パートナー
自由時間が終わり、また牢屋に入れさせられました。そして私は今まで疑問に思ったことを雪さんに質問することにしました。
「雪さん、質問いいですか?」
「答えられる範囲なら答えてやる。」
「雪さんはいつからこの牢屋にいるんですか?」
「俺はかれこれ10年は経つな。俺と同時に入れられた奴らは全員死んだ。」
「そうなんですね…次に雪さんの能力は何ですか?」
「それは言えないな。俺の能力は誰にも教えてないんだよ。」
「じゃあ、次になんで私にやさしくするんですか?さっきの和希さんも聖菜さんに協力的でしたし…」
「それはこの研究所にはパートナー制という制度があるんだ。パートナーは同じ牢屋に入れられた人物。パートナー制とはパートナーがいると少しだけ生活が楽になる制度だ。だからパートナーである、お前には、ある程度生き残れるようになってもらわないと困るんだよ。まあパートナーも1年で変わるんだがな。」
「そういうことでしたか。」
「ほかに質問はないのか?」
「あ、食事とかはどうなるんですか?」
「食事は持参しないといけない。」
「持参ってどうやるんですか。自由時間のところにも何もなかったですし、研究所の外には行けないですし。」
「そこを能力でどうにかするんだよ。」
「能力って…私の能力じゃ食料作れませんよ。」
「だからパートナー制が重要なんだ。俺が食料を能力で出すんだよ。」
「でもそれじゃ私だけ得じゃないですか。」
「いやそうでもないぞ。お前力を消す能力は応用が効くからな。」
そんな話をしていると、いつのまにか雪さんの手に肉があり、牢屋の中には机ができており、その上にはたくさんの食事が乗っていた。
「雪さんの能力ってホントに何なんですか?」
「自分で考えてみろ。」
「うーん。」
私が機械で死なないようにできたり、なかったはずのものを出せる…きっと単純な能力ではないはず。しかもかなり汎用性の高い能力だと思う…
「わからないです。」
「どうせこれから1年は一緒に生活するんだからな。ま、お前が死ななければの話だがな。」
「そうですね。そういえばここは自由時間以外は何もないんですか?」
「いや、自由時間の後は死体処理をする時間になる。」
「死体処理?どういうことですか?」
「昨日死んだ奴らの死体の処理だよ。能力者にやらせた方が楽だし、能力の研究にもなる。」
「そんなことで私たちは死体処理をさせられるんですか…」
「だだ、これは新人には大切な時間でもある。能力を鍛えられるからだ。」
「そういうことですか…でも抵抗ありますね。」
「それは慣れるしかないな。」
その会話をしながら食事をした。会話の内容のせいであまり食欲が湧かなかった。一時間程度経った後、また放送が鳴り出した。
「続いては死体処理の時間です。能力の皆さんは、担当の研究者の命令をよく聞いてください。」
その放送が終わると同時に白衣姿の男がやってきた。その男は次々と牢屋を開けていく。そしてその男がある牢屋を開けた瞬間…
「うおおおお!」
牢屋の中にいた男性が白衣の男に襲い掛かった。男性は刀を持っており、その刀を白衣の男に向けて振った。しかしその刀は白衣の男には当たることはなかった。なぜなら当たる前に男性が絶命したからだ。それを見て、ほかの牢屋の人たちは泣き叫んだ。
「ゆ、雪さん…なにが起きたんですか?」
私が小声で聞くと雪さんも小声で話し出した。
「ここの研究者のほとんどは能力持ちだ。しかもかなり強力な能力だ。そんな奴に生半可な能力で立ち向かっても、ああなるだけだ。」
「そうなんですね。というか、あの人のパートナーはどこなんでしょう?」
「あいつの出てきた牢屋を見てみろ。」
私が恐る恐る牢屋の中を見ると、そこには刀で真っ二つにされた男性の死体があった。
「ひっ!なんで!」
「人によってはパートナーは必要ないってやつがいる。パートナーが自分より能力が弱ければなおさらな。能力が手に入った人間は次の2種類のどちらかになる。1つが俺や和希、透華、聖菜のように協力をし合う者。もう1つは人を殺しまわる、自分が最強だと思ってしまう者。この2つだ。まあ大半は後者になる。なんてったって能力という普通じゃ手に入れられない力を手にすることができたんだからな。」
急に巨大な力を手に入れればそうなるのが普通なのかもしれない。と、そんな会話をしていると白衣の男が私たちの牢屋の前にきてドアを開けた。
……
少し移動するとある部屋に送られた。そこの部屋に入った瞬間、ほかの人たちが絶叫した。なぜならそこには大量の死体がおいてあったからだ。しかも死体には人間なのか判断できない死体もあり、精神的にやられていくのを感じる。しかし絶叫する人は一部でほとんどの人は何も感じていなような目をしていた。その目に少しの恐怖を覚えると、近くから聞いたことのある声が聞こえた。
「あ、和希さん」
「おお、これは透華はんやないかい。てことは、雪先輩も近くにいるんか?」
「雪さんはもう死体処理に行きましたよ。」
「いつも通りやけど行動速いなぁ。」
「あの…和希さん…雪さんと透華さんには会えましたか?」
「あ、聖菜さん!」
「透華さん!…安心しました。みんな絶叫したり吐いたりしていて、精神的にやられてて…」
「和希さんがいるじゃないですか。」
「和希さんは…ちょっとテンションが…」
「ちょちょ、それはないやろぉ。」
そんな話をしていると、さっきまで死体処理をしていた雪さんが近づいてきていた。
「雪さん、どうかしました?」
「それはこっちのセリフだ。なんで悠長に話をしているんだ。このままじゃ全部死体処理されるぞ。」
これは能力を鍛えることにも使えると雪さんが言っていたことを思い出した。
「でも、雪さん。私も聖菜さんも和希さんも、死体処理には能力は向いてませんよ?」
「それは死体処理をメインに使ったらだろ?そこら辺の死体を使って自分の能力を研究することも必要なことだぞ。」
そのセリフを聞いて、ああこの部屋にいる人の中で一番狂っているのは雪さんなんだろうな。と感じ、私は死体に対して能力を使うのでした。




