MIRAと事件
そして死体処理を終えて、また牢屋に入れられた。
「この後は何かあるんですか?」
「いや、普通はこれで終わりで、残りの時間は、ずっと牢屋だ。」
「普通?普通じゃない時がおるんですか?」
「ああ、例えば…」
雪さんが何かを言いかけた瞬間、爆発音のような音が響き渡った。その音に驚いていると、放送が流れだした。
「実験体M-2659が脱走しました。現在実験室D付近で暴走中。能力持ちの人数名は加勢に来てください。」
そこで放送は終わった。
「能力持ちって私たちのことですか?」
「ああ、研究所の人間で能力を持っている人間はMIRAと呼ばれている。能力持ちって呼ばれるのは俺らだけだ。」
そんな会話をしていると、白衣姿の女性が来た。そして話し出した。
「あなたたちの数名を実験室Dに送ることになりました。行きたい人はいますか?」
その質問に答える人は、いなかった。その瞬間…
「俺が行く。」
その声の主は雪さんでした。
「あなたが行くのですか…"F-2246"」
「俺じゃ不満か?」
「不満ではありません。ですが、あなたしか返答しなかったので、一人で行くことになりますが、いいのですか?」
「ああ、かまわない。」
そんな会話を二人がすると、雪さんは牢屋から出され、白衣の女性に連れていかれた。
……
俺は実験室Dの前まで連れてこられた。ドアの前には巨大な人型の生物がいた。知能があるようには見えない。そしてその生物の前には大量の死体があった。服装を見るからに全員研究者だろう。
「はぁ、MIRAを連れてきてたら、ここまでの被害は出なかっただろうに…」
「あなたも知っている通り我々MIRAは実験以外には興味がありません。あんなゴミが死んだところでどうも思いません。」
「俺が死んでもか?」
「あなたが死ぬ?ありえないですね。まあ、あなたが死んだら悲しむかもしれませんね。MIRA全員が認めた最強能力者なんですから。」
「そうかい。」
やっぱりこいつらの中じゃ俺は実験成功例ってだけか。そんな会話をしていると人型の生物はこちらに気づいたのか、こちらに襲い掛かってきた。
……
私は遥奏香。ここの研究所で研究者をしている一人。私は実験室Dの中にいた。出ることは出来ない。なぜならドアの奥には化け物がいるからだ。幸いにもこの部屋にはキーカードが必要で化け物は入ってこれない。私以外にも何人かいる。最初はもっといたが数人が外に出ようとして化け物に殺された。私はどうしたら…そんなことを考えていたら誰かが話し始めた。
「ね、ねぇ、誰かドアの外見てきてよ。」
そういうと、全員の視線が私に向いた。こうなることはわかっていた。私がこの部屋の中にいる人物の中で一番地位が低いから。
「わかりました。」
そして私はドアの外を見ようとドアを開けた瞬間、外にいた化け物が私を無視して道に立っていた男性と女性に襲い掛かっていった。
「はあ、怠い。」
「あなたが自主的に来たのでしょう?」
こんな状況なのに二人は、平然と会話をしている。そして怪物の攻撃が男性に当たる瞬間、私は思わず「危ない!」と叫んだ。その瞬間化け物は弾け飛んだ。なにが起きたのかわからなかった私をよそに、男性と女性はまた、会話を始めた。
「後片付けをするのは我々なのですが…もっと綺麗に出来ないのですか…」
女性の方があきれた声でそう言うと、
「この方が俺は楽なんだよ。そんなに言うならお前らがやればいいだろ?」
「めんどくさいので我々はしませんよ。」
「はあ、だる。用事は終わっただろ?もう牢屋に戻りたいんだが?」
「よく我々に対してそんな口がきけますね。普通ならもう殺されてますよ?」
「お前らに俺が殺せるわけないだろ?さっさと牢屋に戻らせてくれねえか?」
「はあ、わかりました。」
そう言ってその二人は去っていった。いったい誰だったのだろう…
……
雪さんが牢屋を出て10分が経とうとしたとき、雪さんと白衣の女性が戻ってきた。そして雪さんは牢屋に戻された。雪さんを牢屋に入れたら白衣の女性は帰っていった。
「雪さん!大丈夫でしたか?」
「大丈夫だよ。無傷なのに死ぬわけないだろ。」
よく見ると雪さんの服についていた血はすべて返り血だった。
……
私は今日のことを報告しに、ある場所に来ていた。
「MIRA-6です。今日の報告をしに来ました。」
そういうと目の前の扉が開いた。入っていくと5名の男女が椅子に腰をかけていた。
「今日は実験体M-2659が脱走したらしいな。」
「はい、それには"F-2246"が協力してくれました。」
そういうと、全員驚いていた。
「まさか、あいつが協力したのか?」
「噓でしょ?今まで一度も協力したことないじゃない」
「気まぐれな彼が何を考えて協力してくれたのかはわかりません。」
「で、"F-2246"の力はわかったのか?」
「彼は実験体M-2659を触れずに破裂させました。そこから彼の能力を調べることは不可能でしょう。」
「そうだろうな。"F-2246"はそんな簡単に能力の証拠は残さないだろうな。MIRA-6、これから君には雪と過ごしてもらいたい。」
「それは構いませんが、殺し合いの実験はどうされるつもりですか?」
「"F"はどうせ能力を最低限しか見せないだろう。それなら研究者の誰かと過ごさせた方がいいと考えたまでだ。だが能力を持っていない研究者が横にいても逃げられる可能性がある。だから、君に任せたいのだ。」
「あなたたちではダメなのですか?」
「我々はこれでもこの研究所のトップたちだぞ。さすがに我々が出るわけにはいかん。」
「そうよ、行けるなら私が行きたいもの。研究対象を間近で見れるなんてそうそうないわよ!」
「は、はぁ…わかりました。明日迎えに行きます。」
「ああ、その間は今やっている研究は別の者に継ぎ、君は"F-2246"の観察をしてもらう。」
「了解です。」
「報告はそれだけか?」
「はい。以上です。」
「では、部屋に戻りなさい。」
「はい、失礼しました。」
そして私はその部屋を出て行った。これから大変そうだな。そう思いながら私はその部屋を後にした。




