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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第68話

 ここまでくれば楽しい物だ。

 自分の手で何かを作り、思い浮かべていたものが形になっていく。今になって気づいたが、こういう事が好きなんだろう。

 考えて実現させる。そんなことが好きな僕には、先生との出会いはとても幸運だったかもしれない。

 知識が無ければ、出来ることも出来ないからね。

 石の加工については、騎士になっていた期間で集めた魔石や鉱石を使う。

 大体のモンスターの体内にある魔石は、それぞれ等級がある。大体大きい魔物の方がそれは高くなり、更に濃度が濃くなれば等級は高くなっていく。

 要するに炭とダイヤモンドの違いだ。大きな炭よりも小粒のダイヤモンドの方が価値がある。魔石もそれと同じだが、それは高等級の物に限る。

 ABCと分けられている等級だが、そのAの中でも初級から特級、等級オーバー等様々ある。

 説明はこれぐらいにして本題に入ろう。今目の前にはBに満たない魔石が数十個とA初級が一つにB中級が三つある。

 これだけの魔石を破断に取り付けてしまえば、ブランド品みたいになってしまうし、それぞれの石にMPを吸われて効率が落ちる。それでは元も子も無いのでここはひとつ実験だ。

 成功すればA等級オーバーレベルの物が手に入るかもしれないし、失敗すれば当然石集めの始まりだ。だが試す価値はあるし僕もどうなるか気になる。


「後者の方が比率が高い気がしますが………」

「そんなに細かい事は気にしないで良いんだ。重要なのは可能性だよ可能性。成功の確率も無い訳じゃないんだ、やってみる価値はあるさ」


 ダイヤモンドが出来る条件は、高温で圧縮されると聞いたことがある。圧縮が本当かは知らないが、高温の方はあっていたはずだ。

 もし違っても僕が作るのはダイヤモンドじゃないから問題は無いだろう。ただその原理を利用するだけだ。

 僕は集めていた魔石を一か所に集める。そしてその周りの温度を上げる魔法を使う。これのコントロールが難しいが、今からさらに圧縮の作業が加わる。

 集中を切らせば終わり、下手したらHPが一気に削られるレベルの爆発が起きる。

 そのことを考慮して外で作業をしているのだが、出来ればそうはなって欲しくない。


「………」


 アイが無言で僕を見守っているのが分かる。

 話しかけたら集中を切らすと思っているんだろう。正直有難い。

 これで成功させて最高の魔石を————————あれ?何か変な光方してない?


「これは不味いのでは?」

「………良くはないね」

「ボンッ!!!!!」


 凄まじい光と共に爆発音が響いた。

 魔石があったはずの場所からは爆炎が昇り、後には消し炭になったであろう石の残骸しかなかった。ほぼ炭だ。


「これからダイヤモンドが作れそうですね」

「ハハ………すみません」


 炭交じりの爆風でとんでもないことになったアイから、無言の圧力を感じた。

 これは怒っている。そう感じた僕は素直に謝ることにしたのだった。


————————————————


 案の定魔石集めになってしまった訳だが、これは普通に不味い。

 そもそも等級Aの魔石を持ったモンスター何てそこらへんに居るものじゃない。居たとしてもBの上級だ。実際僕が倒したのも騎士団の団員と協力して倒したボスモンスターだった。

 等級Cの魔石を集めたとして、さっきと同条件レベルにするまでに必要な数は二百は余裕で超える。 

 少しずつ集めるより、大きな奴を数回の方が楽なんだがここら辺に迷宮も無いようなので選択肢はない。

 かと言って二百体ものモンスターも普通に居るわけじゃない。つまりほぼ詰み何だが………。


「購入になってくると価格は馬鹿にならないでしょうね。Cでも一つ三千から五千円、一万には届きませんが二百もそろえるとなると百万円ほどになります。B~Aを揃えても一千万位になるでしょうし、それでしたら最初から高い等級の物を買った方が早いです」

「そうなんだけど………僕お金ほぼ持ってないし、一千万何て直ぐに溜まる物じゃないでしょ」

「クエストを受けるか、宝石類や破断の様な遺物をオークションに出せばお金は貯められます」

「んーー………」


 宝さがしか………。それこそさっきと変わらなくないか?

 近場にあるなら未だしも遠くに行って探すなら魔石を探した方が良い。

 結局各地を回ることになるのか………。一千万以上の宝なんてものが近場にあれば誰かが見つけてるし———————

 諦めて転移でも使おうかなと思っていた僕の裾を、アイが引っ張った。何事かと思いアイの方を見ると、ある一点を指さし固まっている。

 その指が示す方向を見てみると、とんでもない物が目に入った。

 

「は………?うそでしょ?」

「どうやら疲れがたまっている様です」


 そこにあったのは、星空だった。何の前触れもなく現れたそれは今この時間にはありえない物。月は昼間も見えるが、星が見えることは無い。

 ましてや、見間違いでもなんでもなく、夜空に光る星ならなおさらだ。

 満点の星空に一際輝く正座が一つ。


「天秤座だ」

「………これはまた、厄介ですね」

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