたらさずにいつもの無口でいてくれ。やめろ! 涙を浮かべるな!
「この小娘は使える……」
ドロスノーが俺たちのサザンを自分の近くに置く。
サザンが寝取られてしまった。
「まだ魔力ある……」
何を言っているのだこのドロスノーは……。
「人間は……使えん雑魚。ならばもう一匹の魔物」
またもや洗脳を始める。
しかしサキュバスのお姉さんは抵抗を見せる。
「ああ! 気持ち悪い! なんだこれ!」
黒いオーラは出ているものの、気合と根性で耐えている。
「耐えるか……仕方ない……」
その瞬間、漆黒の霧がサキュバスのお姉さんを包み込む。
「どうなってるんだ……」
「ハルト……大丈夫だ……。しかし気持ち悪イ。なんダこれハ。ヤメロ。あああああ」
最悪だ! こいつ、ドロスノー強すぎだろ。
それにしても味方が……。サザンが……。
「サザンが寝取られてそんな悲しいの?」
「当たり前だろ! 手塩にかけた娘が無差別にお〇されたようなものだぞ!」
自分でも何言っているか分からなくなっていた。
「魔物二人……魔力十分……」
突然ドロスノーの手下。サザンたちが詠唱を始める。
「まずいわね……洗脳解いてもどうせ無駄だし」
「死に場所がここか……墓すら立ててもらえないなんて嫌だな」
「覚悟を決めましょう。私はハルトとならいいわよ。まあ、おせっせしてないのは悔やまれるけど、あの空間ならいつでもできるし」
俺は嫌だ。死ぬ経験はしたことあるしまだなんとかなるが、こいつと一緒は嫌だ。頼む神様。一生の願いだ、こいつだけは離してくれ。
「終わり……死ね……」
ドロスノーが呟き、サザンたちの作った魔力の塊が俺たちに向かってくる。
がその瞬間に俺たちが来た方向に、叫び声が聞こえた。
「行くぞお前ら!」
ドロスノーもその声に気づいたが気の止める様子もない。
声の正体が現る。まあ予想はついたが、遠征していた兵士の皆さまだ。
「大丈夫か?」
「おい見ろ! あいつが今回の諸某者だ!」
ぞくぞくと兵士たちが到着する。
その中に洗脳されていた兵士も混じっている。
「おいヘデラ。あの中に洗脳が解けているやつがいるぞ。どういうことだ!」
「私も分からないわ。でもなんか想像は出来そう」
「その答えは?」
「あのサキュバスが洗脳された時、一瞬だけ、ほんの一瞬だけだけど、あっちにいた兵士たちのところから魔力が移ったわ。そう考えると多分……」
「多分?」
「ドロスノーの魔力はずっと一定ってこと」
「……?」
「バカなあなたも大好きだけど今は理解して。詳しく言うとドロスノーの魔力は下がらないし上がらない。もっと言うと相手の魔力は容量が決まっていて、使うとその分減る。けど魔力を使い終わったらその分戻ってくる。理解した?」
「えっと、つまり……今回の場合は、サキュバスのお姉さんを洗脳するために、もともと洗脳……使っていた魔力をお姉さんに回して洗脳したってこと?」
「まあそういうことよ。分かったならあとは頼んだわよ!」
お前が考えろ……。昔の俺ならそう突っ込んでいたが今は違う。なんたって俺はこのパーティーの核なんだから! 実際、王子メランジのお墨付きだし……。
ここは決め台詞を一言。
「やれやれ。仕方ないな!」




