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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
二章 華の国編
79/149

第79話

一話ずれてました

79と78を入れ替えてます。混乱させてしまって申し訳ないです

 一週間、長い様で短い期間が終わり、華の国に行く日になった。

 ここ数日は、この大陸唯一の発着場に移動した後、情報収集に力を入れていた。やることが他に無かったとも言えるが、何もしないよりはいいと思う。

 情報収集と言っても他のプレイヤーに聞き込みしたり、ネットで調べた位だ。華の国に行くプレイヤーがそもそも少なく聞き込みはあまり意味が無かったが、ネットの方は良い感じだった。

 着物や刀、日本の伝統的な色が出ている国だから、そういうのが好きなプレイヤーが多く滞在している。どうやら外国人の比率も多い様だ。

 

「華の国行きの方ー。そろそろ出発ですよー!」

 

 ベンチに座りながら船を待っていたが、どうやらもう到着していたらしい。

 急ぎ目に船に乗り込んだが、ほぼ最後尾だった為か席が全て埋まっていた。


「仕方ない。外で待とう………」

 

 ゆっくりと深呼吸して落ち着くと、違和感が蘇ってくる。

 これは船だ、そう海に浮かぶあの船。にも関わらず、空を飛んで地面に降りまた空を飛ぶ………。海が一切関係していない。

 考えても仕方ないか………。そういうものだと思う事にしよう。そう決めても、ボーっと空を眺めるだけでは嫌でも考えてしまう。何か別の事を考えないと。

 

「何かお困りですか?」

 

 どうしても頭にこびりついた違和感が取れないでいた時、乗組員らしき女性が声をかけてきた。

 少し動きにくそうな黒い執事服を着たその人は、手にお盆を持ちながらこっちに来た。


「いえ、特に困ってる事はないです」

「そうですか、何やら気を紛らわしたい様子でしたので………。良ければ話し相手になりますよ?」

「本当ですか?実は暇だったんです」


 実は今、アイとライブラが傍に居ない。理由があるんだが、少なくとも華の国に着くまでは一人だったんだ。

 だから誰かが話し相手になってくれるのは助かる。昔は苦では無かったが、今は一人で居るのは少し寂しく感じるからだ。

 乗組員の女生と結構な間話をしていた。二時間の旅の殆どをこの人と会話していたようだ。華の国が見えてきたことからもその事実が分かる。

 

「最後に質問なんですけど、この船ってツクヨミ様に会えたりしないんですか?」

「会いたいんですか?」

「いえ、ただ不審者とかが近づいたら危ないんじゃないかと………」

「不審者………?ハハハハ!」


 僕が安全面の心配を口にした途端、乗組員の女性が腹を抱えて笑い出した。

 

「のう桜よ、お主の護衛としての能力を疑われておるぞ」


 さっきまでの口調とは違い、雰囲気が急に変わった。

 声はそのままだが、明らかに別人の様だった。まるで幻覚を見ている様な気分になったと思ったら、目の前に霧が立ち込める。

 急な事だったので慌てて周囲を見回す。


「ばあ!」

「うわあ!!」


 背中側から大きな声を出されて、びっくりして尻もちをつく。そんな僕を見て嬉しそうに笑う声が一つ。さっきの乗組員の人の声だ。

 霧が晴れ、人のシルエットが徐々に見える様になる。どんな顔で僕を見ているのか確かめてやろうと思ったが、僕の目に映ったのは想像していたものとは違った。

 さっきまでとは明らかに身長が違う人物が一人、百八十を軽く超えるであろう長身で三日月が胸元に入った狩衣を身に着けた何者かがそこに居た。

 

「カカカ。面白い奴じゃ、聞いておったか?うわあ!と間の抜けた声を出しよって」


 声の主は、この長身の人では無かった。長身の人に肩車された一人の少女が声を発している。

 狩衣を着ており、紫色の髪を二つに結んでいた。

 少女の声に反応して、長身の人が僕に手を伸ばす。その時になってようやく気付いたが、この人………顔に変なお面をつけていた。

 ただ一文字「月」という文字の入ったお面、目を覗かせる穴が空いていないような………。

 少しためらったが、伸ばされた手を取り立ち上がると、ある程度のホコリを掃ってくれた。その後に乱れた髪を直して怪我の確認を………。面倒見がいいな!?


「桜。やりすぎじゃ。旅の者よ、どうやら悪戯が過ぎた様じゃ。悪かったの」

「いや、一瞬イラっとしたけど気にしてないよ、子供がした事だし」


 そう、子供に怒っていたら駄目だ。限度はあるが大抵の事は許しておかないと、一回一回切れていたらキリがない。

 

「カカカ。やはり面白い奴じゃ、儂を子供扱いするとは」

「え?どう見ても子供—————」


 そう言いかけた僕に、お面の人からの無言のデコピンが炸裂する。

 頭が吹き飛びそうになったが、何とか耐える。どんな威力のデコピンだよ!殴られてもこうはならないと思うんだけど?

 お面からはみ出した白いくせ毛がピコピコと激しく上下している。


「もしかして………怒ってるんですか?」

「………なんじゃお主、よくわかったの。こやつは喋れん、大体怒るとこのくせ毛が上下するんじゃ」

「でも、何で怒って………」

「それはお主の儂に対する態度が悪いからじゃろう。子供扱いは癪に障るらしい」

「え!?子供じゃ——————」


 バシッと今度は頭をはたかれる。デコピンより痛くは無いが勢いが強い。

 デコピンの方が………痛い?おかしいな、常識が通じない。

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