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16 トレーニング?


 「その声はマズミ!」


 アンスが振り返る。


 「来ちゃいました」


 「そんなことより何とかしてよ!」


 「そーれ!」


 その瞬間ヨルバードの動きが止まる。


 「今の内ですよ。アンスさん」


 「ありがと! いくわよ!」


 ヨルバードに強烈な蹴りが入る。

 みねうちだろうか。硬直した体が震えあがる。


 「ハルト! 剣を突き刺して!」


 「任せろ!」


 ヨルバードの腹部をめがけて精一杯の突きを繰り出す。

 ヨルバードは血を流し込みその場に倒れ込んだ。


 「あらあら、皆さんお強いですね」


 「そ、そうだな」


 「ていうかなんでマズミがここに!?」


 「ハルトさんがね。目でこちらに来てくれって訴えてきたんですよ」


 「ほんと? ハルト」


 違う。だがマズミさんを怒らせたらやばい。


 「そうだったかなー」


 「ハルト君。この人また来たね」


 「あら、サイズの合ってない服が可愛らしいですね。この子の名前は?」


 「私、サザン。お前は?」


 「マズミですよ。にぎやかなパーティーですね。私も入りたいですよ」


 「それはちょっと……」


 「アンスさん、ダメですか?」


 するとアンスがこちらを目で見る。これ以上距離を詰められると困るのだろう。


 「マズミさん。このパーティーはまだ成長中です。その未熟な物達にお強いあなたが入られると、パーティーの皆がうぬぼれてしまい堕落してしまいます。なので我々が成長するまで暖かく見守ってくれませんか?」


 「まあ、そんなに言うなら……」


 よし。成功。


 「じゃあ私が魔法の使いかたを教えてあげます!」


 「へ?」


 「アンスさんとハルトさんはまだ魔法が使いこなせてないと思うので、指導します!」


 「それならいいんじゃない? ねえハルト」


 こいつ約束忘れたんじゃなかろうか。


 「ハルト君。マズミに鍛えてもらったら強くなるよ」


 「お二人も仰ってますよ。ぜひ!」


 アンスと目を合わす。

 どうも断りにくい……。


 「それなら……大丈夫かな」


 「はい! 決まりですね! では帰ったら教会に来てください!」


 「分かりました……」


 半ば強引に決まってしまった。


 ギルドに着く。

 マズミさんもついて来ていた。


 「あ! いずれこのパーティーに入るのですからハンターにならないとですね! 私、ハンター試験。受けに行きます。終わったら教会に行くのでアンスさんとハルトさんは待っててください!」


 「分かったよ……」


 アンスの気分が落ちている。


 「ねえサザン。報酬をあげるからヘデラと一緒に家に帰っといて」


 「分かった。ヘデラ。帰るぞ」


 「ハルト。またね~」


 行ってしまった。ヘデラのやつ、ただただ俺と付き合いたかっただけじゃないか?


 「ハルト。教会に行きましょうか……」


 「そうだね」


 二人で教会までの道のりを歩いて行く。


 「ねえ。どうしたらいいの?」


 「なかなか難しいな。思い切って断ったら何しでかすか分からないし……」


 「いつからこうなったのかしら」


 「とりあえず、マズミさんを怒らせないようにしよう」


 教会に着く。


 「空いてないみたい……」


 教会の扉が開かない。


 「ここのベンチで座って待つか」


 「そうしましょ」


 二人で小さく座る。


 「ハルト。何か言い打開策思いつかない?」


 「いきなりいわれてもね~」


 「あなたさっきヘデラとズブズブだったじゃない。あれは何か理由があるの?」


 「ああ、異性の交友を見せたらマズミさんの考えも変わると思ったんだけど、あの様子じゃあ効果なかったな」


 「そうだったの……。ほんとにどうしよう」


 「いっそ付き合ってみたら?」


 「なんでよ! 無理よ! 私の初めては男なの!」


 「落ち着けって。逆にアンスのダメさを見せて相手を落胆させるってのはどう?」


 「多分できないわね。マズミはダメな子を見ると甘やかすタイプだから」


 「そっかー」


 「お待たせしました!」


 マズミさんが帰ってきた。


 「今、教会の扉を開けますね」


 鍵を開け、中に入っていく。


 「お二人もどうぞ!」


 マズミさんに言われたら従うしかないだろう。

 教会の中は予想通りだ。正面に神の銅像が建てられていて、それを崇めるように長い椅子が並んでいる。


 「こっちに来てください!」


 マズミさんが教会の奥から手招きをしている。


 「ようこそ。私の部屋へ」


 新鮮だ。女の子の部屋ってこんな匂いなんだ。

 布団も綺麗にかけてある。


 「あなたたちはまだ魔法を使いこなせていないよようですね。今からやることを真似してください!」


 するとマズミさんの手から光が出てきた。

 ヘデラにが最初に出していた光と同じだ。


 「これは自分の魔力を出す魔法です。これが大きいほど魔力が高い証拠ですよ。さ、やってみて」


 俺たちは見よう見まねでやってみる。

 アンスの手から出てきたのはビー玉サイズの光。

 俺もその大きさだ。


 「ハルトさんは良い感じですね」


 「私も一緒の感じだけど……」


 「アンスさんはまだ足りないです。ちょっと魔力を高めるためにそこのベッドに寝転がってください。ハルトさんはこの紙に書いてあることをやっててね」


 小さく書かれている紙を貰う。

 アンスが今にも泣きそうな顔でこちらを見る。


 「あの! ちょっとアンスと外に……」


 「ダメですよ! ほら、部屋からでて、紙に書かれてることやってください」


 背中を押され部屋から出される。


 「覗いたら、め! ですよ」


 扉が閉まってしまった。

 マズミさんはアンスと付き合うために手順を組んでいたな。

 そこを邪魔すれば何とかなるかも……。

 すると中から声が聞こえてきた。


 「ねえマズミ! 二人で添い寝はちょっと……」


 「これも魔力を高めるためです!」


 「あ! そこ触らないで……」


 「いい感じですよ」


 「なんか力が抜けてきたんだけど……」


 「さ、ベッドに行きましょう」


 掠れる音が聞こえる。


 「横になったわね。じゃあ今から魔力を高めましょう」


 「ねえ! 馬乗りにならないでよ! ちょっと! 服脱がさないで!」


 「あらあら。ずいぶん派手な下着を……」


 「やめてよ……」


 「じゃあ、しますよ」


 「助けて……ハルト……」


 なんだって!? この声はヒーローを呼ぶ声だ!

 ドアが硬いがそんなこと言ってる場合ではない!


 「きゃ! ハルトさん! 覗いたらダメって言いましたよ!」


 「ハルト……」


 エロい! アンスの泣き顔が特に!


 「きゃ、きゃあああ! ハ、ハルトの変態! 出てく!」


 「あ、ちょっと! アンスさん!」


 アンスが去り際に耳うちする。


 「助かった。ありがと」


 それを言い残し教会から出て行ってしまった……。


 「あーあ。失敗しちゃった……」


 「なにされてたんです?」


 「ちょっとした儀式ですよ。まあでも嫌がってたアンスさん。可愛かったな~」


 「なんか気まずいんで俺も帰りますね……」


 「明日も来てね」


 「はい……」


 俺も教会を出た。

 あれ? すぐそこにアンスがいる。


 「どうしたんだよ。アンス」


 「あなたが来なかったら何されてたか……」


 「マズミさん。明日も来てって。どうする?」


 「……一人だけで行ったら襲われそうね」


 「そうだな。明日も一緒に行くか」

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