新しい生活と新しい実験
私はいつも通り牢屋で起きた。
「やっぱり、牢屋の中ですよねぇ」
と私が言うと隣から話しかけられた。
「もう二日目だろ。慣れろ。」
話しかけてきたのは雪さんだった。
「なれる気がしません。」
「慣れる慣れないじゃないんだよ。慣れないとダメなんだよ。」
「はぁ、慣れるまでに何か月かかるんでしょうか…」
そんな話をしていると昨日の白衣の女性が入ってきた。
「"F-2246"、出てきなさい。」
"F-2246"?誰なのだろう?と私が考えていると、白衣の女性がこちらに向かってきた。
「あなたのことですよ。わかっているでしょう?それとも本名で呼んだ方がいいかしら?柳雪。」
そう聞いた瞬間私は雪さんの方向を見た。雪さんはめんどくさそうな顔をしていた。
「お前らが俺を"F-2246"として扱うということは、なんかの実験ってことだろ?」
「よくわかりましたね。あなたにはこれから私と暮らしてもらうことになりました。」
え?今、この女性は何と言ったの?私は言葉を処理できていなかった。だが雪さんはその言葉をすぐに処理していた。
「それは俺は構わないが俺がお前を倒して脱走する可能性を考えなかったのか?」
「考えましたよ。上の判断はあなたがここから脱走できる可能性はないと判断したらしいですね。」
「なめられたもんだな。俺がお前らに負けるとでも?」
「逆に我々があなた一人に全滅させられるとでも?」
二人の意見がぶつかった瞬間、二人の周りの空間が歪んだように見えました。
「その圧的なのやめてください!」
私はそう言って能力を発動させた。しかし何故か二人の圧は消えなかった。
「あなたの同じ牢屋になった人物は毎回面白い能力を手にしますね。」
「たまたまだ。そこまで疑われたら身が持たん。」
私が能力を使ったからか二人の圧はなくなった。
「はあ、怠いがここで断ったらもっとめんどくさそうだからな。お前らの実験に参加してやる。」
「それはありがたいですね。あなたと戦っていいことはなにもありませんからね。」
「というか期間はどれくらいなんだ?」
「およそ三年といったところでしょうね。」
「え?」
「は?」
三年?何を言っているのだろうか?
「何言ってるんだ。月一の殺し合い実験はどうする気だ?」
「あなたは実験中には能力を使わない。またはほんの少ししか使わないと判断し、それなら間近で観察した方が効率的だと判断されました。」
「理由はわかった。だが透華はどうなるんだ?
「石山透華はこれから一人で牢屋にいることになります。」
「透華の能力は食料を出せない。餓死してしまうぞ?お前も感じただろ?こいつの能力は特殊だ。殺すのは勿体ないと思わないか?」
「そうですね。では、次の実験体が来るまでは私の権限で食料は供給するようにしましょう。しかし石山透華だけですがね。」
「ああ、それで構わない。」
「では、ついてきてください。」
「わかった。」
そして雪さんは牢屋を出てどこかに行ってしまった。これから私はどうなるのでしょうか。
……
私は"F-2246"を連れて私の部屋に向かっていた。
「ここらへんは実験室はないんだな。」
「ここの周辺は研究者の部屋が並んでいますからね。」
「そうなのか。長年このクソ研究所で過ごしていたがここに来たのは初めてだな。」
「さっきも言いましたがここの周辺は研究者の部屋しかありません。実験体であるあなたは実験室以外連れていかれることはなかったでしょう?ここを通っていかないと行けない実験室はないです。あなたが知らなくて当然です。」
「そんな大切そうなことをよくそんなにペラペラ言えるな。」
「あなたは教えていなくても遅かれ早かれ気づいていたでしょう?」
「まあな。」
そんな話をしていると、私の部屋についた。
「ここが私の部屋です。」
「案外女性らしい部屋だな。研究者ならもっと散らかっている部屋に住んでいると思っていたのだが…」
片付いていて当然だ。昨日、上の人たちと話し終わった後、すぐに部屋を片付けたのだから。だがそんなことは言いたくない。女としての大事な何かを見失う気がするのだ。
「当然です。これでも私は女性ですよ。ドキドキしますか?」
「いや、しないな。そもそもお前を女だと思っていない。」
「は?」
普通にキレそうになった。
「そんなに怒るな。というか当たり前だろ?昨日までお前は研究者、俺は実験体。そんな関係の奴を異性と見れると思うか?」
「はあ、それもそうですね。」
それなら昨日急いで片付けなくてよかったな、と思う私だった。




