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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
零章 書き出し
8/145

第8話

「本を書くならやはり知識がいるな!私の蔵書を呼んでいいから分からないことがあったら言え」


 そう言って案内された場所は、正に大図書館と言う言葉に相応しい場所だった。

 ずっと向こうまで続いてそうなほど長い本棚がいくつも並んでいて、その全てにびっしりと本が詰まっている。

 これ全てがメティスの持ち物らしい。


「本は好きでな、ほぼすべての本を読みつくしてしまったから新しいものが欲しくなってきたのだ」


 好きと言う理由だけじゃこうはならないだろうというぐらい、いろんな種類の本が集まっている。

 奥から神話、語学、童話、魔法学、武学、芸学等、読み切れない量がずらりと並ぶ。


「私はやることがあるからもう行くが、ここで寝たければ中央付近に仮眠を取れる場所があるから好きにしろ」


 そう言ってこの部屋の大きな扉を閉め出て行った。

 好きにしろと言われても何をすればいいのかさっぱりだし、何処にどんな本が置いてあるのか詳しいことが分からない。

 取り合えず適当にとって読んでみるかと思い、すぐそばにあった本を手に取ろうとすると、奥の方から何かが飛んでくるのが見えた。

 羽をパタパタさせながらこっちに向かってくるそれは、三十センチぐらいの大きさだった。


「初めまして。何をお探しですか?」


 そう言ったそれは、愛らしい見た目をしていて、手には本を持ち頭には紳士が良くかぶりそうなハットを被っていた。

 肌の色は白く額に丸い円に棒が刺さったみたいなマークがあった。


「えっと……この世界の基礎的な事が分かる本が読みたいんだけど……」

「それでしたら外列五番の棚の上から三番目、左から五二八番目の『アダムと理想郷』がよろしいですね。良ければ持ってきましょうか?」

「え?あ……はいよろしくお願いします」

「分かりました。では少々お待ちください」


 そう言って愛らしい見た目のそれは飛んで行った。

 一分もしないうちに一冊の本を持ってきて戻ってきた。


「こちらになります。閲覧場所は中央のスペースがよろしいでしょう」

「あ、あの。君は誰なの?」

「ああ!申し訳ございません。私はメティス様の眷属のボウと申します、種族は妖精でここの管理を任されております」


 妖精?妖精ってこうもっと小さいものじゃないの?

 まあでも見た目も可愛いしそれに優しそうだから間違ってないかも。

 ボウはフヨフヨと飛びながら僕を案内してくれた。

 五分位で着いた場所は少し開けていて、テーブルに椅子ベッドまであった。


「ではケント様。お呼びいただければ直ぐに参りますので」


 そう言ってポンッと音を立てて消えた。

 それにしても何で僕の名前を知っていたんだ?

 

『眷属は主からの意思をメッセージとして受け取ることが可能です。恐らくメティスが事前に説明していたのでしょう』


 成程。それなら納得だ。

 早速持ってきた本を開いてみるが、中身は当然見たことのない言語だった。

 だが段々と見慣れた文字に変わっていく。五分もしないうちに開いたページの内容を理解できた。

 これが多分『解読』のスキルのお陰だろう。

 便利だが完全に読めるという訳じゃないらしい。と言うのもその文字の意味は分かるがしっかり読めるという訳じゃない。

 例えば英文を訳すのに私、好き、サッカー。みたいな感じで訳されてるようなものだ。

 でも理解できないより全然いい。幸いここにはたくさんの本がある、読んでいれば慣れていくはずだ。


————————


 遥か昔。今より何千何万年前。神は理想郷を求めた。

 神は命を愛した。神は幸福を愛した。神は自然を愛した。

 神は創った、自分が求めた理想郷を、それがこの世界である。

 神の描いた理想郷は現実になった。


 スラスラと読める様になり、独特な言い回しや表現方法、なまりなどが大体わかるようになってきた。

 だが、恐らくこれはおとぎ話の様なもので信憑性は低いだろう。

 何千何万年も前の話なんて知っている人なんていないだろうし、もし先祖代々語り継がれている事を記したといっても、どこかで間違って伝わってる可能性も高い。

 だからこの本は大体を掴むためだけにしておこう。


「ボウさん?居る?」

「はい何でしょう」

「地理とかの本が欲しいんだけど」

「でしたら内列三番の棚ですね少々お待ちください」


 そう言ってまた直ぐに本を数冊抱えて持ってきた。

 あんなにある棚の中からこんなに早く見つけてくるという事は、全ての本の位置を覚えているんだろうか?


「はい。場所は全て把握してあります。ですがメティス様は場所から本の内容、著者に書かれた年代の全てを記憶されております。私など足元にも及びません」


 流石は知の魔女と呼ばれる人だ。記憶力は人外のレベルらしい。僕には絶対無理なので真似しようとは思わなかった。多分場所を覚えるのも無理だろう。

 今大事なのは地形や国の場所を覚えることだ。その内旅に出るんだから全部頭に叩き込んでおいて損はない。

 暫く読んでいたが、マップ機能はその場に行かないと機能しないと思ったがそうでは無かった。

 真っ黒なのは変わりなかったが、数か所の地形の名前や国の名前がマップに記載されたんだ。これは良いことを知った。

 闇雲に歩き回ることは無くなりそうだ。


「はかどっているか?」

「メティスさん。はい、ボウさんにも助けていただいて」

「そうか、あいつは世話を焼くのが好きだからな。どんどん頼ってやれ」

 

 そういって、メティスさんは僕の見ている本に目を落とす。

 そして積み上げられている本に目をやり順番に見ている。が一番最後の本で視線が止まった。 

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