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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第76話 章間

 魔石を取り付けることを諦め、暫くは今のスタイルで行こうと決めた後、第四のセフィラを求めて旅を再開しようとしたが、ここであることを思い出す。

 そのある事とは方向を示すアルカナが存在しないことだ。

 今まではそれを頼りに探してきたが、今回だけ無いのかこれから先ずっと無いと考えた方が良いのか分からない。 

 考えを纏める為にも、僕はケテルに連絡をする。最初は空っぽだったこの道具も、今では三つも穴が埋まっている。少しだけ達成感を覚えながら教えられた通りケテルの石をなぞり連絡を試みる。

 だが、おかしなことに一向にケテルが反応する様子が無い。故障か?


「ヤッホー。そろそろケテルを頼ると思って待ってたよ」


 少年の様な声が聞こえたことに気付いたのと同時に、周りがおかしい事にも気が付いた。

 さっきまでベットに腰かけていたはずなのに、今は何もない真っ暗な空間に居る。


「あんまり干渉しすぎたら怒られるんだけど、君には期待してるから特別に教えてあげるよ」


 状況が理解できず戸惑ったが、少年の姿に見覚えがあったのを思い出し少し落ち着いた。

 この少年デガ討伐の時に神と名乗ったゲームマスターだ。確かに一般プレイヤーへの過度な干渉は良くないのだろう。

 だけど、このタイミングで接触してきたという事はセフィラに関する事を教えてくれるのか?

 なんにせよ聞いておくに越したことはない。


「ケテルで始まってビナーまで集めたよね?ここまではチュートリアルみたいなものなんだ。よっぽどの事が無い限り渡してる。でも、次の子からは気に入らないと判断されればゲームオーバー。前みたいにアルカナのアシストは無い。なので………気配察知を覚えてもらいます!三つも欠片があるから大丈夫、近くに行けば後はそれが教えてくれるから。じゃあまた————」

「ちょっと待ってください!」


 僕が引き留めると、ニコニコしながら彼は振り返った。

 聞くのは少しためらわれるがダメもとで質問する。


「これまで誰も………先生と僕以外セフィラを探さなかったんですか?」


 ずっと疑問だった。

 この世界が誕生したのが一万年以上前で、人が生まれたのが遅く見積もっても五千年前、そんなに時間が経過していて誰もセフィラの存在を知らない。NPCである先生が認識している時点で、プレイヤー限定のイベントでもない。

 にも関わらずセフィラの存在を聞かないし目にしない。手探りで少しづつ探すしかないのだ。

 明らかにおかしいんじゃないか?僕は探し始めて数か月、先生は百年以上探している。あの人に限って見逃しは無い。

 まるで存在しないみたいに、誰の記憶にも、どの記録にも残っていない。何故か?その答えを知っているとしたら、一番上の存在だ。


「ん~。答えはNO。じゃあ僕も答えたから君にも質問するね?これはゲーム、何故その様な疑問が生まれた?」

「え?」

「だっておかしいじゃないか。ゲームの設定上は世界が出来て約一万年。でも、君たちが見ている景色は一年かそこら、NPCが本当に百年以上前から存在しているかなんて誰も分からない。そうだろう?そういう設定かもしれないんだから、なのに何故、君はこの世界が本当に数万年の歴史を作って来たと思うんだい?」


 質問の意味が理解できなかった僕は、暫くの間固まって動かなくなっていた。

 あまりのリアルさに忘れていたがこれはゲームだ。言われてみれば設定上の話かもしれない。でも何だろう、この違和感は………。まるで内側から変わっているみたいな。一体どちらがおかしいんだろう。


「まあ難しいよね。でもね、これだけは覚えておいて欲しいな。世界っていうのは無数にあるんだ。君が住んでいる世界、何不自由なく暮らせる豊かな世界だけど、少し海の外に出るだけでそこは異世界に変わる。流行ってるだろう?異世界転生。食べ物もおいしい国と泥水を飲まないといけない別の国。それだけじゃない、本当に別の世界があるのかもしれない。魔法が発達した世界、神と人が密接に関わっている世界。そして………ゲームの様な世界、とかね」


 ニヤリと笑った少年の姿が消えると、景色も宿屋のものに戻った。

 自分の中に大きな何かが残った感覚があり、異様に気持ち悪い。

 確かにおかしい所は多かった。無駄に現実味があった。それでも、今も未だ自分の中の理性がこの考えを正気じゃないと言っている。

 今までゲームに触れていなかったからこその、一時の気の迷いだと。いや、そう思おうとしているだけなのかもしれない………。

 一度心を落ち着かせ、冷静になる。

 その結果、セフィラ集めを再開する事にした。今までの世界を見てまわるという目標に新たな目標を加えて。

 もう一度話す必要がある。そのために先ずは気配察知を覚えることに専念するのだった。

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