【第一章】第一夜 夢の始まり
―――ある日、少年は夢を見た。
その夢はとても長く儚く、なんだか温かい夢だった。
………はっ!
「ここはどこだろう…」
周りを見渡してみるが、辺りには沢山の木が生えていて何も見えない。
地面が湿っており、おまけにぬかるんでいる。背中が泥だらけで気持ちが悪かった。
「まぁ、このまま地べたに寝そべったままではどうしようもないよね」
体についた泥を払いつつ少年はゆっくりと立ち上がった
「ん? なんだろうこれ」
立ち上がった時に気が付いたのだけど、自分が倒れていた場所の近くに何かが落ちているみたいだ。
「これはペンダント? 見たことない形… 誰かが落としたのかな?」
きらきらと鈍い光を放っているそれは不思議な石がはまっていた。昔おかあさんに見せてもらった紫色の宝石『あめじすと?』に似ている。
すごく汚れているので正直拾いたくない。拾わないで置こうかな…。
そう思いつつも持ち主にとっては、とても大切なものなのでペンダントは捨てずに持っておくことにした。
「しかしながら状況がまったくわからないよ…でも動いてみないことには何も始まらない気がするなぁ」
このまま何もしないままここにいても、どうにもならない。そんな気がした。
ひとまず少年は今の自分の状況を把握するためにも、辺りを散策してみることにするのだった…
(少年移動中…)
「…なかなかに不気味でこわい」
僕は自分で言うのもなんだけどまだまだ子供だ。一人の森というのは怖い!怖すぎる!。本当に。
たまに怪物(?)のうめき声のようなものが聞こえるし、冷たい風がびゅーびゅー吹いてて肌寒い。このまま雨でも降り始めようものなら、寒くて死んでしまいそうだよ…!
あぁかわいいもふもふの猫とかいないかなぁ…そんなことを強く願った。
「ニャー」
あ、猫いた。
でも筋肉隆々のいかつい猫だった。なにあれちょっとこわい。
謎の生き物を見つけつつ、森を歩いているうちに日が暮れそうになっている。はやく何か見つかるといいなぁ。
少年は怖がりつつも、てくてくと足元の悪い森の中を歩いてゆく。
「…何か灯りが見える」
森の奥に薄っすらと暖かい灯りがみることに気がづいた。しばらく暗く寒い森の中を歩いていたからか、見ているだけで心が温まる。そんな光に見えた。
近づいてみると、木で出来た少し大きめの家があった。もし誰かが住んでたら助けてもらえるかも?
「あんまり人とは関わりたくないけど、この際はしょうがない…よね」
僕は人が嫌いだ。大人は嘘ばっかりつくし、自分が通う学校の人達はこぞって僕を仲間はずれにしてくる。いつしか僕は、学校に行かずに家の近くの公園で猫と遊んでいることが多くなった。
安心することができる人はおかあさんだけ。おかあさんには迷惑をかけないようにしたいと思っていたので、普段は平気な顔をしている。先生も無口な僕のことが嫌いなのか、学校でいじめられていることを僕のおかあさんに伝えたことはない。
生きるためだと心に言い聞かせて、僕は震える心を抑えつつ少し古びた木の扉をノックした。
コンコン…
低音が混じった木の音色が森の中に溶けてゆく。
―――誰も出ない。
「はぁ…都合よく誰かがいるわけもないよね。」
遠くから見えた灯りは家の周りにある松明のもので、別に家の中が明るかったわけじゃないから望みは五分五分ってところだったし、当然ではあるのかもしれない。
僕は、家の前にあった階段で座りながらポケットに入れておいたペンダントを眺める。
見た目は汚いのだけれど、不思議と魅了されてしまう。じっと見つめていると、このまま魂までとられてしまいそうな感覚だ。
するとその時。
「ぎゅるるるるる…」
と、腹の虫が鳴いた。
自分の体から出た音とはいえ、ほんとに魂を取られたかと思った。こわい。
「どれだけ長くこの森にいたのか分からないけど、おなかが空いたよ…」
僕は空腹に襲われつつ今後のことを考えることにした。
…否、疲れている時にそんなことは出来ないのであった…。
そんな時、僕はふと思った。
―あれ?そういえばなんでペンダントが誰かにとって大切なものだと思ったんだっけ?
………まぁいっか!
大切なことな気がしたけれど、今はもうそんなことを考えている余裕がない。
いよいよ日が沈んで、体力的にも限界がきたみたいだ…。
―――意識が、、、遠くなって、、、
少年が瞼を閉じようとしたその時、見知らぬ女性の声がした。
「――ねえそこのキミ。大丈夫かい?」
意識が無くなりかけている中、薄っすらと見えたその人物には、普通はあるはずのない獣の耳としっぽがあった。
最後まで読んで下さりありがとうございます。作者です。
初めて小説を書くので読みづらい点が多々あるかもしれませんが、温かい目で見て頂ければ幸いです。
この作品が気に入ったり、続きが見たくなったらぜひブックマークや感想をいただけると嬉しいです。
不定期の更新にはなりますが、できるだけ続けたいと思います。
それでは少年の夢続きをお楽しみ下さい…