21 頭脳対決
「しかしよサザン。警戒しすぎじゃないか?」
「警戒しすぎでちょうどいい。イレンは頭脳に関しては侮れない」
一歩進むたびに周りを見渡し、そしてすり足でまた一歩というカタツムリにも負けそうなくらいの進歩である。
「そうよサザン。さっきの魔物を倒してからトラップなんてないからもうちょっと……ね」
「裏をかくのが得意な相手。そう安易にはいられない」
裏をかいてくるのか。心理戦なんてものは漫画にしかないものだと思っていたが、この異世界はその意外が平気で出てくる。
「サザン。一つ思ったんだけどさ。ヘデラの魔力探知に頼ったら?」
その一言でサザンの顔に輝きが出てきた。
「確かに……。ヘデラ。お願い」
「任せなさい。おバカキャラを脱却しないとね」
するとヘデラは眉間にしわを寄せ、小さいであろう脳みそをフル活用をした。
「ふむふむ。左の物陰に二体の魔物。そして右奥にも一体。いずれも武器をもってそうね。そして……ん? この下にも魔力があるわ。何かしらね?」
ヘデラが指を差したところはなんとレンガの道だった。
「なるほど。下水道に潜んでるのか。ちょっと待って」
そういいサザンは道端の石を拾い、ヘデラの指さししたところに石を投げつける。
その瞬間にレンガの道は落とし穴に変わり、下の下水のへと石が落ちていく。
「うわー。魔物がいっぱいいるね。危うくリンチになってたとこね」
アンスがゆっくり落とし穴を確認しているがここからでも魔物の悔しそうな顔が見えている。
「ヘデラもたまには役にたつね」
サザンは毒舌を吐く。
「まーね」
褒めてるか貶しているのかは分からないが魔力探知はなかなかに役に立つ。
「なんか簡単だね」
道のりは少し改造されているが、迷いはしない。ヘデラの魔力探知は今のところ、相手の想定外みたいだ。
しかしそのアンスの感想は途端に変わる。
「なるほど。道がなくなっていて、この先はこの民家のどれかを行くのか」
道は一つの民家につながっており、その左右にも民家がある。
右はツタを纏っているボロ家。左は頑丈そうな大きい民家。そして最後は禍々しいオーラを放っており、いかにも敵が潜んでいそうな家だ。
「ヘデラ。ここもお願い」
いつものようにヘデラは魔力探知をする。
「あれ? なにもいないわね」
その言葉を聞き、サザンは考えこむ。特に考える必要なないと思う。三分の一で次のステージに行けるってことだろう。
「ねえサザン。悩む必要はないと思うけど。多分どれかが正解でどれかはずれ。最悪ヘデラを囮にしたら……」
「アンスさん? 喧嘩なら負けたことないけど」
「落ち着けヘデラ。ここで仲間割れは愚策だ。そうお前が囮になれば……」
「ハルトがそういうなら……」
「相変わらずね」
しかしサザンは俺たちの雑談をもろともせず考えこんでいる。サザンにとってこれは三分の一ではないのだろう。
「しかしどの民家に進むかか……中の様子は見れないのか?」
「ダメ見たいよ。内側から窓に板が張り付けられてる」
となると後は勘で決めるしかないのか。
「ねえ。この右の家は? なんか中からシングルベッドの匂いが……」
「おい。今は性欲を発散する場面じゃないだろ」
「左の民家は? 見た目的にここが安全っぽいよ。ヘデラの言う右の民家はぼろやじゃない。ここは左
ね」
「お前ら。相手を考えろ。裏をかくのが得意な相手だ。ここはいかにも怪しい雰囲気を醸し出す真ん中の家だ」
そう、相手を考えろ。心理戦漫画を読んだことがある俺の方が正しいはずだ。
「右よ! ハルトと一緒にまぐわうの!」
「ヘデラの言うことはあてにあらないわ。ここは安全そうな左」
「君たち。ここまでこれたのは誰のおかげかな? ここは真ん中のはずだ。そう、ここは誰も選ばれなさそうな真ん中の家だ!」
ここは真ん中のはず。このバカたちには分からないかもしれないが絶対に真ん中の家だ。裏をかくのが得意な相手でも俺の方が一枚上手だろう。
「もうこうなったらサザンに決めてもらいましょう。サザン! どれを選ぶ?」
考えこむサザンにアンスが問いかける。俺は信じてるぞ。ここは真ん中のはず。
すると結論を急がれたサザンが、俺たちの顔を見定める。
「まず右の民家。これは無し。入って閉じ込められたとしても壊せられる家。そうなると家の中に即効性のトラップがあるはず」
そうだサザン。その調子だ。
「そして左の民家。これもだめ。相手はイレン。安全に行こうとする心理を読み切れる相手。多分入ったら閉じ込められて、そのまま家を焼かれ終わり」
