第97話
短いです
桜さんはこの訓練で、僕の持ってる最大の力を引き出そうとしてるらしい。
「いくら外的要因で手に入れた力でも、お前の物には変わりない。だから龍気を使いこなす資格も義務も、お前にはあるということだ」
もらい物の力でも僕の物である事には変わりない。そう思えるようになったのはつい最近だった。ここまでこれたのだって自分だけの力じゃないし、自分の力なんてたかが知れてる。だからこそ使えるものは使うべきなのだ。
「だが、さっきも言ったように、天星の魔力を持った龍気だ。使いこなそうと思ったら先ずは天星を知覚する必要があるが、これが一番難しい。赤子に宇宙の真理を教えるのと同義だ」
「その天星って何なんですか?」
一番分からない単語。龍気とかは何となくわかるが、天星の魔力と言われてもいまいちピンとこない。
「天星とは、星を操る外気であり、世界を支える因子の1つだ。分かりやすく言えば重さだな」
重さ…………重力の様な物かな?もしそうなら確かに知覚するのは難しい。生きているうえで常に傍にある重力だが、実際にそれがどういう物なのか詳しく説明するのは難しいだろう。
そんな物を「感じろ」と言われても、すぐには出来ないのは当たり前だ。
「というわけで、今回は少しズルをさせてもらう」
「ズル…………ですか?」
「ああ、本来は瞑想で知覚を試みるが、今回は特殊だ。気の量が多いせいで中々上手くはいかないだろう。そこで、逆に気の多さを利用する。まあ、実際に見た方が速い」
桜さんがゆっくり刀を構え、僕の胸を刺した。
「え?」
だが痛みは無く、HPが減った様子も無かった。
なんともないと感じた次の瞬間。僕の視界は電源が切れたみたいに真っ暗になっていた。
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