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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第54話

 蛇に変わったデガの黒頭が一つ消し飛び、デガが悲鳴を上げる。

 

「ギィイェエエエエエエエエ!」


 それを煩わしそうに耳を抑えながら、一人の男が口を開いた。


「うるさいわあ、ホンマに」


 手をかざしもう一本の尾を消し飛ばすと、デガは地面に倒れこんだ。


「いやあ、助かったわケント君。こいつ一本目を壊さな僕の攻撃効かんかってん」

 

 赤いマントの男の人が地面に両手をつけると、デガを包むように大きな模様が浮かんだ。

 目を開けられない位それが光り、収まったと思い目を開けると、そこにデガの姿は無かった。 

 

「あ、もしもし?終わりました。ええ?あ~~………まあ、何でもいいでしょ!」


 黒い箱を持った男の人は、耳にスマホのような物を当てて話していた。

 会話が終わると、舌打ちをしてからこっちを向いた。


「もうちょっと早く来れたら良かったんやけど、ホンマごめんな。じゃあ、未だ仕事残ってるから」


 そう言ってまた直ぐに何処かへ行ってしまった。

 結果的にデガは居なくなった。その事実に安心し、僕の意識は激痛と共に無くなって行った。


————————


「いやあ、ホントに彼はせっかちだね。一本壊れたら手出ししていいとは言ったけど直ぐに行くことないじゃないか」

「ですが、結果は満足されたのでは?」

「それもそうだけど、もうちょっと見たかったな………。まあ、あれ以上死んだら流石に可哀そうだし丁度いいのかもね」


 そう言った男は、ニヤニヤしながら画面を操作しだした。

 作業を終え、確認のボタンを押した男は、満足そうに眠りについた。最後にこう言って………。


「世界よ、祝福せよ。帝の誕生である」


 ラッパの音と共に、戦場に光が差しプレイヤーにはクエストクリアの知らせが届いた。ある一人を除いて………。


————————


 目が覚めると、詰所の仮眠室だった。

 皆が慌ただしく行動している音が聞こえ、僕の隣のベッドにも骨折した人が寝ていた。

 ゆっくりと体を起こすと、目の端で何かが点滅しているのが見えた。その点滅部分を指で押すと、目の前に動画の再生ボタンが現れる。 

 一瞬躊躇したが、それを押すと少年の顔が映し出された。

 白い髪に様々な色が混じっている。眼も同じでとてもきれいだった。


『やあ、ケント君。初めまして、ゲームマスター兼神様でーす。今回はデガの撃退おめでとう!一番の功労者である君に、特別な物をプレゼントしちゃいまーす。イエーイ!拍手拍手!』


 テンションが高いと思いながらそのまま動画を見る。

 

『その前に、今回死者は百二十三名。負傷者は二千人になる。災害と戦ったにしては異常と言っていいほど少ない、そこは誇りたまえ。百人も死なしてしまったと思うのは傲慢だ。逆に、三千人、いや帝国国民総勢二十万人の命を救った君に送るのは、称号だ。最後は彼が持って行ったからいきなり凄いのはあげられないけど、君に準帝級の称号をあげよう!そしてもう一つクエストとして、龍気解放の習得をしてもらいます!頑張ってね。あ、最後に。剣以外も忘れちゃだめだよ』


 浮遊しながらクルッと逆立ちしそう言ったところで、動画は終了していた。

 僕は直ぐに画面を開き称号を確認する。そこにはしっかりと準帝級の文字があった。レベルは七十を超えており、ステータスも跳ね上がっていた。が、全く嬉しくない。準帝級………。お前だけは許さん。

 どうにか消せないかと長押ししたり、色々試していると部屋の扉が開かれ副団長が入って来た。副団長も左手を骨折している様だ。


「ケント………!目が覚めたのか」

「はい………」

 

 副団長は一通りの報告を終わらせると、僕を表の広場に連れて行った。

 そこには数百になる白い布で覆われたなにかと、その前で泣く家族であろう人の姿があった。これだけ死んでしまったのだと、仮想の中の現実を目の当たりにしていた。これを本当にゲームと呼んでいいのだろうか?

 それぞれの人生があり、意思があり記憶がある。僕にとってこれはゲームと頭の片隅にあっても、胸を締め付けられるような思いがあった。

 

「皆の魂が、生命の木に帰りますように………」


 そう言った副団長の目には、涙が溜まっていた。 

 僕も手を合わせ目を閉じた。関わった事のない人もいたが、一時でも一緒に戦った人たちだった。

 その後、団長も広場に現れ僕を見つけると、僕の腕を引っ張りどこかに連れて行こうとした。抵抗はせずそのまま連行され連れていかれたのは、明らかに玉の間であろう部屋の前だった。

 

「………帰って良いですか?」

「馬鹿を言うな、氷帝直々にお呼び出しだ」


 団長の圧力に負け、渋々中に入ると大広間に赤いカーペットが敷かれていた。部屋の奥付近で階段を上がり、玉座まで繋がっている。

 そこに座っているのが、氷帝リーアだろう。白い髪に………ん?


「あら?貴方………」


 女帝が何か言い切る前に逃げようとしたが、団長に肩を掴まれ止められる。そして小声で、


「おい!何考えてるんだ!」

「だってあの人あったことあるんですよ!絶対面倒な事になるじゃないですか!」

 

 抵抗も虚しく、ほぼ無理矢理奥に連れていかれる。

 近くで見ればもしかしたら違ったかも………とかは無くあの時の少女だった。デガ………あいつのせいで滅茶苦茶だ………。

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