「そうだサザン! 残りはこの真ん中の家だ!」
「ハルト君。残念ながら真ん中もはずれ」
「「え?」」
皆も言うまでなく驚く。サザンは慎重すぎる。選ばなきゃいけない時に、この答えは出てはいけない。
「なんでだよ! ここは真ん中のはずだ!」
「みんな。気づいてほしい。なんで相手の選択肢を素直に受け取れるの?」
はて、どういう意味だろうか。ちょっと何言ってるかが分からない。
「どういう意味よ、サザン」
「そうよ。ここは選べと相手が言っているのよ」
「だから相手の選択肢は選ばない。イランはあえて偽の選択肢を出している。その選択肢の中で悩んでいれば、相手の思うツボ」
「つまりどうしろっていうのさ」
サザンは俺たちに納得してもらうために懇切丁寧に教え込む。
「新しく選択肢を作ればいい。この場合だと……」
思わず固唾を飲む。
「引き返す」
「「……」」
俺たちの中にない答えだった。
「この町はすでに改造されてるから戻ったら新たに道が出来てるはず……」
そういったサザンは一人で来た道を戻っていく。
それにつられ俺たちは小さく、しかし大胆に大きな背中を追っていく。
「本当だ。新しい道が出来てる……」
感服だ。サザンがいればこのゲームも怖くはない。
「ヘデラ。ここも魔力探知を」
サザンの提案は説得力が増してきている。ここまでこればヘデラも何も言わずに従う。
「見た感じない、魔物はいないわ」
その言葉でもサザンは一切の集中を切らさない。
この調子なら大丈夫なはず。
新しい道は下水道へと繋がっている。薄暗い中、いつ魔物が襲ってきてもおかしくないがヘデラは大丈夫と言っている。少し心配だが、まあ、大丈夫だろう。
「しかし魔物がいないって意外だな。この暗さなら襲ってきてもおかしくないのに……」
「そう、そこが私も疑問」
珍しくサザンと同じ考えだ。これは誇らしいのかはどうかは置いといて、光が見えない先へと進む。
「ねえハルト。ちょっと暗すぎない? 光でも出してよ」
まあそれぐらいなら俺でも出せるからいいか。
「ハルト。早くしてよ」
「待ちなアンス。ほら、いくぞ! 見とけよ!」
唯一の俺の見せ場が明かり役とは納得いかないが、この中でも一番元気なのは道中寝ていた俺だからな、ここは仕方がないが出してやろう。
盛大な演出はできないがあたりを照らす役目も必要だと考えさせられるな。
しかし明かりをつけた瞬間、サザンがしまったという表情を見せる。
「まずい。出口がない」
「「うぇ!」」
やばいはめられた。サザンが警戒しないといけない相手は侮れない。
「どうしましょう! ここでハルトと一緒に運命を終えるなんて……。それだったらいいか」
「よくないわ! 私は運命の相手すら見つかってないのよ!」
くそ! この二人は役には立たない。なにか対策は……。
「たしかここに来る前に、下水道につながってる落とし穴があったよな! そこに行けば……」
「ダメ見たい。魔物がいないってことはもう穴はふさがってる。イレンは冷徹に見えても仲間は救うやつ……」
本格的に詰んだのか……。どうしよう……。
しかしサザンは諦めていない様子。こんな時にも冷静にいられる人は心強い。まあそいつは魔物だが。
「ねえみんな。下水ってなんで作られるの?」
いきなりサザンが突拍子のないことを言う。
「サザン! 今はそれどころじゃないのよ! 早く運命の相手を見つけなきゃ! えっと……王国に行けば白馬の王子様に会えるはず……」
アンスはもうダメだ。残り三人で考えなければ……!
「ハルト。せめて私たちがいた痕跡をこの世界に残しましょう! さあ、早く私の下水穴に……」
だめだ。あとは俺とサザンで何とかしないと……!
「ハルト君。下水はなんのためにある?」
「そりゃあ生活基盤の為に……」
「そう。そのとおり。問題はその下水道をどこにつくるか……」
「それなら地盤の固いところに……壊れたら元も子もないし」
「じゃあ高い建物はどの地盤に作る?」
「それも地盤の固いとこに……」
そういうことか!
「ヘデラ! 早速魔力探知を! ここのどこかに塔と直通してるはず……。あとは気合で天井に穴を空ければ……。そこはアンスに任せる!」
「え!? 子作りは?」
「そんなもんここからでたらいくらでヤッてやるから!」
「よし任せなさい!」
「アンス! 体力はまだ残っているな! お前は天井に穴を空ける係だ!」
「ふぇえ!? 王子様は!?」
「そこは……なんとかしてやる! 任せたぞ!」




