第7話
「ハハハハハ!面白い奴だ。この森に知識を求めてやって来たか」
「あ、それは関係なくて。職業のせいで最初はランダムで飛ばされるらしく、始まりの街と言う所にも行けてないんです」
「!?クッ、ハハハハ!!ランダム!?ますます面白い。ハハハハハ!」
メティスのツボに入ったようで、数分はメティスの笑い声が聞こえていた。
目にたまった涙を拭ってから息を整え、メティスは口を開いた。
「お前は運がいいな。全てが知りたいお前がこの私のもとにやってくるとは」
「どういう——」
「お前、名は何という」
賢人の言葉を遮り、メティスが名前を問う。その顔はゲームを始めるときの賢人の顔に似ていた。
「ケ、ケントです」
「そうか、ケント。お前は本当にこの世界の事が知りたいのか?」
「はい!」
賢人が食い気味で返事をする。その目は輝いており無邪気さを感じさせた。
そんな賢人をみてメティスはニヤリと笑いこう言った。
「私の名はメティス。世の者らには大魔女、知の魔女と呼ばれておる。全てとまでは行かんが私がこの世界の事を教えてやろう」
「え……良いんですか!?」
「構わん!私はお前が気に入った」
望んだものが手に入る。そう思った賢人は嬉しさのあまり疑う事を一切せず、二つ返事で了承した。
これが後の物語の始まりである。
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あの後直ぐに家の中を案内された。
部屋はさっき寝ていたところを使えと言われ、後は居間やふろ場、トイレなど必要な場所の案内をされている。
全て確認を終えて、最初に行った居間に入って色々と話をすることになった。
と言っても一方的に質問攻めにあっているだけだ。
職業の事、節目のプレイヤーと言われ特別な物を貰ったこと、大図書館の話など知っている限りの事を吐かさ————話した。
彼女はその全てに興味を示し、特に大図書館に一番興味を示していた。譲ってくれと言われたが、どうやら外せない様になってるらしく譲るのは不可能だった。
『大図書館はマスターの固有装備になっているのが原因だと思われます』
アイに言われたことをメティスに説明すると、納得した顔をして固有装備について語りだした。
「固有装備と言っても色々あってな、特異種の核から作り出した武器だったりお前のそれの様に装備できるものが限られている物だったりがあるが、それらに共通して言えるのはな……」
「いえるのは?」
「装備する者の意思で装備を解除できるという事だ。だがお前のそれはどうだ?外れないという事は装備枠を一つ使っている状態。つまりお前は剣や杖を持てない、攻撃する手段がないんだ。ここなら問題ないが外に出れば生きていけない」
メティスによると、プレイヤーについて色々知っているようで、装備枠と言うものの事を教えてくれた。
さっきも言った通り、僕は大図書館が外せないため装備枠はこれが占領している。
だから剣も持てず自衛の手段が無いらしい。魔物を使役し戦わせる二次職もあるらしいがこれは僕の『旅人』が一と二を兼ねているらしくそれも難しいらしい。
『固有装備と言うより呪いの装備の間違いかと思われます』
「そんなこと言うなよ……」
口に出してそう言うと、メティスが不思議そうな顔をして聞いてきた。
「お前は誰と喋っているんだ?」
「え?……ああそうか、アイの声は聞こえないですもんね」
「アイ?」
アイが色々教えてくれること、脳に直接話しかけてくることを説明すると、凄い食いついてきたが何かに気が付いた様子で、顎に手を当てて何かを考え始めた。
数分後。
「特異点と言っても何か問題があったのか?……いやだがしかし……」
「あの……メティスさん?」
名前を呼んでも反応なし、自分の世界に入ったら戻ってこないタイプ何だと認識し、取り合えず終わるまで待ってみることにした。
数時間後、やっと終わったらしくまとめた考えを話してくれた。
「恐らくは調整だろうな、お前の場合他の奴らと違いデメリットが多すぎる。大図書館の装備枠に職業の関係、だがそれを帳消しにできると判断されたからこその結果だろう。それがアイという存在かもしれない。簡単に考えればお前は二人で一人の様なもの、思考と体を二人で分けているのと同じような物だ。あくまで仮説にすぎんがな」
「僕がこのままいくのって厳しいですか?」
「いや、私は更にお前を気に入った。こんなに面白い奴は久しぶりだからな、私がやれることなら協力しよう。ただ一つ条件がある」
今思えば、この約束が無ければ僕はこの本を書いていないだろう。
数多の伝説、創造の神話。そんなもの達にも引けを取らない僕の見た物。世界を回り全てを知った僕にしか書けない物語。
「私のために本をかけ。世界を回りその全てを記せ。私はそれが出来なかった、だがお前にはそれが出来る」
「何でそう言えるんですか?戦えないなら外に出れないんですよね?」
「ん?理由か?そうだな……勘だ」
これが全ての始まりだった。
知の魔女と後の賢王、この二人が出会わなければあの書は存在していない。
この世の全てが記されたあの書物は……。
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