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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
二章 華の国編
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第93話

最近物忘れが激しい気がします。遅れてすみません。

 朝。顔を洗ってご飯を食べて学校に行く準備を済ませた。

 鞄を持って家を出る時、丁度父が帰ってきた。


「何をしてるんだ?」


 僕を見た父が不思議そうにそういった。


「何って学校に行くんだけど」


 何を当たり前のことを聞いているのか、朝にこの格好をしていたら普通は学校に行くとわかるだろう。連日の仕事で父も疲れが溜まっているらしい。


「今日は祝日だぞ?補修でもあるのか」

「え?」


 どうやら連日のゲームで疲れていたのは僕だったらしい。それから30分ぐらい説教をされた。やはり最近ゲームのしすぎが目に余ると父が困った顔で言っていた。

 今後は程々にすると言って部屋に戻り、二時間ぐらい漫画を読んで過ごした。


「あ、そう言えばツクヨミに呼ばれてるんだった」


 ツクヨミの不穏な笑顔が頭に浮かんだ僕は、急いでゲームにログインした。昨日はあの後宿に戻ったから、目を覚ませば綺麗な庭が見えるはず……ん?

 目を覚ますと、真っ赤な何かがすごい速度で横を飛んでいった。想像していた庭と違う?庭は庭なんだけど何か開放的というか……。

 恐る恐る飛んでいった物体を確認すると、そこには目を回した龍炎がいた。


「ほら次じゃあ!」


 不穏な声が聞こえたせいで、頭が冴え渡ってくる。


「来なければ強制的に連行するからの」


 昨日のツクヨミの言葉が、はっきりと聞こえてきた。

 全てを察した僕は、冷静に辺りを見渡す。

 さっき飛んでいった龍炎。絶賛素振り中の流水に、ツクヨミに痛ぶられる光姫。既に伸びている縁真と冥帝。

 空が上ではなく右に見えるということは、僕の体は寝ているということだろう。痛みも何も感じないから無事だ。


「きゃあ!」


 ついに龍炎と同じ様になった光姫。ツクヨミは楽しそうに笑っていた。


「さて次じゃな」


 ツクヨミと目があったのは、気のせいではないだろう。どんどん口角が上がっていくツクヨミとは違い、僕の顔はどんどん青ざめていく。


「ほれ!こんなものか!?」


 僕も同じ末路を辿ったのは、それから数分後のことだった。


「五剣は基礎があるからまだマシじゃが、問題はお主じゃなケント。正直言って問題外じゃ」

「な…そこまで言わなくても……それに何で僕まで鍛錬を……」


 ツクヨミに散々言われて弱音を吐いた僕の頭を、ツクヨミが叩いた。結構強めに。

(本当にこの2人は頭を叩くのが好きだな!?)

 

「儂はウジウジしよる奴が嫌いでな、ついイライラしてしまうんじゃ。こんな風にな!」


 見せしめという言葉が相応しいだろう。難しく言えばツクヨミの怒りをその身に受けた。簡単に言えばまた宙を舞った。これを機に、ここで弱音を吐くものは居なくなった。のちに知ったのだが、稽古の様子は民が見れる様になっており、ちょっとした文献に載ったらしい。良いところも悪いところも、もちろん僕の醜態も。

 ………………

 …………

 ……

 一週間後。ツクヨミの指導が僕に合わないことを悟った桜さんが、別メニューとして僕の鍛錬に付き合ってくれた。

 あの後逃げ出そうともしたが、せっかくの機会だったのでそのまま参加している。それに、弱い自分を見つめ直す良い機会だ。

 桜さんの特別メニュー。これが結構ハードだった。

 ツクヨミの方は単純で、向かっていって飛ばされる。これの繰り返しの実践形式。桜さんのは毛色が違い、結構苦戦している。

 鍛錬の内容は、桜さんの出した霧の中で吊り下げた丸太の攻撃を避けるというもの。

 これだけ聞けば簡単だが、実際は鬼の様な難易度だ。詳しく内容を説明すると、目隠しをした状態で、音を遮断する霧の中で常に不規則に動く丸太を避けるという内容だ。

 聞いた時は驚いたが、文句を言うことはなかった。桜さんの話を聞いてから、彼には謎の信頼があったからだ。


「お主は与えられた力を使いこなすことが重要だが、その前に精神力を鍛える必要がある。本来であれば霧で幻覚を見せて苦痛を与えるのだが、これは意外とキツい。私も壊れかけたからやらない。だから自信をつける事から始めよう」


 いくつか質問され、生きていた中で一番すごいと思ったことを聞かれた。

 ふと思い出したのは、卓球の先生が後ろから飛んできた球を見ないでよけたことだ。


「成程……見ないで避けるか……。それなら簡単だな……よし、第六感を鍛えるぞ。勿論スキルには頼らずにな」


 自分では無理だと思ったことが出来れば自信がつくだろうという事でこの鍛錬が始まった。

 これまでも自信が付いては砕かれを繰り返してきたが、ここで弱音を吐くわけにはいかない。

 

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