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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
二章 華の国編
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第81話

 宿屋で気配察知の修業をし、ログアウトして学校に行ってまた修行を繰り返す事約一週間。やはり成果は現れず、先に進めずにいた。

 頭を抱えて悩んでいる僕に、ライブラが不思議そうに尋ねる。


「何のために気配察知を覚えようとしているんですか?」

「セフィラを探すためだよ。それに、覚えろって言われてるし」

「セフィラ………ああ、巡礼の事ですね。でしたら鍵は持っているのでしょう?それを使えばいいじゃないですか」


 ライブラの発言の意味が分からず、僕は首を傾げる。

 その鍵………は最初に貰ったあの時計の様なものだろう。それが使えないからこうして頑張っているんだが?

 

「やはりライブラか………」

「な……!?何ですかその含みのある言い方は!」


 ライブラの事が少し可哀そうに思えた僕は、何故こういう事になっているのかを詳しく教えてあげた。

 彼女が少しでも理解できるように、だが話し終えた後想像していた反応とは真逆のものが返ってきた。


「………?言っている意味が分かりません。巡礼は鍵を完成させるための儀式、その鍵が使えなくなることはあり得ません。貴方が使い方を間違えているのでは?」

「何度も試したんだよ、それでも使えなかったからこうなってるの!」

「………」


 暫く考え込むライブラだったが、何か分かったような顔をして僕に言った。


「もしかして………今まで正規ルートで来ましたか?」

「正規ルート?普通にアルカナを使って来たけど」

「やっぱりそうですか、本来あれは使わない物なんです。そもそも見つけられたものが今までいませんでしたし………いや?いたかな?まあいいでしょう。本来、巡礼は鍵を入手した後鍵の裏にある謎を解いて進むのです。まあ謎と言ってもパズルを解くだけなんですけどね」


 ライブラにそう言われ、気になった僕は鍵を取り出し裏面を見る。そこには確かにバラバラになったパズルの様な物があった。

 今まで何故気が付かなかったのかが不思議なくらいだったが、今はそんなことを考えずパズルを完成させる。数分で完成するぐらい簡単なパズルを解き終わると、真ん中の大きな穴から手のひらサイズの紙が出てきた。

 紙には前に見た世界地図が書かれており、大陸のあちこちに一つ星や二つ星が描かれている。

 一、二、三………いままでのセフィラの場所だ。つまりこれはセフィラの居場所を記した地図という事、そして四つ目が示しているのはここ華の国だ。 

 

「こんなものがあるのに、何であの人は気配察知何て覚えさせようとしたんだろ?」

「読めない人ではありますから………何か考えがあったかも知れないですが」


 何か意味があっての事だったんだろうが、こんなに便利なものがあるならこれを使っても問題は無いんじゃないか?

 でも、今まで誰も巡礼を終えて無いという事は、今までと同じやり方ではダメなのか?


「これはこれで便利だけど、一応気配察知を覚える様に頑張ってみるよ」

「その意気です、大丈夫!きっと出来る様になりますよ」

 

 ライブラがそう言って拳をグッと握った。

 最初から楽な方に逃げていれば、後からどうしようも無くなったときに逃げ道が無くなる。だから、今みたいに余裕のある時は逃げ道を残しておきたい。

 覚えろ、と言われたんだしその通りにしておいて損は無いだろうしね。

 大丈夫、時間はたっぷりあるんだ。ネットにも何か情報が乗ってるかもしれない。そういうのをしっかり使って行こう。

 目下の目標をしっかりと見定め、早めに習得しようと決意した。習得しないと先に進めないし……。


————————————————


「海の向こうは………平和だな」


 窓すらない閉ざされた空間に、二人の男が机を挟んで向かい合っている。

 

「我らが住む三の大陸には、魔族共が進行し始め戦争が絶えない。我が国も戦の為に少なくない金を払っている」

「………。魔族は共通の敵なのだろう?であればお主たちを守るために戦っている者達を支援するのは当然では無いか?」


 身なりの言い男の愚痴は、金の事しか考えていない様な雰囲気だった。

 三の大陸の東端にある魔族の国は、新しい魔王が現れてから活発になっている。

 そのため三の大陸は同盟を結び、大陸間での戦争は禁止し、国と国で支援を行う事にしていた。そのため昔よりは贅沢が出来なくなっただろうが、それでも不自由な暮らしでは無いはず、しかも戦争に行っていない様なやつの言葉には、重みが無い。


「華の国の増援のお陰で何とかなっている。桜殿は本当にお強い………。神の寵愛を受けるのは納得だな」

「奴は特別だ。我々とは違う」

「………ほう?どういうことかね」


 怪しい男が二人、向かい合い言葉を交わす。

 湯気を上げていたティーカップも、冷めきっていて動かない。

 それほど時間が過ぎた。腰に下げていた刀は、机に立てかけられている。柄の先から伸びる紐の先には、三日月の飾りが付いている。

 ここは窓も無い空間、月の光は届くことは無い。

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