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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第73話

学校の帰り道久しぶりに三人で下校中、寄り道をするという事になった。商店街に入った辺りで占いの店が目に入り将太が入ると言って聞かなくなり、仕方なく三人で行くことにした。

 看板も何もない、ただのカウンターに水晶が置かれそれっぽい紫色の布をカーテンにしているだけの店だったが、言い表すのが難しい不思議な雰囲気がある。

 我先にと席に座った将太が、占い師に言われた通りに水晶に手を当てた。すると水晶が淡い光を放ち、それを見た将太は目をキラキラさせていた。


「すげえ!本物じゃん」

「………微妙な演出だね」

「ちょ……流石に不味いって。将太が可哀そう」


 喜ぶ将太とは対照的に、冷めきった眼で見ている圭吾。どうやらこう言った類の物は信用していないらしい。

 結果を待っている将太の体が、左右に動いている。余程楽しみなんだろう。

 正直な話僕も占いはあまり信用していない。昔は違ったが、運勢が最高の日に嫌な事が連続で起きたことがあり、それ以降信じられなくなった。

 普通は三回も踏まないだろう。それとも運が違う意味の運だったのか?


「見えました。剣を手に取り怪物を倒している貴方が見えます。自分よりもはるかに大きい、悪鬼の様なものが見えます」


 昔を思い出して嫌な気分になっている間に、占いの結果が出た。

 どう考えてもゲームの話だろうが、正直最近の若者は全員ゲームをしていると思って言ったのか?もし違っても色々な言い訳が出来そうだしな。


「ええ!?じゃあ俺ボスとか倒してるってこと?やばい、ゲームやりたくなってきた。早く帰ろうぜ!」


 相当な自己中発言だと周りからは思われるが、圭吾は長い付き合いらしいから慣れてるだろうし、僕もこういう奴だと知っているから不快には思わない。逆にこれが将太の良いところでもある。それに、その気持ちが分からなくもないからだ。

 きっちり代金を払って足早に店を出る将太。それを追う様に圭吾も店を後にし、僕も出ようとしたら占い師に呼び止められた。


「待ちなさい。貴方は近いうちに、相性の最高に良い方と出会う様です」

「え?僕占い頼んでないんですけど」

「私が勝手に伝えただけですから代金は結構です。貴方から感じる縁が特殊だったもので………。特にこの一つ………まるで鎖の様です。それも何重にも絡みついて離さないようにしているみたい………」


 そこまで聞いて不気味に思った僕は、最後まで占い師の言葉を聞かず店を出た。

 信じていないが、変なことを言われたら誰だって気味悪がるだろう。

 

「相性が最高………か」


 嫌な予感しかしない。そんな時こそゲームで忘れるべきだろう。

 急いで帰宅した僕はFAを起動した。起動時のあの感覚と共に景色が変わる。目の前にはアイが居て、少し安心した。


「マスター。今日は何をしますか?」

「そうだね………」


 確実にこの風景、やり取りがいつものものになっていくそれが少し嬉しかった。


————————


「やはりお体が優れませんか」

「そうだね………。時間加速をなくしても、負担は大きいらしい」


 卵の様な形の椅子に浅く座り、体を寝かせる様にしている少年の顔色は、酷く悪かった。今にも倒れそうな程弱弱しく、目に生気もない。

 

「早くしないと、体が持たない。あともう少しなのに」

「………やはり今日は休みましょう。これ以上動けば本当に倒れてしまいます」


 どこかおかしい。そう感じ取り少年を抱きかかえ部屋を出る。一人の魔女が映る画面をそのままにして………。

 ………………

 ………

 …

 あれからも森をさまよっていたメティス。既に一か月は経過しており、大門を潜った今もう後戻りも出来ず森にとらわれていた。

 精霊の気配すら感じず、もう気絶寸前だった彼女がハッとして立ち止まった。

 下を向いて浮遊していたボウはメティスの背中に顔をぶつけ、痛そうに顔を両手で覆う。


「ハハ。成程、精霊の気配すら感じないか………そもそもおかしいではないか。まるで迎え入れるかのような大門と道。精霊が住まう森と知らせてしまえば精霊狩りが出る。つまりはその馬鹿どもを誘う罠だったか………」

「………ホウ………下級精霊ガ、我ラヲコケニシタトイウ事カ」

「ボウ?落ち着け、流石にお前が切れるのは不味い———————」

「スベテ切リ払ッテクレル!!」


 ボウはそう言うと、小さな手を天に掲げた。

 すると世界がきしむ様な音を上げ、鏡が割れる様にひびが入り真っ黒な何かが顔を出す。それをボウが引っ張り出し手を振り切った。

 森の木々すべてが切り株に変わり、奥の方の森が顔を出した。


「おい、やりすぎだ」

「………これぐらいは許されるでしょう。元々壊されてもいいように耐久はそこまで無かったようですし」

「幻術と認識疎外の影響まで破壊したのはどう説明するんだ?」

「貼りなおせば済む話でしょう」


 その言葉を聞いて、メティスは口を閉じた。

 昔からこうだ。通常時はそうでもないが、一度頭に来ると歯止めが利かない。奥の本命を残しているだけ未だ理性があった方だ。

(精霊の森には行けるが、これは歓迎されなそうだ………)

 メティスは少し憂鬱な気分で何もなくなった森を歩き始めた。彼女が歩いた後ろは、森の木々が再生し始めている。直しておけば少しでも話がしやすくなるだろうという彼女なりの考えが現れた結果だった。 


 

 

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